(21)事業計画で最も大切な"利益率"の設定

すべての商売において有望度を判断する上で最も大切な指標は

「利益率」であって「売上高」ではない。

成功している経営者ほど、そのことは熟知していて、「儲かる商売=利益率の高い商売」を探すことに奔走している。利益率は業界や業態によってそれぞれ異なり、経営者が努力して改善できる部分と、できない部分とがある。設備や人材への投資にどうしても多額の経費がかかってしまう事業や、業界内の競争が厳しくて利益率が目減りしている事業というのは、手堅い商売を望んでいる人にとっては、あまり手を出すべきではない分野だ。

月収 100万円を自分の目標値として設定するのであれば、それを達成するためにはどれだけの売上高が必要なのかを利益率の違いによって比較してみると、それぞれの商売における特性の違いが見えてくる。クルマの性能に例えるなら、「利益率」はガソリンの燃費効率を表す指標に相当する。同じ目的地へ行くためのガソリン消費量はできるだけ少ないエコカーほど、これからの時代にはマッチする。


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(20)売上でなく利益で考える商売人の体質

個人事業主であれ、会社経営者であれ、商売人にとって大切な視点は
事業の成否を"利益"で考えることである。
 

その算式は「利益=売上-経費」という単純なものだ。しかし多くの事業者は「売上-経費=利益」という頭で商売をしている。つまり、利益を先に考えるか、後に考えるかの違いだが、それによって商売のやり方は大きく異なる。わかりやすい例として、A、B二人の商売人のケースで考えてみよう。

《●Aさんの商売スタイル》

Aさんはまず最初に「いくらの利益を稼ぎたいのか」をイメージして自分の商売を組み立てるタイプだ。そのためにはいくらの売上が必要で、経費がいくらかかるのかを試算する必要があるが、その答えは何種類もあることに気付いた。仮に、年間1千万円の利益を目的とする場合なら、以下のようなプランだ。

(1)5千万円の経費を使って6千万円の売上を得る商売=1千万円の利益
(2)1千万円の経費を使って2千万円の売上を得る商売=1千万円の利益

いずれも「1千万円の利益」を達成しているが、どちらの稼ぎ方が賢いかといえば(2)であることは一目瞭然だ。そこでAさんはできるだけ経費がかからない商売のテーマを選ぶことにした。そこでわかったことは、「経費のかからない商売=利益率が高い商売」ということだ。

《●Bさんの商売スタイル》

Bさんは大手企業に勤めていたサラリーマン時代には社内で"やり手"として知られ、数十億円単位のプロジェクトを任されてきた人物。自分の能力に自信を持って脱サラをした。元同僚からケチな商売人になったとは思われたくないこともあり、創業初年度から"年商1億円"を達成する会社を作ろうと決めた。そのために、社員も雇って立派なオフィスも借りた。持ち前のド根性もあって、1年後には目標どおりに年商1億円を達成することができたが、経費がかかりすぎてしまったために収支は赤字で、社長である自分は無給のまま働き続けている。

しかし売上の額は大きく、オフィスでは若い社員がキビキビと働いているため、会社の台所事情までは知らない昔の同僚達からは"成功した"と羨ましがられている。

【商売で損をする人としない人の特性】

AさんとBさんとの比較では、商売に対する考え方が大きく異なっている。 Aさんの場合には、あくまで「手堅い利益を得ること」が商売の目的であり、それを達成するための投下するコストは少ないほど良いと考えている。
そのため彼はどんな状況でも、商売で損をすることがないのだ。
一方、Bさんの場合には商売に対して様々な付加価値を期待している。上昇気流に乗ることができれば、短期間での株式上場も夢ではない。しかし、大きな夢を追いかけるあまり、自分の読みが裏目に出た時には大きな損を出してしまう。

AさんとBさんとの違いは「商売理念」によるもので、優劣の差を付けることはできない。独立起業の目的を「大富豪になること」に設定するのなら、Bさんのようなやり方でチャレンジするのもよいが、「月収100万円の生活を安定的に維持すること」が目的であれば、Aさんのように"損をしない商売"を追求する発想が大切になる。


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(19)ビジネスの規模によって変動する損益分岐点

★商売人の中でも「売上は多いほど良い、会社は大きくなるほど良い」と信じて疑わない人が少なくないが、それが「儲かること」とは必ずしも一致しない。

わかりやすい身近な商売として「飲食店の開業」による独立プランで考えてみよう。脱サラをして飲食店を開業しようとする場合には、まず店の立地とサイズ(店舗面積)から物件を決めることから始める。繁盛店にするためには、できるだけ好立地であることが望ましいし、店舗面積が広いほど多くの席数が取れて一日の売上も高額が狙える。しかし店の規模が大きいほど月々の家賃や人件費、食材の仕入れにかかる経費は大きくなるため、店を黒字化するための損益分岐点は高くなる。

店の規模によって異なる月額経費の試算例
●20坪の店舗にかかる
 月額経費
・材料費...............60万円
・人件費...............50万円
・諸経費...............24万円
・店舗家賃............20万円
・減価償却............10万円

経費合計......... 164万円
●30坪の店舗にかかる
 月額経費
・材料費...............90万円
・人件費...............70万円
・諸経費...............36万円
・店舗家賃............30万円
・減価償却............15万円

経費合計......... 246万円

20坪の店舗を月20万円の家賃で借りるのと、30坪の店舗を月30万円で借りるのとでは、家賃の金額では月10万円の差でしかないが、店の規模に連動して他の経費も増えるために、最終的な損益分岐点では大きな差が生じてくる。

損益分岐点とは
店の維持にかかる経費と売上高とが均衡するポイント(赤字でも黒字でもない利益ゼロの地点)

 

従業員が三十名いるベンチャー企業の経営者と、個人事業のSOHOではどちらが成功者としてのイメージが強いかといえば前者であるが、「どちらが潰れにくいか」といえば迷うことなく後者である。これは手掛ける事業の規模によって損益分岐点に大きな差があるためだ。

開業当初に高い損益分岐点(必要以上に大きな規模の店)を設定してしまうと開店から1年経過した頃から売上がジリジリと落ち込んで赤字続きとなってしまう。
逆に、最初から損益分岐点の低い店が口コミで人気化して繁盛すると、店前に行列ができるなどして客には迷惑をかけるが、店の経営としては儲かる。そのため「こだわりのラーメン屋」のように"本当に味のわかる客=ロングテール"だけを相手に商売をしたければ、できるだけ店には金をかけずにローコスト経営に徹することである。


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(18)事業計画書で自社の返済能力をアピール

★事業計画書は、言わずもがな、融資審査においての強力な材料となります。

銀行が融資を出したい企業。それは、返済をしてくれる企業です。
この原則をいかに経営者が意識して、自社がしっかり返済できる企業であることを、銀行に伝えることができるかがポイント。

 

自分の会社は、融資を銀行にしっかり返済できる企業である、ということを銀行にアピールするために、一番良い資料が
事業計画書です。
 

多少は赤字であったとしても、事業計画書により今後、どう利益を出し、利益から現金が生み出され、それにより返済していける、ということを銀行に伝えます。

事業計画書に必ず入れるものは
◎むこう3~5年の損益計画(年次・月次)
◎資金繰り計画(月次)、つまり予定資金繰り表も入れましょう。

★中小企業のほとんどは、キャッシュフロー、つまり事業によって年間生み出される現金収入より、年間に返済する金額の方が上回ります。

「取引している銀行から融資を受けられる体制はできているよ」

ということを事業計画書に盛り込むことができれば、自分の会社は銀行にしっかり返済できる企業である、ということを銀行に伝えることができます。

■事業計画書に銀行別の融資スタンスを入れる

例えば、3つの銀行と取引している企業、としましょう。

事業計画書には、3つの銀行別に、次の2つのことを書きます。
1.各銀行の自社に対する融資のスタンス
    「銀行から積極的に融資の提案がある。」「銀行が過去のピークまではいつでも出しますよと言ってきている。」というように、銀行が自社に対し、どのような融資のスタンスなのか、銀行は融資についてどのように言ってきているのか、ということを書きます。
2.各銀行の融資のペース(過去数年の融資の時期と金額)
  • 2009年3月 1,500万円(3年返済)実行
  • 2009年9月 2,000万円(3年返済)実行
  • 2010年2月 1,200万円(3年返済)実行
  • というように、過去数年、銀行ごとに、どのようなペースで融資が出てきたか、を書きます。
※これらを表にして、書くことにより、事業計画書の中で、自分の会社は各銀行から資金調達できる力がある企業である、ということを伝えることができます。

  • ◎また事業計画書における予定資金繰り表の中に、いつの時期にどの銀行に、いくらの融資を受けるつもりだ、ということを書いておきます。
  • ◎また事業計画書を提出する銀行に対し、いつにいくらの融資を見込んでいてほしい、ということを書いておきます。
  • ◎事業計画書を銀行に対して提出するのは、銀行から融資を受けやすくする ことが第一の目的です。不利になるようなことであったら、書かない方がよいです。

要は、事業計画書の見せ方です。
返済がしっかりできる企業だよ、ということを銀行にどう印象づけるか、です。


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(17)銀行から融資を受ける場合

定期預金の開設、定期預金の担保を勧められることがあります。
当然ですが、担保にされた定期預金は自由に使うことができません。

資金繰りが厳しいから融資を受けているのです。
その1部が担保になり、自由に使えないのでは意味がないのです。

預金と融資の両建ては損になります。たとえば、

○担保になっている定期預金・・・5,000万円(金利0.5%)
○融資を受けた額・・・1億円(金利5%) としましょう。これを相殺すると、下記となります。

(金利)1億円×5%-5,000万円×0.5%=475万円
(元金)1億円-5,000万円=5,000万円 ということは、

「475万円÷5,000万円=9.5%」となり、【本当の金利】は9.5%となるのです。

あくまでも、資金繰りが厳しく、過当な両建預金があるならば、「金融庁の監督指針を根拠にし、銀行ときちんと交渉してください」

銀行にとって、金融庁の検査は非常に嫌なものなのです。 あくまでもケンカをするのではなく、主導権を取り、交渉することが大切です。
しかし、一般的な中小企業の場合、銀行に主導権を取られていることがよくあります。 銀行は返済されては業績に影響します。だから、中小企業側が「本当は主導権を取れる」ケースもあるのです。


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(16)棚卸しは企業の財務状態を知るためのもの

多くの中小企業では、 ○事業計画書を作っていない
○作っていたとしても、損益計算書の目標値が中心

しかし、黒字倒産する会社の原因の【全て】は貸借対照表にあります。
例えば、過剰在庫はこの一因です。

中小企業だからこそ、損益だけでなく、期中での在庫の管理もきちんと行なうべきなのです。
あなたの会社では、毎月の在庫を把握し、改善していますか?

毎月の試算表ベースで計算すべきこと
(1)棚卸資産の回転日数(棚卸資産÷売上×365日)
(2)売掛債権の回収日数(売掛債権÷売上×365日)
(3)仕入債務の回転日数(仕入債務÷売上×365日)

逆に言えば、通常の商取引の中で運転資金が不足しているならば、(1)、(2)、(3)のどれかを改善すればいい訳です。


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(15)「役員報酬の適正額とは?」

役員報酬をいくらにすべきでしょうか?

いくらまでなら、税務署に否認されないでしょうか?

これはよく頂くご質問です。具体例として、平成3年の裁決を考えてみます。

問題になったのは、代表取締役「会長A」の役員報酬です。ちなみに、期間は昭和62年~平成元年(3年間)です。 その役員報酬は1,200万円(年間)です。これを、税務署は「高すぎる」と主張しました。

その理由、適正額は


○社長を退き、会長になってからは、仕事の内容が激変
○会社に机も無い
○常勤から非常勤になった
○役員報酬の適正額は396万円
○1,200万円-396万円=804万円が過大ということです。

しかし、会社は


○Aは代表権のある会長で、非常勤ではない
○経営方針、設備投資、借り入れなどの決定にも関わっている
○採用、人事、給与などの人事権もある
○重要な契約の決定にも関わっている
○役員報酬は適正額であると反論しました。

結果、国税不服審判所は


○Aは経営に大きく関わっているので、常勤である
○事務所に机が無くても、本社敷地内に自宅がある
○日報などにより、必要な指示をしている
○Aの仕事が社長の時代よりもかなり減ったことは事実としました。

国税不服審判所は


類似法人の平均額を計算しました。その結果、役員報酬の適正額は
○昭和62年 780万円
○昭和63年 850万円
○平成元年  900万円
としたのです。結果として、
○昭和62年 1,200万円-780万円=420万円
○昭和63年 1,200万円-850万円=350万円
○平成元年  1,200万円-900万円=300万円    合計「1,070万円」の否認です。
しかし、当初に税務署が主張した否認額は 「804万円×3年=2,412万円」です。否認はされたものの、否認額が「1,342万円」も減ったのです。

※ただし、こうなるケースばかりではありません。実際、国税不服審判所の過去のデータはこうなっています。

「年度」 「処理件数」 「認められた件数」 「勝率(%)」
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
平成19年
3,721件
3,382件
3,167件
2,945件
2,404件
818件
493件
470件
361件
304件
22.0%
14.6%
14.8%
12.3%
12.7%

大半は税務署側の勝利ですね

税務署と争うならば、大切なことは

修正申告書を提出しないということです。
なぜなら、「修正申告書の提出 = それを認めたこと」になるからです。
そして、それに【異議を唱える権利が無くなる】からです。

まず「統括官」と話をしましょう。
税務署の肩書きは上から「統括官」→「上席」→「調査官」となっています。
この中で上席、調査官は【現場で事実を把握すること】が仕事です。
しかし、統括官は【税務行政のバランスを取ること】も仕事です。だから、まずは統括官と話をしましょう。

実際に「納得できないから、統括官と話をさせて下さい」と言っただけで、結果が変わったこともあります。

これは市販の書籍には書いていないテクニックです。

それでも、結果が変わらず、納得できない場合は

(1)税務署長に「異議申し立て」を行なう
(2)国税不服審判所に「不服申し立て」を行なう
(3)裁判で争うという流れになります。

税務調査の結果には正当なものもあれば、理不尽なものもあります。 だから、「これは理不尽だ」と思ったら、きちんと主張して下さい。 また、異議申し立ても必要な場合は行なって下さいね。 【法律で認められた納税者の権利】なのですから。


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(14)一気に債務超過を解消する方法

決算を前に債務超過になっている会社の対策方法をお伝えします。

例えば、債務超過になっているA社があります。そして、A社は
 ★債務超過
 ★本社の土地、建物は社長名義(=社長から建物を賃貸)という状況です。
 この場合、下記のことができるのです。
 (1)社長名義の建物を法人名義にする → 社長名義の土地に、A社名義の建物が建っていることになる
 (2)社長の土地にA社名義の借地権が「自動的に」発生
 (3)A社は借地権を無料で手に入れる → A社に借地権相当額の受贈益が計上される
 (4)受贈益と欠損金が相殺(=税金はかからない)
 (5)債務超過が解消

具体例

○A社は債務超過70(=欠損金も70)
○社長名義の土地の時価100(借地権は70とする)
○社長名義の建物の時価30(=帳簿価額30)

まずは、建物を30で個人からA社に売却します。もし、1度に支払えなければ、分割払いでも構いません。すると、「社長の土地+A社の建物」という状態になります。

そして、借地権相当額70がA社の受贈益になります。この結果、
○債務超過70と受贈益70が相殺
○債務超過が解消
○欠損金70と受贈益70が相殺(=税金はかからない)
となるのです。つまり、「一気に債務超過が解消される」のです。

社長は帳簿価額30の建物を30で売っています。
だから不動産売却に伴う税金はかかりません。

土地の一部が「借地権」として、「社長からA社に」移転しています。
この税金を心配される方もいるでしょう。
ただし、この場合は税金はかかりません

いかがでしょうか。
この方法は「一気に債務超過を解消する」ことができます。


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(13)「中小企業が税金を還付してもらえる制度」

この制度は
○資本金1億円以下の中小企業が対象
○前期が黒字(=税金を納付)
○当期が赤字
○前期の黒字と当期の赤字を相殺
○前期分の税金が還付される

具体例
○前期 500万円の黒字
○当期 500万円の赤字
○法人税の税率22%(前期に納めた税金110万円)とします。
この場合、「前期の黒字500万円」と「当期の赤字500万円」が相殺できます。
この結果、110万円が還付されるという制度です。

前期までは良かったが、売上が激減した会社もあります。
こういう場合、この選択は非常に有効です。

※還付の制度は「有効」ではありますが、「絶対」ではないのです。


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(12)会社が借りている本当の利息とは

※会社に充分な預金があっても、金融機関の営業により借入れを検討する場合もあります。
このような場合、「借りるべきか、借りないべきか」の判断する場合

「借りるべきか、借りないべきか」という判断はケースバイケースです。
だから、明確な結論はありません。
しかし覚えておいて下さい。
借入れの判断をすべき時に非常に重要な考え方があります。
具体例で考えましょう。

○ 会社にある定期預金 5千万円(利率0.5%)→ 1年間の受取利息は、5千万円×0.5%=25万円 ○ 金融機関から借りた借入金 1億円(利率5%)→ 1年間の支払利息は、1億円×5%=500万円 これを相殺し、【実質的な利息】を計算すると・・・。 (500万円-25万円)÷(1億円-5千万円)×100=【9.5%】 つまり、【実質的な支払利息の利率】は【9.5%】だったのです。 もちろん、契約書に記載された金利は【5%】です。

預金と借入金は両建てになっていますか?なっていてもOKですが、そのバランスは大丈夫ですか?
必要以上の資金は借りず、自己資金で回して下さいね。


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(11)税務調査で交渉するときのポイント

※税務調査の結果について交渉する場合絶対に注意してもらいたい点があります。

「単なるミスに重加算税をかけさせない」ということです。

税務調査官は重加算税をかけたがります。 なぜなら、それは彼らの成績(=出世)になるからです。

そもそも、重加算税はどういう場合に課せられるのでしょうか。
それは「隠ぺい」や「仮装」があった場合です(国税通則法68条)。
「単なるミス」と「隠ぺい」「仮装」は全くレベルの違う行為です。

注意!
もし、単なるミスに重加算税をかけてきたら、絶対に反論して下さいね。それは、おかしいですから。


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(10)税務調査は【事前準備】が非常に大切です。

税務調査の約9割は事前連絡ありの調査です。会社に事前連絡があったら、何をすべきでしょうか。

それは、下記のことを確認、調整して下さい。

○日程、場所(通常は本店)の確認
○調査の対象税目は何か?
○調査対象の事業年度
○用意しておくべき資料
○担当調査官の名前、人数

★その情報から、税務調査の準備ができる場合もあります。
★また、流れが推察できることもあります。

【一般的に】用意すべき資料
○定款、謄本、議事録(取締役会、株主総会)
○会社案内、組織図、株主名簿、社内規程など
○決算書、申告書、届出書
○契約書、保険証券、稟議書、見積書、納品書、請求書、領収書など
○総勘定元帳、現金出納帳、売掛金台帳、買掛金台帳などの帳
○振替伝票、入金伝票、出金伝票
○給与台帳、タイムカード、扶養控除等申告書、社会保険関係書類など
○預金通帳、小切手帳、手形帳、当座勘定照合表など
○在庫表、入出庫伝票など
○レジペーパーなど


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(9)自社の資金構造を解明する

業績が悪くなっても、企業は倒産しない。倒産する直接の原因は、資金ショートだ。
場合によっては、業績が向上していても、資金ショートにより倒産することもある。

そのため、財務諸表を分析する際は、企業の資金構造を解明しておくことが重要だ。ごく単純には、売上高の増減に応じて、どれだけ運転資金が必要なのかを調べてみる。

※小売業のように、日々、現金収入があるようなビジネスの場合、仕入れた商品に対する支払いは、数ヶ月先でよいので、手元に資金を確保しておくことができる。
とは言え、売上が増えている場合はよいのだが、売上が下降傾向になると、資金が逼迫してくる。売上が大きかった時点での仕入れへの支払いを、売上が減少した時点の資金で行わなければならないからだ。
タイミングがずれることにより、同一月内の収入と支出の根拠が整合しないため、そのような現象が起こる。

自社の資金構造を分析してみれば、資金繰りが成り立つための前提は何か、わかるはずだ。その前提が崩れたらどうなるのか。経営に携わるのなら、必ず考えておかなければならない。

現実的かどうかは別としても、収入と支出のタイミングや根拠を整合させた上で、利益が出るのかどうかを考えてみること。それらのズレを軽視していると、落とし穴になりがちだ。


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(8)常にコストの動きから目を離すな

今や素材だけでなく人材も、市場は上昇基調にある。足元のコストをしっかりとつかむことはもちろん、1~2年後の市況を予測し、それらを営業部門へ常時フィードバックすることで着実な採算確保につなげていかねばならない。

と言うのも、原価管理の甘い企業で高収益を維持している企業は皆無であり、利益を出している企業ほど徹底されているからである。 以下は、一般的な原価管理(財務会計でなく管理会計)の手順である。

(1)原価認識 中小企業でまれに原価が材料費・外注費だけのケースがある。製造業であれば生産現場の人件費や製造経費、卸売業であれば営業や配送部門といった直接売上げにかかわる費用を、販売費・一般管理費から売上原価に振り替えること(原価の管理対象として認識)がスタートである。
(2)材料費 直近の原材料や部品・副資材などの材料価格マスターを整備し、すでに価格変動が予想できるものは予定原価に織り込んでおく。直近価格、年間平均、期末予想など価格政策により異なるが、度重なる価格転嫁の要請を避ける上でも、より慎重な対応が求められる。
(3)人件費・経費 昨今の採用コストや賃金上昇分を織り込み、人件費予算を作成し、それを実働時間もしくは製品出来高時間(標準時間の累計)で除算し、時間当たり加工費を算出する。この際、大事なのはどの程度の操業率や稼働率、能率を見込むかである。
なお、製造業以外は単純に実働時間で除算したり、卸売業では物流費などの主経費を別に計算するなど、業界ごとに工夫が必要である。
(4)価格転嫁 「一律○%値上げ要求」というケースもあるが、とりあえずは自社モデル製品の予定原価を設定し、得意先別製品別に価格見直しを行っていくこととする。
(5)原価管理 最後に原価算定基礎となったデータも、コストテーブルとして管理しておきたい。コストテーブルとは、材料マスターや部門別賃率一覧、標準作業時間一覧などコストを決定する基準資料を一覧できる形に整理したもので、コスト見積もりを迅速にさせる、適正価格を判断させる、コスト意識を喚起してアイデアを誘導させる、などの効果をもたす。

コストは生き物である。適時・的確な実際原価の把握に努める(予定原価はあくまで一時点における原価)と共に、先手先行で営業の価格政策に活かしていくことが何より重要と言える。



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(7)若手経営者・後継者必見『キャッシュフロー経営 入門編』

キャッシュフローとは
「お金の流れ」であり、収入(キャッシュ・イン)と支出(キャッシュ・アウト)の差額がどのようになっているかを示すものである。

 

1年間の事業活動の結果、最終的にキャッシュフローがマイナス(現金収入<現金支出)となった場合、その要因を捉えていなければ、改善することは困難である。

キャッシュフローを捉えるポイント
(1)営業キャッシュフロー
利益(減価償却費などの非資金費用を除いた当期利益)に経常運転資金の増減(流動資産・流動負債の増減による現金の増減)を加えたもの。
(2)投資キャッシュフロー
設備投資(必要最低限の更新投資も含む)による現金支出や、固定資産の処分による現金収入。
(3)財務キャッシュフロー
借入金の調達や返済による現金の増減。

したがってキャッシュフローがマイナスの場合、まずはその要因を上記3つのポイントから捉えることが重要である。その上で改善すべきポイントを優先順位付けし、改善に取り組むのである。

例えば、営業キャッシュフローを改善しようと思えば、利益を増加させる以外にも、売上債権の回収強化、在庫の圧縮、営業外債権の削減など、さまざまな対策が考えられる。
これらの改善によって捻出したキャッシュフローを、将来への投資(人材育成費、商品開発研究費など)へ回すことで、より強い経営体質づくりが可能となる。!

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(6)売掛金管理を強化せよ

ある会社で、売掛金の回収が数カ月滞っていたにもかかわらず、商品販売を継続して行っていた。「売上計上されたものは入金されるのが当たり前」という感覚に会社全体が陥っていた。
やがて回収の滞っていた販売先が倒産に至り、大きな貸し倒れが発生することになった。
この事例は極端な例かもしれないが、売掛金回収に無頓着な企業が今でも多く見られる。

売掛金の回収業務は、すべて経理部や財務部といった管理部門が責任を負うと思われがちである。確かに売掛金の残高管理については管理部門の担当業務となるのであろうが、商品や製品を販売する部門である営業部門についても売掛金回収責任は大きい。

営業部門は販売することだけでなく、その代金を回収してこそ業務が完了する。
したがって、売掛金の回収責任は営業部門が負うことになる。

しかし売掛金回収の責任は営業部門にあるからといって、管理部門は何もする必要がないというわけではない。管理部門は帳簿の記入や金銭の出し入れだけでなく、社内の他部門との調整サポート機能とともに金銭面での社内牽制の役割を持つことを忘れてはいけない。

●営業部門・・・売掛金「回収」責任
●管理部門・・・売掛金「管理」責任

のように責任分担を明確にする必要がある。

 

各機能を細分化
●営業部門・・・販売と回収、販売先の経営状況や信用情報の入手、与信限度額の設定と与信管理
●管理部門・・・売掛金回収の出納と残高管理、売掛債権管理資料の提供、売掛金回収状況の調査

このように売掛金の回収・管理については、営業部門と管理部門それぞれが責任を持ちながら、協力し合う体制が求められる。


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(5)ビジネスプランの工夫

起業や新規事業のプランを作るにあたり、損益分岐点や初期投資を抑えるため、もう一工夫することにチャレンジしよう!

実際のところ、まともに起業・新規事業のビジネスプランを立てようとすると、固定費や初期投資の負担が大きく、採算ベースに乗せることの難しさに圧倒されてしまうことも多い。

しかし、勝負のしどころは、そこからだ。工夫や交渉等により、固定費・初期投資の金額を下げ、損益分岐点を下げ、投資回収期間を短縮する。

ビジネスプランを評価する場合も、そのような工夫や交渉の可能性を十分に追求しているかどうかは、重要なポイントとなる。商売人としてのセンスが問われる場面だとも言えるだろう。

「セールスは断られた時から始まる」という言葉がある。ビジネスプランについても、「これでは採算が合わない」という状況から、本当の検討や練り上げが始まる。

 


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(4)固定費カバー率を高めよう

一般的に企業の収益体質を図る指標としては損益分岐点があり、これを低く抑えることで不況対応力(高収益体質)が高まる。これとは別に「収益の安定度」を測る指標として「固定費カバー率」というものがある。今回はその解説をする。

1.変動収益
スポット的な売上高で、金額・時期とも不確実な売上高(変動収入)
2.固定収益
  • (1)固定売上高
    ベースとなる顧客(固定客)や商品(定番商品)からの売上高で、毎月あるいは毎年安定的に計上される売上高
  • (2)固定収入
    家賃やロイヤリティなど、安定的に得られる収入

※これらの関係から、経営の安定を図るためには、できるだけ固定収益のウエイトを高めて、負担する固定費の金額をコントロールするのが良い。

この関係を指標化したのが固定費カバー率 固定費カバー率(%)=固定収益÷固定費

  • ●自社の固定費カバー率は何%か?来期の計画では何%まで引き上げるのか?
  • ●どの固定収益商品をどれだけ拡販(開発)すれば、固定費カバー率が上がるのか?
  • ●或いは、目標とする固定費カバー率を満たすためには、どの程度まで固定費を負担できるのか?

固定費カバー率の達成に向けて具体的な目標を立て、全社一丸となって取り組んでいただきたい。


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(3)経営者に求められる財務センス

世界的にも株安が大きく進んでいて、機械受注統計・百貨店売上など、需要動向を読むシグナルからもマイナスサインが出ており、実体経済に暗い影を落としている状況の時は、銀行保有株の下落も進行しており、銀行が自己資本比率低下を恐れて「貸し渋り」や「貸しはがし」などに走る懸念がある。

この時期に経営者が恐れる点は、以下の3点であろう。

1.追加借入不能・返済資金不足
2.過剰在庫・過剰設備で資金が回らなくなる
3.取引先の焦げ付きが生じる

これらの中のどれかがきっかけとなり、経営危機に陥る可能性は十分にある。そこで自社の安全指標として、以下の点をチェックしていただきたい。

1.現金預金が月商の2カ月分以上あるか?
2.比較的現金化しやすいもの(上場企業の発行手形や株式)が3カ月分程度あるか?
3.上記1と2を足して5カ月分以上の資金準備があるか?

この3点を満たしていれば、極端な話、半年近く売上がなくても会社は潰れない。その間に対策を立てることができる。

経営者が最も早く着手出来るのは・・・「余裕資産の資金化」「原価・経費の徹底削減」であろう。

必要な時に必要な手を迅速に打てるということが、最も重要である。 この時期に逆に売上を増やそうと経営資源を投入させると、その為の投資・維持コストでさらに利益を圧迫する要因になりやすい。

経営者として必要な財務センスとは

  • ○平常時から緊急時を想定し、資金を5カ月分以上は確保しておく意識を持つ
  • ○危機に焦らず、早期着手が出来て効果的な所から順に支出を抑え、余裕資産の資金化を迅速に、徹底的に断行する


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(2)12月は保障協会審査がとおりやすくなる月

12月は、実は保証協会の審査が通りやすくなる月です。
12月は、ふだんの3倍、保証協会に保証申込みがあります。

なぜなら、年越しを迎えるにあたって、資金繰りが安心である状態にしておこうと、融資を受けようとする企業が多いからです。

ただ、保証協会に申込みがたくさんあっても、一方で保証協会の職員数は変わりません。

ということは、一つ一つの案件を審査する時間が短くなってしまい、それだけ審査が甘くなりやすい、ということになります。

12月15日までに保証協会に書類が受理され、受付印が押されたものは、今年中に保証協会が審査をしてくれます。特に、今まで保証協会保証付き融資が反復利用され、延滞になってもいない企業は、すんなりと審査が通りやすくなります。

また、他に審査が通りやすい時期は、3月と9月。銀行の決算期と中間決算期であり、多くの銀行では、この時に融資量を増やしておこうとします。

※銀行に「15日までに保証協会が受領するように保証申込書を保証協会に送ってほしい」と、念を押しておく必要もあります。

このような、融資が受けやすい時期、というのを頭に入れておくと、融資を受けるにあたって多少は役に立ちます。


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(1)銀行から聞かれたことのないことを聞かれた

★中小企業経営者の方からご相談いただいていて、よく質問されるのが、「融資を受けている銀行からこんなことを聞かれたんだけど、銀行は何を意図しているのか?」

例えば、今まで言われたことがないのに、次のようなことを銀行から言われた場合、

○最近の試算表を提出してほしい。
融資先の最近の業況チェックのために、銀行は融資先企業から、定期的に試算表の提出を受けてそれをチェックしようとします。 試算表を今まで提出していないのであれば、その方が珍しいことなのです。
融資を受けている銀行に対して、銀行から言われなくても試算表を出すと、銀行からの信頼は高まることでしょう。
○他銀行の借入明細を見せてほしい。
他行がどのように融資をしているのかを見ることは、銀行員にとっては基本中の基本と言えるぐらい、重要なことです。 他行は融資を絞ってきているのか、もしくは他行は積極的なのか。
他行が積極的に融資を出しているのならまだしも、融資を絞ってきているのなら、その企業の資金繰りは厳しい方向に向かい、要警戒、ということになります。
他行の借入明細はどうなのか、時系列で見てどうなのかは、銀行が融資先企業に、当たり前に聞くことなのです。

経営者としては「銀行は何を考えているのだろうか・・・」と、疑心暗鬼になってしまいがちですが、たいていの場合は、銀行が知っておくべき、当たり前のことを聞いているだけ、ということです。 不安に思わないで、正々堂々と答えましょう。



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財務ノウハウ(1)

財務ノウハウ(2)

(1)決算書や資金繰り表を銀行はどう見るか

<質問>
1.銀行の担当者の話では、経常収支を非常に重視しているということですが、経常収支と営業キャツシュフローとどういう違いがあるのですか?
<回答>
1.経常収支は、資金繰り表の中で計算されるもの、営業キャッシュフローは、キャッシュフロー計算書の中で計算されるものです。似たような概念ですが、計算式がそもそも違います。銀行においては、キャッシュフロー計算書が企業から提出されることはあまりなく、一方で資金繰り表が提出されるのはよくあることなので、資金繰り表の項目である経常収支を重視している、と言われるのでしょう。
<質問>
2.経常収支は単純に判断するとプラスになればよいというらしいですが、2期連続や3期連続とか、隔年でマイナスの場合は、こうだとかいう判断方法があれば教えてください。
<回答>
2.経常収支は月ごとにプラスマイナスのでこぼこはあっても、年間を通じてならやはりプラスであることが望ましいです。マイナスがある年があるということは望ましくなく、そのマイナスはあくまで一時的な要因があった、ということを銀行に説明する必要があります。
<質問>
3.実際、金融機関は、中小企業の決算書にどのくらいの信憑性を見ているのですか? 人によっては1割という人もいるみたいですが。
<回答>
3.信憑性は1割といえども、ただ銀行は企業の状況を判断するに、決算書を見るしかありません。だから銀行としては、企業から提出される決算書は信頼するしかないのです。銀行は企業から提出される決算書を信頼することができなければ、こわくて融資を出すことができなくなってしまいます。
<質問>
4.銀行は、債務超過でなく、経常黒字で、債務償還年数が10年以内で、経常収支がプラスなら、基本的に融資できるという判断になるのでしょうか?
<回答>
4.銀行は、企業の財務状況がこうだから融資は出せる、という基準があるわけではなく、質問にある状況で融資は絶対に出るということはないですが、融資審査においては有利となる状況であることでしょう。

 

(2)銀行から今後5年の損益を出してほしいと言われた場合

中小企業を経営するみなさまにとって、銀行等から 「将来の損益の見込を教えて下さい」と言われた場合、損益計算書をベースに今後5年分の売上や原価、経費その他の各項目を数値で入れていくものが一般的であります。
銀行等から提出を求められていてもその大半の方は

「将来のことがわからないのに、それをつくることなどできない」

「そんなものは机上の空論であり、やったところで何も変わらない」

と考えることで、作成が止まってしまう、もしくはあまり考えずに何となく記入して、とりあえず出してしまう、となっているように感じます。

今の世の中、3カ月先のことすらわからないことは事実です。 しかし、未来のことがわからないことと、その計画を立てられないことは、全く別のことです!

なぜ中小企業は将来の損益予測を立てる必要があるのか

  • ◎そもそも、未来予測というのは変動していくことが当然であり、予測→検証のプロセスを何回も繰り返していくことで徐々に、予測と実際との誤差を減らしていくものである。
  • ◎その未来予測の変動に対応していくことが経営にとって重要であり、経営改善を行うべき項目になり得るからです。

例えば、一番予測が困難な「売上」について、もう少し具体的にいうと、

①現時点で想定される、会社の状況を構成する要素を項目別に分解。

②それぞれの項目の変動を見越して、それをもう一度当てはめ、再構成する。

③変動が有った場合には、その変動要因を分析して、さらに再構成する。

以上を繰り返しを行っていきます。具体的には、どの市場、どのお客様に、いつ、どのようなアプローチをして、いつ頃いくらの受注が見込めるかを、読み込むことです。

 

(3)未来の損益予測はどのようにして立てるのか

ちなみに、予測の1割や2割の部分は違ってもよいのです。
悪い方にズレたとしても、その原因が分かり、対応ができるのか、別の手法によりその穴を埋められるのかを考え、実行に移せるのかが重要なのです。

小売店の売上の一例を挙げてみますと、例えばこのように売上を分解できます。
潜在顧客数×見込顧客化率×来店率×購入率×購入単価 = 将来の売上
この式は、このように考えていくことができます。
1.潜在するお客様の数が「潜在顧客数」
2.潜在顧客数の内、チラシやホームページ等で見込顧客化した率を掛ければ「見込顧客数」が分かり
3.見込顧客数と来店数の比率から来店率が分かり
4.来店数と購入数の比率から購入率が分かり
5.購入数に平均購入単価をかければ売上、となります。
6.また、リピート率が向上すれば、将来の売上をより多く確保できます。

例えば、
※チラシを配れば「見込顧客化率」や「来店率」を向上させられるのではないか。
※店舗のレイアウトや導線を変えることで、購入率を向上させられないか。
※お客様との接客手法を変えることで購入単価やリピート率を上げられないか。

あくまで例ではありますが、一つ一つの項目に対する取組を考えていくことになります。
このようなことは、なんとなくみなさんやっているのではないでしょうか。

■なんとなくやっていても果たして計測しているのか

しかし、今それぞれがどのくらいの比率で、今まで行ってきた施策によってどのくらいの変動が発生していて、どこが改善可能なのか、というところまでは意識していない方が多いのではないでしょうか?

重要なことは、1%の数値が2%になれば、それは1%の違いであっても売上への影響度は2倍、という目線を持つこと。 また上記の例で言えば「見込顧客化率」「来店率」「購入率」「購入単価」「リピート率」の5つがそれぞれ10%改善するだけで、1.1×1.1×1.1×1.1×1.1≒1.61、約1.6倍の売上になる、ということです。

◎より効果を上げるため、まず最初に手をつけるべきはどこなのか
◎やり方を変えてみた際に、どのように変動したか

これをできるだけ簡単に・正確にできるのかどうかがポイントになります。

それぞれの数値を見出すことができれば、売上目標を出すことも、売上から逆算して、それぞれの数値目標を出すこともできます。

一つの数値を向上させる、ということを目標とすれば、そのために何をすれば達成可能か、という考え方から、元々は数値であった将来の目標を行動計画に落とし込むこともできます。

ここまでできれば、将来の目標は机上の空論などではなく、○○の行動ができれば、最終的に目標数値を達成できる、という本物の経営計画にまで持っていけるのです。

資金繰りに追われてしまうと、このようなことができなくなってしまいがちですが、資金繰りを改善させるためには、最終的には収益力の改善が必須です。

一度、売上の構造を分解し、項目別に計測することを考えてみてはいかがでしょうか。

 

(4)数値目標はどうすれば行動目標に置き換わる?

★まず、前項にて述べた、売上の構造の一例を、もう一度挙げます。
◎潜在客数×見込顧客化率×来店率×購入率×購入単価=将来の新規売上

この将来の新規売上に、リピート客からの売上を足したものが、将来の売上になります。

ここで考えるべきは、この項目の大半が、「顧客の状況や行動」によって構成されている、という点です。

1.まず、売上の数値を、それを構成する顧客の数や、質に変換する

売上は通常、単価×数と考えられ、これは当然外してはならない基本であります。

最初のフェーズの客が、それぞれの比率によって最終的に購入顧客になり、購入単価によって売上になる構造ですから、逆にある売上を実現するために必要な客の数や単価に変換することができる、ということです。
2.その顧客数を取り扱うために、必要な業務プロセスと人員数を考える

定義された顧客の数から、それに対応するための業務プロセス(仕事の取組手法)や人員の数を考えます。

例えば、これまで100の購入顧客数を想定していたものを120にするとなれば、業務の効率化を行うなり人員を増員するなりの対応が必要ですし、例えば「来店率」の増加で20の顧客増加を目指そうと思えば、広告宣伝方法について対応することが必要になります。

単純にそれを行った場合(例えばシステムの導入や人員の追加、広告回数の増加)にはコストが発生しますので、利益として極大化されるように調整を行わなければなりませんが、重要なことは「それだけの効果が得られなければならない」ことが明確になるということです。

また、「顧客を月に○○人対応し、売上を△△円上げられるような人でなければ、採用してはいけない」という、明快な採用の目標にもなるのです。

また、業務プロセスというと難しいイメージになりますが、こちらはまずは「スケジュール」と考えていただきたいと思います。
「一月に○○人の対応をしなければならないが、他に□□の業務もある」と予測された場合に、無理に全部何とかしようとすることはお勧めできません。

社長自身であればなおさらのこと、無理は長く続きません。体が健康であればこそですから。とはいえ、誰しも一日は24時間しかありません。となれば、当然
・より簡単にすること
・他の社員や外注先に任せられるものは任せること
・より「自分自身で行うべき」仕事に注力すること

が必要であり、これを考えることが中小企業にとっての業務プロセス改善の根幹になります。
3.人の活動目標としての行動計画に整理する

ここまで行うと、必然的に「行動計画」にまとめることができるようになります。必要となった要員数に対して、「それぞれが、どのように動けば必要な顧客数に到達できるか」を行動に置き換えるのです。

例:売上の構造を
 アポ入れ客×面会率×提案率×成約率×購入単価 = 将来の売上とした場合、
 面会率が20%(アポイントを申し入れたうち、面会できた率)
 提案率が40%(面会したうち、提案できた率)
 成約率が25%(提案したうち、成約出来た率)とすると、
 1件の成約を得るために必要なアポイントの申出が1÷0.25÷0.4÷0.20=50 50件となります。

従って、必要な顧客数が5件であれば250件のアポイントを得るための行動が必要となり、今ある未開拓顧客リストが150件ならば、不足分の100件をどのように増やすのか、例えば紹介依頼をもう一度行えないか、それはいつまでに何件できるのか、というように、今目標達成のために行うべき行動に変換することが可能になります。
一方、250件ものアポイントを入れる時間が物理的に不可能と判断されるのであれば、「面会率」他の数値を向上させて対応する決断を行い、よりその項目の実施が得意な社員に対応を集中させることや、やり方を変える等の改善を考えることで、必要なアポイント数の方を削減させます。

上記の例で言えば、例えば面会率が25%になれば
 1÷0.25÷0.4÷0.25=40
となり、5件の成約に必要なアポイント数は200に減少します。
当然、面会率を向上させるわけですから、これまでよりも確実に面会できる、例えば紹介を頂くことにより注力することが必要である、と判断できます。

そうなれば、行動目標は、「まずはこれから2か月で紹介元を50件確保する」
そのために何をするか、というところまで具体化することができます。

こうして練られた行動計画は、銀行に対する説得力はもちろんのこと、何よりも自らが「何をすればよいのか」理解できる上に、「これができれば目標数値が達成できる」→「会社がここまで再生できる」行動と数字が連動した素晴らしい計画になります。

ぜひ、一度ご自分の会社でも目標数値→必要な顧客数に置き換え→必要な業務プロセスと人員に置き換えすることで、行動計画に落とし込むことをお勧めいたします。

 

(5)損益計画のみの経営計画の落とし穴

利益はほぼ達成できたのに、お金が増えていない。逆に、減っていることがある。
こんな疑問を感じたことはないでしょうか?

売上・利益に重点を置いているから、経営者の意識が売上・利益重視に傾いてしまい、儲けることへの意識が希薄になっていると感じています。

~売上利益重視の一例を出しますと~

前期で
年間固定費
変動費率
売上高
売上債権回転日数
在庫回転日数
仕入債務回転日数
5,000万円(償却なしと仮定)
60%(売上原価が全て変動費、それ以外全て固定費とします)
2,500万円(損益分岐点ギリギリ)、
(30日)
(30日)
(40日)という企業があるとします。

※損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

この企業が今期、売上高利益率5%を目標として、固定費・変動費率は変わらず、売上のみで達成しようとした場合、 14,285万円の売上が必要となります

※目標売上高=固定費÷(1-(目標変動費率+目標利益率))

仮にこの計画を達成できた場合、売上・利益としては

売上高 
変動費 
固定費 
利益
14,285万円
8,571万円
5,000万円
714万円



(売上高利益率5%)

となり、目標を達成できて、良い結果が出たとも言えますが、営業マンが売上を重視するあまり、取引先の言いなりになり、

平均回収サイトが10日伸び、売上債権残高が多くなってしまった。
(売上債権回転日数 30日 売上債権1,027万円
   ↓
 売上債権回転日数 40日 売上債権1,565万円)

  • ・売上を増やすために取扱品目を大量に増やしたことで在庫が膨れ上がり、入庫から売れるまでの平均日数が10日伸び、在庫高が多くなってしまった。
(在庫回転日数30日 在庫616万円
   ↓
 在庫回転日数40日 在庫939万円)

・取扱品目を増やすために仕入取引業者を拡大させた結果、平均支払サイトが5日縮まってしまった。 (仕入債務回転日数40日 仕入債務822万円
   ↓
 仕入債務回転日数35日 仕入債務822万円)

売上・利益を重視する上で、上記3点が結果として出た場合、会計の「発生主義の原則」による損益においては、全く影響はでませんが、

「儲け」の視点から見た時に、

売上債権投資増 
在庫投資増 
仕入債務増 
合計投資増
538万円
323万円
0円
861万円

となり、一方で損益計算上の利益をそのまま現金回収額と見た場合、

714万円(回収)-861万円(投資)=△147万円(儲け)

となり、この企業は、事業を拡大し利益は出ているのに、お金が減ってしまう(儲かっていない)状態に陥っています。

よって、経営計画は貸借・損益だけで作るのから一歩進めて、投資・回収の視点からも、計画を作成すると、とても良い経営計画になることでしょう。

 

(6)売掛金の早期回収ノウハウで変わる企業の健全性と信頼度

企業相手の取引になると代金の支払い条件は"後払い"になることが一般的だ。
しかし小売業や製造業の場合には、商品の販売代金を次の仕入れへと回転させなくてはいけない。そのため、売掛金の額が大きくなるほど資金繰りは苦しくなっていく。

売掛金を現金回収するまでにかかる期間は、各業界によって平均値というものがあるが、業者取引が主体の卸売業では約70日となっている。これは7月に出荷した商品の代金は9月まで現金化できないことを意味している。

企業の健全性でいえば、売上高に占める売掛金の割合が15%以内であれば安全だが、常に30%を超えているようだと危険域へと入る。そうならないためにも、売掛金(売掛債権)をできるだけ短期で回収するための対策と手法を考えていく必要がある。またその裏側では売掛金回収を専門とするビジネスも成り立つようになっている。

【早期払い割引き制度導入メリット】

取引先に対する支払サイトの条件は一度決めてしまうと、その後に変更することがなかなか難しい。取引先は自社の資金繰りを好転させるために、できるだけ長期の支払いサイトを希望してくるのが一般的である。それを冷徹に断って取引関係にヒビが入ることを恐れて、渋々と条件を呑んでしまうということがよくある。
※支払サイトとは、商品の引き渡しから決済日(入金日)までの期間を表す。

そんな場合には、支払サイトにいくつかの選択条件を与えて、たとえば請求から10日以内の入金であれば請求額に対して2%の割引きをするといった早期払い割引き制度を導入してみることが効果的だ。もちろん従来の期日で支払う選択肢も残しておけば、こちら側の条件を押しつけることにはならないため、取引関係が悪化することはない。

【早期払い割引きの導入で得られる利点】
◎未収金を早く回収できる
◎支払日の選択によって各取引先の信用度を自動的にチェックできる

資金繰りに余裕のある会社であれば、入金日を先延ばしして割高な代金を払う理由はないために、自ずと早期の支払サイトを選択してくるはずである。そんな取引先は倒産する確率が低いために、今後も売掛金による取引量を増やしたとしても安全性が高いはずだ。逆に、いつでも長い支払サイトを選択してくる取引先は、資金繰りに余裕がないことが推測できるため、取引の拡大には慎重になったほうが無難だ。

売掛金の早期払い割引きを導入することによって、割引き分の資金負担が増えることになるが、これは代金の回収期間が70日から10日に改善されることで好転する60日分の金利コストで償却すると考えればツジツマが合う。会社が運転資金を銀行から借入れする金利が2%とした場合、3千万円の売掛金回収が2ヶ月間短縮されることで軽減される金利コストは以下の算式により、10万円にもなる。

《売掛金回収の早期化による金利コストの軽減額》
3千万円×2%×(2ヶ月÷12ヶ月)=10万円

算式:売掛金残高×金利レート×売掛金回収の短縮期間

さらに売掛金を早期回収したい場合には「ファクタリング」と呼ばれるサービスを活用する方法もある。

ファクタリングとは
大手の銀行やノンバンクが新たな金融サービスとして手掛け始めているもので、取引先から売掛金を抱えている会社がファクタリング会社に売掛債権を譲渡して支払代金を立て替えてもらう仕組みだ。
 

たとえば、建材の卸会社が住宅メーカーに対して90日の支払サイトで建築資材を納入している場合、建材会社は商品納入後すぐにファクタリング会社から商品代金を受け取ることができる。ファクタリング会社は90日後の支払期日に住宅メーカーから代金を受け取ることになるが、事前に建材会社へ支払った代金からは"前払い分"の金利手数料が差し引かれているため、その差額分がファクタリング会社の収益になる。

《ファクタリングサービスの仕組み》

建築資材の納入 建材卸会社 住宅メ-カー ファクタリング会社

《ファクタリングサービス》

☆このような取引手法は、従来の手形決済の煩わしさとリスクを解消する方法としても注目されている。

※ただしファクタリングを導入するには取引先(例:住宅メーカー)に対して売掛債権を譲渡することの許諾を受けなくてはならない。そのため今のところファクタリングの活用は、良好な関係にある固定取引先に限られているのが実態。

しかし


これをインターネット上の企業間取引へと応用することも可能だ。卸会社が立ち上げている Webサイトに見知らぬ企業から新規取引の申込がされたようなケースでは、売掛金や手形の受け取りで取引を開始することにはリスクが伴う。
そこでファクタリング会社を介した取引形態にしてしまえば卸会社側の代金未収リスクは解消される。またファクタリング会社には取引先を審査するプロの与信能力があるため、ファクタリング会社がNGを出した会社はいくら魅力的な注文内容でも、新規の取引先として適さないという判断ができる。

■株式会社フィデック
http://www.fidic.co.jp/
ファクタリングの具体的な仕組みはまだ発展途上の段階だが、その必要性を痛感している企業は多いため、中小企業専門またはネット取引専門といったファクタリングサービスには商機がある。その先行事例として株式会社フィデックでは、中小企業向けに売掛金の早期資金化サービス「C.F ダイレクト」を事業化している。その仕組みは上図のファクタリングと共通しているが、同社のクライアントには大手の小売チェーンも名を連ねている。

 

(7)【売掛金焦げ付き先へのサービサー導入】

売掛金の請求を何度しても入金してこないという悪質な取引先については、債権管理回収業者(サービサー)に未収金の取り立てを委託するという最終手段がある。債権回収業は、平成10年に日本でもサービサー法が制定されたことによって合法的に認められるようになった。現在では法務省からの営業許可を得たサービサー業者が国内に約100社ほど存在している。
■債権回収会社(サービサー)制度について(法務省)
http://www.moj.go.jp/KANBOU/HOUSEI/chousa01.html

★サービサーが回収代できる債権には、金融機関の買付債権の他、通販会社や流通会社の売掛債権も含まれている。具体的な債権回収のモデルとしては、焦げ付いた売掛金を抱えている会社から集金代行の依頼を受ける「受託型」と、サービサー自身が焦げ付いた売掛金を債権者から買い取った上で債務者に対して代金を請求、回収する「買取型」とがある。
受託型のモデルでは、代金の回収に成功した場合に回収額の約30~50%がサービサーの回収手数料となる。買取型のモデルでは、サービサーが焦げ付いた売掛金の債権を10~20%程度で買取り、それ以上の金額を債務者から回収することに成功すれば「回収額-債権買取額」の差額が収益となるわけだ。

《受託型の売掛金回収代行》

債権者 サービサー 債務者

《買取型の売掛金回収代行》

債権者 サービサー 債務者

焦げ付いた売掛金にサービサーを活用しても未収金を全額回収することは難しいし、サービサーの手数料も割高ではあるが、売掛金回収ノウハウとしてサービサーを使っている企業に対しては、悪質な取引先も支払いの優先順位を高めるという焦げ付きの抑止効果が期待できる。また焦げ付いた債権をサービサーに買い取ってもらうことにより売却損を計上すれば、決算上は一時的にダメージを受けるものの、不良債権を長年抱えて会社をジリジリと疲弊させていくことがなくなる。

もちろんサービサーの活用は最終的な手段としてではあるが、厳格な売掛金回収のノウハウを持っている会社には、悪質な業者が近寄ってこないという効果が大きい。企業間の取引には信用が重視されるが、取引先からの未払いを一度でも許してしまうと、その噂が業界に広がって他社からの信用も失ってしまう懸念があるのだ。取引先との支払条件は良好な信頼関係を築く上でも大切な項目。「こことの取引は大切にしたい」という会社に対しては、決済の優先順位を他社よりも高くするのが普通である。自分の会社の取引先がいずれも支払サイトが長いようであれば、それは取引の力関係がいずれも弱いことを意味していると捉えておくべきだろう。

 

(8)売掛金回収の失敗に中小企業がどう対処するか

●何度も交渉しているのに回収できない・・
売掛金の未回収のため企業の方でも回収努力をしているのですが、「実際にどんなことを行っているんですか?」と聞いてみると

「担当者の方から何度か電話連絡をしています。」
「担当者から電話と合わせて催促の手紙やFAXを送っています。」
「担当者が相手先に行って直接支払の交渉をしています。」 などの回答が一番多いです。

1.担当者任せ
2.会社としての方針がない

  • ◎担当者任せではその人の能力次第になってしまうのです!
  • ◎できるだけそうならないためには、売掛金回収に強い人が専門に対応することか、会社としてキチンと方針を決めて回収に臨むことです。

方針とは
"交渉してダメだったらどうするのか"これを決めることです。

 

※注意していただきたいのは、この方針を決めるに当たって、客観的な以下2つの資料を見て考えて欲しいということです。

・これまでの取引経緯を整理たもの
・相手先の会社情報

この中には、回収につながるヒントが必ず隠れています。
「交渉してダメだったらどうするか」という方針を決めるための材料を集めること、これが、あなたが一番始めに行わなければならないアクションなのです。

 

(9)将来性を見て融資

いつも思うのですが、売上を右肩上がりに伸ばしていける経営者の特徴は、売り方を知っている、ということです。

私が経営者と話をすると、タイプが次の2つに分かれますが、
1.自社を語るとき、商品やサービスの素晴らしさ、技術力の素晴らしさを中心に語る経営者。
2.自社を語るとき、商品やサービスをどうやって売っていっていくか、を中心に語る経営者。
1のタイプの経営者は、たいてい売上は上がっていません。横ばいか減少傾向であることがほとんどです。
一方、2のタイプの経営者は、高い確率で、売上が増加傾向です。

経営者が、1のタイプか、2のタイプかは、日頃経営者が、何を重視しているか、によります。
商品やサービスが素晴らしくても、売る力がなければ、なんともなりません。
あなたの会社が売上を増加させていきたいのであれば、経営者としては、2のパターンとなるべきです。
将来性がある企業は、商品やサービスが素晴らしい、というよりも、売る力ある企業です。

銀行に将来性のある企業と思わせるには
★自社が右肩上がりで売上が増えてきている、ということをアピール。
★右肩上がりでないなら、決算書が良い、という内容でアピールするしかありません。

 

(10)うちには払わないのに他社には払っている!

  • ・仕事をするために必要最低限の仕入先や外注先、社員の給与などは支払っています。そして、金貸しへの支払いもしていることでしょう。
  • ・では、なぜあなたには支払いがないのでしょうか?当社の顧問先で、急場の資金繰りを組み立てている時の一場面を見てみましょう。

当 社: 「A社長、このままの資金繰りでは、今月の給与支払いが厳しいですね・・。払うためには、買掛先の支払い延期交渉をするしかないと思います。」
A社長: 「そうですよね・・。そうすると大きな支払先は3社程度になるのですが・・。その中でも、Z社は金額も大きいですが、あそこは遅れるとすぐに取引を停止してきます。それに、Z社からしか仕入れができないものもありますから、ちょっと・・。」
当 社: 「そうすると、あとはB社とC社ですね。そこはいかがですか?」
A社長: 「B社とC社は付き合いも長いですし、頼み込めばなんとかなるかもしれません。」
当 社: 「そうですか。ただ、それでも足りませんね。あとは、このD社とE社はどうでしょう?金額もそれなりに大きいですし、理想的にはB社もC社も含めて、支払サイト自体を延ばしてもらえると、今後も随分楽になるんですが・・・。」
A社長: 「ですね・・。ただ、D社もやはりダメです。あそこの社長は、ともかく支払いにうるさいんです。以前も一日遅れただけで怒鳴り込んでくる始末で・・。E社は、う~ん、この状況ですから仕方ありませんね。なんとかこちらは頼んでみます。」

・同じような重要度だとしても、どこかには支払いをして、どこかには支払いをしないということが起こります。

その差が出るひとつの例が、支払にうるさい会社だから、ということです。

さらに、何としてでも払わなければいけない、と思われている支払があります。それが、金貸しへの借入金返済です。

そうすることによって、明らかに将来的に事業継続が困難になっているにもかかわらずです。給与を払わなければ社員が辞め、買掛金の支払いを止めれば仕入れや外注が現金払いになったり、取引停止になったりするかもしれません。
それほどのリスクを背負ってでも、金貸しには払うのです。
何がそこまでさせるのでしょうか。金貸しとあなたの違いは何でしょうか?

ここをしっかりと考えることが、売掛金回収を大きく前進させてくれるはずです。そしてむしろ、未然に未回収を防止できるようになるでしょう。

 

(11)融資に影響は出る?未回収の売掛金を銀行に突っ込まれた

・売掛金が引っ掛かってしまった場合、入ってくるお金が入ってこないですから、当然資金繰りが悪化することになります。 この場合に、考えられる策はいくつもありますが、その中でも銀行に運転資金の融資を申し込むことを考えてみましょう。

「取引先のA社が倒産して2,000万円引っ掛かってしまいました。その分、融資してください。」 こう言って融資を申し込んだとします。その時の銀行員の本音は、「これは、審査はなかなかとおしづらいな・・。」です。

極端な話、いつも運転資金の融資を申し込むときみたいに、わざわざ売掛金が引っ掛かったことを銀行に言わず、融資を申し込む方がまだよいです。

なぜなら、売掛金や受取手形が回収できないものだとわかると、その金額をまるまる、あなたの会社の評価から落とさなくてはいけなくなるからです。

では、売掛金が引っ掛かってしまった事実を言わないで融資を申し込んだらどうなるのでしょう?

実は、すぐにはわからないことが多いのです。
例えば、
・自分の銀行の取引先だった
・その売掛先を調べてみたら、倒産していたことが分かった。
・連続した2期の決算書を見て、その売掛先への売掛金金額が全く同額である。
ということになれば気付きます。
つまり、すぐには気付かないかもしれませんが、いずれは銀行にもわかってしまうということです。

このように考えていくと、売掛金が引っ掛かってしまうと・・

1.資金繰りが悪化する
2.銀行の融資審査に影響が出る
3.さらに資金繰りが悪化する

という負の循環に陥ってしまう可能性があるということになります。 こうならないためには、引っ掛からない対策と共に、もし売掛金の未回収が出てしまっても、すぐに回収できる仕組みが必要です。

 

(12)次々に未入金が出てきてきりがない・・

売掛金回収のことを考えている人は、既に起きてしまった状況に対処するためが多いです。 そうして起こった問題にだけ対処している限り、同じことが何度でも繰り返されます。なぜなら、根本的な考え方や仕組みは何も変わっていないからです。

根本的に売掛金の未回収を出さないようにするためポイントは3点あります。

1.新規取引先の審査
2.既存取引先の管理
3.売掛金回収・債権回収

1の新規取引先の審査について

新規取引先の場合、そもそも、その取引先と売掛取引を行っていいのか、後払いでもキチンと支払ってくれるのか、その取引先の信用力から判断して、支払条件はどこまで許せるのか(何ヶ月後までに支払ってもらえればいいのか)、売掛金の限度額はいくらまでにするのか、などの取り決めを行っていると思います。

ここがまず始めのポイントです。
この審査を厳しくするのか、緩くするのか、この調整で売上が上がったり下がったりすると同時に、未回収も比例して増えたり減ったりすることになります。

◇審査厳しい=売上減少=売掛金の未回収減少=安全性高い
◇審査緩い =売上上昇=売掛金の未回収増加=安全性低い

2の既存取引先の管理について

売掛取引が開始された後、継続的に取引を行っていく中で、変化する取引先の信用状態をどのように把握し、売掛金の限度額や支払条件をどのようにコントロールしていくのかということです。

例えば、ある取引先に資金繰り悪化や倒産の噂が出たとします。
この時に、新規取引時に審査した当時の取り決めどおりに取引を継続するのか、リスク回避策として、外部の調査を入れたり、営業マンを確認に出向かせる、さらには、取引額を減らしたり、ストップしたりと条件を変えるのかということです。
ここをキッチリと行うのか、緩くするのか、この調整でコストが上がったり下がったりすると同時に、売掛金回収・債権回収も比例して増えたり減ったりすることになります。

◇管理厳しい=コスト上昇=売掛金の未回収減少=安全性高い
◇管理緩い =コスト減少=売掛金の未回収上昇=安全性低い

3の売掛金回収・債権回収について

売掛金の未回収が発生してしまい、その対処をどうするのか、最悪の場合の売掛金回収をどのように進めていくのか、これが最後の段階です。
ここは、どの場合にはこうするというルールや、それを実行するスピードによって回収率が変化していくことになります。

◇回収アクション早い=売掛金の回収率良い=安全性高い
◇回収アクション遅い=売掛金の回収率悪い=安全性低い

このように考えていくと、売掛金回収・債権回収の段階に至るには、その前に1の新規取引先の審査と2の既存取引先の管理という、2つの段階が必ず踏まれているということがわかると思います。

未回収の売掛金が発生し回収できていないという結果は、「売掛金回収・債権回収の方法」と共に、その前の段階である、「新規取引先の審査」と「既存取引先の管理」にも原因があるということです。

つまり


根本的に今後の未回収をなくしていこうと考えるのであれば、その前の段階である1の新規取引先の審査、2の既存取引先の管理も含め、3の売掛金回収・債権回収の方法と共に、3つを考え合わせる必要があるのです。

 

(13)危ない会社を事前に見極めることができていれば・・

起きてしまった未収金に対する対処法を学んでおくことも必要ですが、それ以前に、どうしたら引っ掛からないのかを学ぶことはより重要になってきます。

どのように危険を察知するのかについて、既に取引のある売掛先の管理という点にスポットを当ててお話しましょう。

重要なポイントはいかに他社よりも早く危険な兆候を掴むことができるか
他社が先に気付いて回収のアクション、例えば財産への差押えなどを行ってしまえば、その取引先は倒産の危機に陥ることも考えられます。仮にそうなれば、あなたの会社は取りっぱぐれることになり兼ねません。
こうしたことを防ぐためにも、また、相手にまだ体力があるうちであれば、円満に解決できる可能性が高いということからも、いかに早く危険兆候をつかめるかが重要になってくるのです。
そう考えていくと、誰がその兆候を感じ取れるのかというと、必然と絞られてきます。
営業の形態にもよりますが、取引先と日頃コミュニケーションを取っているのは営業マンです。
そして、営業マンの仕事の定義を、単に受注を受けて売上を上げてくるだけでなく、その売上を回収するところまでが仕事である、とキチンと定めることです。

営業マンは取引先のどんな点に注意を払えばいいのでしょうか。
まず、情報の入手先ですが、
□取引先(社長・役員・経理財務担当・営業担当・総務など)
□同業者
□取引先の販売先
□業界団体
以下のような例が危険兆候と捉えられます。
【営業面】

 ⇒販売先に変化があった
  ○主要な販売先が倒産した
  ○クレームから主要な取引先に取引を停止された
 ⇒仕入先に変化があった
  ○主要な仕入先がかわった
  ○理由なく注文が大幅に増加した
  ○ライバル会社への発注分が急にこちらにくるようになった
 ⇒商品構成が大幅に変わった
  ○旧来の仕入先に未払いが発生し、仕入できなくなったために新しい仕入先が入ってきた
 ⇒在庫が積み上がっている
  ○商品・製品にクレームが多く返品が多い
  ○売れいきが悪く在庫が積み上がっている
 ⇒本業に関係ない事業に手を出し始めた
 ⇒新規事業や関連事業がうまくいっていない
【財務面】

 ⇒支払日が遅れた・変更された
 ⇒回収額が約束と違った(請求書どおりに払わない)
 ⇒支払方法変更の申し出があった(現金・小切手から手形へ)
 ⇒手形サイト延長の申し出があった
 ⇒主取引銀行が変わった(支払銀行の変更)
 ⇒脱税等の不正で摘発された
 ⇒ノンバンクからの借入の噂
 ⇒保証金取崩しの申し出があった
 ⇒経理責任者が支払日に不在がちになった
 ⇒小口払いはするが大口支払は延ばそうとする
【人の面】

 ⇒経営者が不在がち
 ⇒経営者夫婦が離婚した
 ⇒経営者や幹部社員が高級外車を乗り回しているなど生活が派手
 ⇒社内で内紛が起こっている
 ⇒幹部社員が退職した(特にNo2や経理財務担当者が重要)
 ⇒従業員の活気がなく、仕事が投げやりになってきた
 ⇒従業員が会社の文句ばかり言っている
 ⇒従業員の定着性が悪くなった
 ⇒ハッタリをきかせた大きな話ばかりするようになった

  • ※あくまでも一例ですが、財務面は、すぐに倒産する危険もある兆候ですから、十分な注意が必要です。
  • ※営業面と人の面は、すぐに倒産とまではいかないまでも、業績悪化の懸念材料としてチェックしておく必要があります。
    そして、これらを組み合わせて状況を判断して下さい。
    例えば既に人の面と営業面に危険兆候が表れていて、ここにきて、支払を遅らせてほしいと財務面の危険兆候まで出た、ということであれば、これは本当に危ないということで判断もしやすくなります。

 

財務ノウハウ(3)

(1)貸借対照表の純資産がマイナスであるとどうなるか

貸借対照表においては、右下にある「純資産」がプラスでなければ、融資を受けられる可能性はほぼ0になります。

また、貸借対照表の表面上は純資産がプラスでも、資産の部にある資産が、資産価値のないものであったら、その分は純資産から差引きされて計算されます。貸借対照表において、純資産は資産-負債ですから、例えば、
 資産50百万円-負債45百万円=純資産5百万円
と純資産がプラスであっても、資産の価値が実質40百万円しかないと、実質資産40百万円-負債45百万円=実質純資産△5百万円となります。純資産がマイナスであることを債務超過と言いますが、この場合は表面上は債務超過でなくても実質的に債務超過ですので、実質債務超過、といいます。

資産価値を注意深く見られやすい項目の一つに、売掛金、があります。

例えば、売掛金が30百万円あっても、そのうちの10百万円の売掛金が回収見込みのない不良売掛金であれば、実質売掛金は20百万円とみられます。
ですから、売掛金を銀行にどう見られているか、は気をつけておかなければならないことの一つです。

 

(2)銀行が不良売掛金をどう発見するか

次の2つのパターンがあります。

  • 1.売掛金が、前の決算書と同じ金額である。
例えば、A会社に対する売掛金が、前の決算書の勘定科目明細では
8,530,000円、今回の明細でも8,530,000円、計上されていたとします。
1年をまたいで、売掛金が全く同じ金額であることは通常ありえないですから、このパターンは不良売掛金とみられやすいです。
  • 2.売掛金の勘定科目明細で「その他」に計上されているものが異常に多い。
売掛金の勘定科目明細をみると、
B社
C社
D社
E社
その他
合計
4,240,000円
1,490,000円
747,000円
126,000円
9,420,000円
16,023,000円





となっていたとします。
E社が126,000円なのに、その他で9,420,000円で上がっているのは、明らかにおかしいです。れを見ると、銀行は「ここに不良売掛金が隠されているな」と見ます。

※もちろん、倒産した売掛先の会社名が表示されていて、銀行はその売掛先の会社名を調査して倒産している会社とはじめて分かって、それを不良売掛金とするのが通常ですが、ただ銀行も、売掛金の勘定科目明細にずらっと並んでいる売掛先、1社1社、調査するのも大変ですから、倒産した売掛先の会社名が表示されていても、案外、銀行は分からなかったりします。

ただ、この2つのパターンは、銀行にとって不良売掛金を見抜くパターンなので、そこは頭に入れておいてください。

 

(3)債権回収の応用編

同意不要・裁判手続き不要で相手の売掛先から直接回収できるのか?

  • ・つい先日、外注費を払えず資金繰りに窮してしまったA社さんから、ご相談をいただきました。
  • ・外注先への支払いができなくなってしまった原因は、まさにその外注先にお願いした仕事の代金が、発注者の方からもらえていないからでした。

条件付きになりますが、F社がD社から直接回収可能なんです!

→納品済→ →納品済→
F社(外注) A社(相談者) D社(発注者)
←代金×← ←代金×←
[直接交渉]----------→

このF社の回収活動は、『債権者代位権』に基づいて行われていると考えられます。

債権者代位権とは・・・・・ 債権者が、債務者の持っている権利を債務者自身に代わって行使する(代位する)権利のことを言います。(民法423条)
1.債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利はこの限りでない。
2.債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為はこの限りでない。

F社としては

1.A社が持つD社に対する売掛金を譲り受ける『債権譲渡』であったり、
2.売掛金を回収することについて代理権を授与してもらう『代理受領』という方法でも、
A社がD社に対する売掛金を回収するための権利を行使することができます。

しかし、この2つの行為をするには、A社からの"同意"が必要です。
3.A社が持つD社に対する売掛金を『差押え』て回収することも可能ですが、差押えのためには、あらかじめ裁判で勝訴するなどして"債務名義"という差し押さえの許可証のようなものを取得したりするなど、面倒な手間やコストが多いのは言うまでもありません。
4.A社の同意も、債務名義もないままに、A社が持つD社に対する売掛金を回収する行為を行うことができるとしたのが、『債権者代位権』

債権者代位権は、簡易な差押えとも言われています。
債権者であるF社にとっては便利な制度ですが、債務者のA社にしてみれば、自分の財産を他人によって勝手に管理されることになり、過度に干渉される危険性をはらんでいます。
そのため、下記要件をクリアしていなければいけないことになっています。

①A社が無資力であること
※無資力=債務超過
※債務超過:会社が保有する資産額よりも負債額の方が多い状態
※例外事項あり
②A社がD社に対して回収活動を行っていないこと
※例え生ぬるい回収活動であっても、A社がなんらかの回収活動をしていれば権利行使ができません。
③債権者代位権を行使するのは履行期が到来している金銭債権が原則
※例外あり
※D社からA社への売掛金支払日が過ぎていないのに、F社がこの権利を行使することはできません
④代位行使される権利が一身専属の権利でないこと
※一身専属の権利:慰謝料請求権や離婚した際の財産分与請求権など

★なお、当然の事ですが、権利を行使できる額は、F社のもつ債権額の範囲分までに限定されます。100万円の売掛金を守るために、300万円分を取り戻す、ということをやってはいけません。
しかし、こうして自らが取りたてた分は、直接自分(債権者)で受け取っても良いことになっています。

注意していただきたいのは、裁判所の許可も、ここでいうA社の同意も不要という非常に強力な権利ですから、その取り扱いには慎重を期していただきたいと思います。
現実的に自分の債権回収に活用しようと思えば、まずは一度、専門家へ相談された方が無難でしょう。
やってはみたが、後から裁判にかけられて返す羽目になった、ということもありえるからです。
まずは相手の状況を見極め、そこから回収方針を定めることが先決です。

 

(4)水商売の世界に学ぶポイント制の給与システム

決められたビジネスルールに従って点数化するシステムは、顧客だけでなく従業員に対しても効果的に活用することができる。

会社の給与体系
「固定給」  月々安定した固定給の比率が高いと従業員は前向きな努力を怠りがちになる
「実力給」  仕事の成果に応じた実力給の比率を高くすると、一部の優秀な社員だけが高給を得て、それ以外の社員は軒並み給料が下がってしまい、退職者が増える弊害がある。

そこで経営者はある水準の給与は保証しつつ、さらに努力次第で高収入が得られるような給与体系を考案しなくてはならないが、ここにもスコア化の仕組みを利用することが可能だ。

それに近い給与体系で斬新な工夫がみられるのが、"キャバクラ"と呼ばれる時間制クラブで全国的に普及しているのが「ポイント時給制」

これはホステスが接客することで売り上げた項目をすべてスコアとして毎月集計して、その総得点数によって当月の時給単価を決めるという方式。たとえば「本指名=1ポイント」「場内指名=0.5ポイント」「同伴=1ポイント」「ドリンク1杯=0.1ポイント」というように仕事の実績をスコア化して、一ヶ月間で各ホステスが何ポイント獲得したのかを集計する。

《ある時間制クラブの時給体系》
・月間100ポイント未満の場合............時給2,500円
・月間100~ 119ポイントの場合.........時給2,800円
・月間120~ 139ポイントの場合.........時給3,100円
・月間140~ 159ポイントの場合.........時給3,400円
・月間160~ 179ポイントの場合.........時給3,700円
・月間180~ 199ポイントの場合.........時給4,000円
・月間200~ 219ポイントの場合.........時給4,300円
・月間220~ 239ポイントの場合.........時給4,700円
・月間240~ 259ポイントの場合.........時給5,000円
・月間260~ 279ポイントの場合.........時給5,300円
時給×労働時間

・一ヶ月の労働時間数:1日6時間×20日=120時間
●月間85ポイント獲得したホステスの給料←──┘
   │ ...時給 2,500円×120時間=30万円
   │
 ┌┤ ●月間 210ポイント獲得したホステスの給料
 ││ ...時給 4,300円×120時間=51.6万円
 ││
 │└─●月間 270ポイント獲得したホステスの給料
 │  ...時給 5,300円×120時間=63.6万円
 │
 └─→ 同じ労働時間でも獲得したポイント数で給料は2倍以上の差になる。

上表のポイント制度では、人気がないホステスでも時給2500円は最低ラインとして保証されていて、人気が上がる(ポイント数が増える)ほど当月の時給単価が高くなる仕組みになっている。逆に、先月までは人気が最も高くて時給5300円のホステスでも、今月は80ポイントしか稼げなかったということであれば、時給は2500円の設定に下がるというわかりやすいシステムになっている。

仕事の内容をスコアとして点数化して集計したものに時給単価を乗じるという給与体系には、不公平感が少なく、目標の月給を稼ぐには何ポイントを稼げばよいのかという努力の道筋が立てやすい。

 

(5)未回収の売掛金と共に心中する?

実際に、当社の顧問先やご相談に来ていただく会社でも、高確率で未回収売掛金や貸付金が残っていて、既に倒産していたり、所在不明なこともあるのですが、相手先が営業している状態で回収できない売掛金があることもかなり多いです。

そうした中小企業の社長に聞いてみると、 ・取引がなくなれば売上減少が避けられないため円満解決したい考えが根底にあるようです。

既に資金繰りが悪化している会社と付き合うのですから、危険な賭けになることが多いはずです。
であれば、本当に円満解決できる相手なのか、最悪の場合でも回収できるような相手なのか、そして、むしろ今後付き合うべき相手なのかの検証がなされているべきだと思います。

判断基準
1.「倒産のサインはどれくらい出ているか」
【営業面】  ⇒販売先に変化があった
 ○主要な販売先が倒産した
 ○クレームから主要な取引先に取引を停止された
⇒仕入先に変化があった
 ○主要な仕入先がかわった
 ○理由なく注文が大幅に増加した
 ○ライバル会社への発注分が急にこちらにくるようになった
⇒商品構成が大幅に変わった
 ○旧来の仕入先に未払いが発生し、仕入できなくなったために新しい仕入先が入ってきた
⇒在庫が積み上がっている
 ○商品・製品にクレームが多く返品が多い
 ○売れいきが悪く在庫が積み上がっている
⇒新規事業や関連事業がうまくいっていない
【財務面】  ⇒支払日が遅れた・変更された
⇒回収額が約束と違った(請求書どおりに払わない)
⇒支払方法変更の申し出があった(現金・小切手から手形へ)
⇒手形サイト延長の申し出があった
⇒主取引銀行が変わった(支払銀行の変更)
⇒脱税等の不正で摘発された
⇒ノンバンクからの借入の噂
⇒保証金取崩しの申し出があった
⇒社長や経理責任者が支払日に不在がちになった
⇒小口払いはするが大口支払は延ばそうとする
⇒従業員の活気がなく、仕事が投げやりになってきた
⇒従業員が会社の文句ばかり言っている
⇒従業員の定着性が悪くなった
⇒本業に関係ない事業に手を出し始めた
⇒ハッタリをきかせた大きな話ばかりするようになった
このようなサインです。思い当たる節がありませんか?当然、多ければ多いほどに危険です・・。
2.「支払意思は明確か」について
「払います。」というだけで、いつまで経っても払ってこない取引先があると思いますが、これはまったくダメです。
表面的に「払います」という言葉で支払意思を判断するのではなく、なぜ払えないのか、いつまでに、いくら、どのような原資で払うのかなどについて、具体的に説明できるのか、その裏付けとなる資料があるのかどうかを支払意思が明確かどうかの基準としてみてはいかがでしょうか。
3.「支払能力はあるのか」
もしもの場合に、差押えしてでも回収する原資があるのかどうか、支払能力の有無はこう定義すべきだと思います。
興信所の点数や業歴・知人の紹介だから、昔からの付き合いだから大丈夫などの推論によるものでは、支払能力はまったく判断できません。
逆に、もしそのような判断基準であれば危険です。
支払能力の判断は、そもそも、何が支払能力足り得るのかを知ることがとても重要になってきます。
一般的には、預金、売掛金、不動産などが挙げられます。
これらも、できる限り裏付けを伴わせるべきでしょう。
4.「財務状態はどこまで悪化しているか」
これを測るためには、
・決算書(できれば3期分)
・最新の試算表
・資金繰り表
・銀行借入一覧
などを見せてもらうことができれば詳細に把握することができます。
まずは、このような資料を出してくれるのかどうかが一つの基準であり、次に、出してくれた資料、または興信所などにある資料を分析した結果、どのような状態なのかがもう一つの基準です。

このようにいくつかの基準を作って、本当に円満解決できる相手なのか、最悪の場合でも回収できる相手なのか、むしろ、今後付き合うべき相手なのかをよく考えていただきたいと思います。

 

(6)プロセスを細分化して未入金・未回収効率を下げる

売掛金の発生から回収までの流れを考えていきましょう。


分類 1.与信管理 2.債権回収(未回収売掛金の回収)

 


いかがですか?
自社で機能していないと思われる部分はありましたか?

 


ポイント

実際に改善活動を行っていくためには、プロセスを細分化して自社の現状を確認すると共に、何が理想的なのかも考えていかなければいけません。

そうして、現状と理想的姿の間にあるギャップを見つけていくことで、どうすれば改善していけるのかを考えやすくすることができます。

1.取引先の審査
 ◇取引先の情報収集
 ◇取引の可否決定
 ◇取引限度額の設定
 ◇取引条件の設定
 ◇契約条件の検討
 ↓
2.契約
 ↓
3.取引開始
 ↓
4.取引先の管理
 ◇請求業務
 ◇入金確認
 ◇取引先の定期チェック
 ↓
5.未入金が発生
 ↓
6.自社による回収活動
 ◇回収プラン策定
 ◇支払能力調査
 ◇支払意思喚起
 ◇交渉(口頭・手紙・内容証明)
 ↓
7.法律家への相談
 ↓
8.強制回収アクション
 ◆自社対応
  ⇒差押え手続
  ⇒裁判
 ◆法律家対応
  ⇒法律家名での内容証明郵便(督促状)
  ⇒差押え手続
  ⇒裁判
 ↓
9.回収

以上のような流れです。

 

(7)未入金管理の基本は"期限を切ること"

未入金先へ連絡を取って、まず何をするかといえば

1.未入金理由を尋ねる
2.支払期限を切る

■"期限を切る"にもやり方がある

回収交渉の基本は"期限を切る"ということですが、この期限の切り方にも、正しい方法と正しくない方法があります。
早速トーク事例を見てみましょう。

Aさん:「すいません。まだ御社からのご入金を確認できていないのですが、どうなっていますでしょうか・・。」
Bさん:「あ~すいません。すっかり忘れていたみたいです。すぐにお支払いしますので。」
Aさん:「では、今月中には払っていただけますか?」
Bさん:「わかりました。すいません。」
Aさん:「それではよろしくお願いします。」

Aさんは、支払期日を切れたことに満足しているかもしれませんが、"自分から期限を提示"したことで、もしかしたら損をしているかもしれません。
なぜなら、Bさんからしたら、それこそ10日待ってもらえれば助かると思っていたのに、思いもよらずAさんから今月中と言われ、心の中では小躍りしていたかもしれないからです。
これが積もり積もれば、大きく資金繰りに影響してくることになるのです。

■"後出しジャンケン"交渉術とは・・

希望する条件に合わなければ、
「それは困りましたね」
「もっと早くなりませんか?」
「そんなに資金繰りが厳しいのですか?」

とか、他にも、
「すいません。通常の入金日から1ヵ月を超える場合は、私の判断ではご返答できないものですから、また追って上司の方からご連絡させていただきます。」

のようなルールを作っておくなどして、"牽制"します。

こうして条件交渉を繰り返し、当初から希望していた条件か、それよりもよくなってから条件を飲めば良いのです。

 

(8)部門利益管理で業績UPする

■まず、大切なのは、月次損益です。

経営の出発点としては、売上げではなく、利益の状況を毎月の推移で把握しておくことが、非常に大切になってきます。 なぜなら、利益の配分が企業の将来を決めるからです。

配分の一般的な大きな内訳 ①将来への投資原資
②内部留保
③返済
④税金
⑤従業員への還元 の5つ

※特に、従業員への還元には、注意が必要です。

例えば、従業員に対して、何かの拍子に、今年はボーナスを 出すという言葉を経営者が従業員に言ったとします。
その言葉を経営者は、忘れたとしても、必ず従業員は必ず覚えています。
そして、決算の時期になり、利益が予想より低く、ボーナスを見送った とすると、従業員のモチベーションはどうなるでしょうか?

『社長は言ったことを守らない。』と、 従業員の社長に対する信頼関係というのは、大きく崩れてしまいます。

こういった事が起こらないようにするためにも、 経営者は毎月の利益状況を把握しなければなりません。
利益予想をし、効果的な昇級・昇格を考えるのは、経営者しかできない 仕事ですし、会社の舵取りを行う上で、経理部門の強化・透明性というのは、 企業が発展していく上で非常に大きなウエイトを占める要素であることは 間違いありません。

■その上で、部門レベルの利益管理も非常に大切になってきます。

今後は部門別に経営者を育てる感覚で、営業利益ベースでの予算・実績によって人を評価する仕組みに変えていかないと、部門営業ベースでのコントロールが難しくなってきます。

その為には


現在、顧問先では、部門別にメインバイヤー制度を引き、部門担当者に販売・買取・売場・在庫のマネジメントを行って頂いています。

売上・粗利率・粗利額・買取額・営業利益額・在庫・回転率を 予算化し、実績と比較して月の会議をするようにしています。

★この会議のねらいは、部門担当者の経営者意識の植え付けです。

★もうひとつのねらいは、経営者に従業員に対する目標を 明確化して頂くことです。

経営者も今まで数値で把握されていない会社が多いので、どこが正解かを 迷われている部分があります。それでは、現場の方も迷われるのは仕方が ありません。特に、売上げ予算の設定、粗利率予算の設定、回転率予算の設定は、商売の仕方そのものになります。
要するに、自社の商売の仕方を決定して頂くのです。

■この目標値(自社の答えを)設定をして、毎月の動きを捉えていくことが、第一ステップとしては、非常に大切になってきます。

売上・・・どれだけ客と広くつきあっているか?
粗利率・・・どれだけ客と深くつきあっているか?
回転率・・・どれだけ客と早くつきあっているか?

この3つの指標は、全ての小売業で非常に大切になってきます。

次に、こういった部門利益を正確に算出しようすると、棚卸しの頻度が大切になってきます。ひどい会社になると、年1回の棚卸しだけという事になりますが、これでは、年間の利益予想が立ちません。顧問先でも毎月棚卸しを行っている所も ありますが、最低限、年に4回、四半期に1回は棚卸しをするようにお伝えしています。

そうしないと


部門利益が確定しないし、部門別の対策が遅れてしまうからです。

★また、棚卸しをするメリットとしては、担当者に在庫の把握をしてもらうこともさることながら、売場がきれいになることもあります。売場の端から端まで実棚卸しを行うので、普段なら見えにくい部分にまで、手が入るので、長期在庫の把握になったり、整理・整頓につながったりします。

ぜひ、部門利益管理をすすめながら、スタッフのレベルアップにつなげられてはいかがでしょうか?

 

(9)節税と銀行融資

あなたの会社が、銀行から融資を受ける機会が多く出てくる可能性があるなら心にとどめておいていただきたいことがあります。

それは、「節税第一に考えない」ということです。

あなたの会社の顧問税理士は、期末になると、税金を安くするための対策をいろいろ提案してきませんか?税金を安くするということは、逆に言うと、利益を減少させる、ということになります。

銀行が融資を審査するに際し、一番注意深く見るものは、あなたの会社の純資産がいくらであるか、銀行は一番、見るところです。この自己資本を大きくすることが、銀行融資を受けやすくする特効薬となります。

その自己資本が、節税によって利益がほとんどなかったり、赤字になったりした場合、銀行の融資審査は、必然的に厳しくなります。

  • ●例えば自動車。必要があるならまだしも、節税のために必要でない自動車を購入したり、高額の自動車を購入したりすると、現金が無駄に流出するので資金繰りに影響が出ますし、それを借入金でまかなえば、将来の借入枠をせまくしてしまうことになります。
  • ●節税のための保険は、決算書を悪くしてしまうので、融資が必要な会社であれば、やめた方がいいです。

無理に経費を作ってまで落とさないというとです。

安易に「節税、節税」と考えないでください。自社の状況をしっかり把握した上で、利益を優先させて融資を受けやすくするか、融資が必要でないので節税対策をとるか、考えてください。

 

(10)資金調達と売上の関係

「A 売上1億円 利益5百万円
 B 売上1千万円 利益5百万円
 どちらの企業が大きな金額で融資を受けやすいか」

答えは、Aです。
Bの方が、利益率は高く、一見融資を受けやすいようにみえますが、銀行が融資をしやすいのは、売上が大きいAの方です。

確かに、銀行の格付が高いのは、利益率の大きいBです。
しかし、例えば銀行に2千万円を申込んだ場合、銀行はAに対しては、「売上1億円だから、運転資金として2千万円ぐらいは必要だろう。」
という考え方をしますが、Bに対しては「なんで売上1千万円なのに、融資が2千万円必要なの?」という考え方をします。

ただ、売上を大きくしたばっかりに利益率を低くして格付が下がってしまうことは問題ですし、また売上を自社で計上するのであれば、その分、回収リスクも大きくなります。バランスを考えていくことが大切です。

 

(11)事業再生・会社再生の道しるべ"撤退"

しばらくやってみて、どうしても売上が伸ばせなかったり、黒字にならなかったり、利益が少ないのに人員・時間・エネルギーがとられてしまう事業になってしまう場合もあります。

その場合は、その事業からの「撤退」を考えるべきです。

「撤退」を考えるにあたっては、部門別の損益が分かるようにすることが大事です。

そして、その事業がどれぐらいの利益なのか、もしくは損失なのか、その事業を行うことによって会社にプラスになるのかどうか、たいして利益もないのに経営者がエネルギーをとられてしまうことはないかなど、いろいろ検討し、「撤退」を考えます。

ただ、せっかくはじめた事業、なかなか「撤退」に踏み切れないでしょう。

私自身の会社も、売上に占める割合が1%の事業を3つ、撤退することにしました。
その3つの事業は、わずかながらも毎月利益が出ていて、それが撤退にちゅうちょする一番の理由でした。
しかしその事業にとられる時間とエネルギーを考えると、残り97%の事業に注力した方がよいと考えたのです。この97%の事業の方は将来も大きく伸ばしていけるものであり、こちらを伸ばしていきたいと考えました。
この3つの事業にエネルギーをとられ、残り97%の事業へのエネルギーをその分、注ぐことができない状態が続いていましたので、「撤退」に踏み切ることができました。

「撤退」、ふみきれるといいのですが、経営者の気持ちとしてなかなかふみきれない場合も多いかと思います。
その場合は、コンサルタントや顧問税理士、まわりの人などに相談してみるのもよいでしょう。

 

(12)銀行から支援を受けられない会社 その1

●業績が悪い会社

業績が悪い会社は具体的に、以下の要件にあてはまる会社です。
1.利益が赤字である会社
利益とは、特に営業利益。経常利益を指します。
赤字である会社は、利益により融資の返済をすることが難しくなります。そうなると、融資が返ってこないことを心配し、銀行はそのような会社に融資をしなくなります。
2.債務超過である会社
債務超過とは、決算書の貸借対照表における純資産の部合計がマイナスの会社ですが、そうでなくても、不良売掛債権、不良仮払金などがあり、実質的に純資産がマイナスである会社も、ここに当てはまります。
債務超過の会社は、倒産の黄信号が出ています。そんな会社に銀行が融資をするのは難しいでしょう。
3.赤字・債務超過とまではいかなくても、低迷している会社
現在、赤字もしくは債務超過ではなくても、業績が低迷している会社は、いずれ赤字・債務超過となる事態が予想されます。
近い将来赤字・債務超過となる会社に、銀行が融資をするのは難しくなります。

しかし


上のいずれかに当てはまる会社でも、融資を思うように受けられる可能性を高める方法があるのです!

以下の2つの方法です。
  • ●赤字もしくは債務超過であっても、実態よりも業績を良く見せる決算書を作る。
    (粉飾決算を作るというわけではありません。粉飾決算ではなくても、決算書の作り方によって業績を良く見せることができるのです。)
    また、最近決算書を提出済みの会社でも、決算書の内容よりも実態の業績が良いということを、銀行にうまく説明する。
  • ●近い将来、業績が良くなって、赤字もしくは債務超過の状態から脱することができることを、銀行に説明する。

  • ★このいずれかの方法をとることによって、今まで業績が悪く、銀行から思うように融資が受けられない会社でも、融資が受けられる可能性を高めることができるようになります。

それでも別の資金調達方法があるのではないか、私どもは考えてみます。

よく注目するのは売掛金です。

★売掛金は、担保にすることができます。それを担保に、融資を受けられないか、考えます。


その手法をとるにあたって、望ましい状態は
  • ●売掛先と債権譲渡禁止特約を結んでいない、つまり取引契約書などで、売掛金は第三者に譲渡しません、という特約を結んでいない。
    →特約を結んでいると売掛金は担保にすることができません。
    そもそも売掛先となんの契約も交わしていなければ大丈夫です。
  • ●売掛先の多くが、事業者であり、継続的な取引先である。
    →個人向けの売掛金は担保にできません。またスポットの取引の売掛金も担保にすることは困難です。(その場合、ファクタリングという手法を考えることもありますが。)
  • ●売掛金の総額が2千万円以上ある。
    →売掛金の総額が小さいと金融機関が話に乗ってくれにくくなります。

※またこの手法を説明するときに、相談者の方からよく聴かれることが、「売掛先に、担保の事実を知られてしまうのではないか。」ということです。
ただこの手法を使う場合、売掛先に知られないような方法を使うので、売掛先に知られてしまうことはほとんどありません。

 

(13)他の銀行が融資を出さないことを銀行はどう見るか

私の知り合いの銀行では、融資を出している企業から、3カ月ごとに、銀行ごとの融資残高を聞くようになっていました。

そうやって、その企業がつきあっている他の銀行からも、定期的に融資が出ているのかどうか、確認するのです。

そのため、他の銀行、特にその企業に対しての融資シェアが大きい銀行がしばらく融資を出していないということであれば、銀行は、自分のところだけ融資を出してその後、痛い目にあってはいけないと、融資を出さなくなるのです。

横並びでどこの銀行からも融資が出なくなる事態を避けるためには、特にメインの銀行にて、定期的に融資を受けられるようにしておくことが重要です。

メイン銀行からの信頼を大きくするためには 毎月試算表を見せて業績報告を行い、また3年~5年ぐらいの経営計画を作ってその進捗状況を見せ、常に深い関係を保てるようにしておくことが必要です。

しかし、それでもメイン銀行が融資を出さなくなる時があるかもしれません。


メイン銀行が融資を出さず、一方で多くの返済をし続けているということは、他の銀行から融資が出ていても、その返済負担を補えるほどではなく、早晩、資金繰りが破たんしてしまうことは目に見えています。

そのため、メイン銀行に融資を申し込んでも審査が通らなくなったら、融資の返済金額を圧縮する、リスケジュールの申し出を行うかどうか、検討する時期、ということになります。
その動きを先延ばしにすると、あなたの会社にある資金は、どんどん減っていくことになります。

常に、数ヵ月後の資金繰りを見据えた意思決定を経営者は行わないと、取り返しのつかないところまで追い込まれてしまうことになります。

 

(14)担当の銀行員に「他の銀行もあたってみたら?」と言われた

銀行員が、融資を申し込んできた経営者などに「他の銀行もあたってみてください。」と言った時、その背景にどんなことがあったのかというと、その会社への融資は困難、という銀行の方針です。

あなたの会社を担当する、得意先係(営業係)や融資係の銀行員の頭の中に、銀行のその企業への方針は頭に入っています。 なぜなら銀行は、融資先企業1社1社に、決算書などから導きだされる信用格付とともに、「取組方針」といってその企業への融資スタンスも、格付決定時に一緒に決めているからです。

例えば、次のように5段階があり、どの融資先企業においても、取組方針が決められます。

A.積極推進方針 積極的に融資を売り込むこと
B.推進方針 Aほどではないが融資を売り込むこと、という方針です。AとBの違いは、例えば自分の銀行とともに他の銀行も融資を売り込んできている場合、Aの方針であれば金利を一気に低く提示してでも融資を売り込む、Bの方針であればそこまでしない、というようなイメージです。つまり、収益度外視してでも融資のシェア(その企業においての銀行ごとの融資量のシェア)を高めるか、そこまで無理しないか、その違いがあります。
またAとBはいずれも、その銀行がその企業に対しての融資量を増やしていく方針となります。
C.現状維持方針 現状の、その企業に対しての融資量を維持する程度にとどめる、という方針です。融資は毎月の返済によって残高が減少していきますが、減少した分を埋めるぐらいなら融資していく、という方針です。
D.消極方針 新たな融資は困難になります。返済が進むことにより減っていく残高を埋めるほどの融資まではしなかったり、もしくはその企業への融資を今後しない、ということがDの方針となります。
E.取引解消方針 融資はしないどころか、いろいろな手を使ってその企業への融資を回収していく、という方針です。Eまでいくと、その企業への融資を少しでも多く、早く解消しようと、担当の銀行員は積極的に交渉してくるでしょう。

このように、「取組方針」が、どの企業に対しても決められています。

「他の銀行もあたってみたらどうでしょうか。」と言われたら、
あなたの会社は、大きな確率で、「D.消極方針」「E.取引解消方針」ということです。
 

はじめから融資が出ないのが分かっているのであれば、その場で断わってくれればよいではないか。と思うかもしれませんが、なぜその場で断わってくれないのか。それは、次の理由からです。

1.その場で断わって、融資を申し込んだ経営者などが怒り出すことをおそれている。(一応銀行内で審査したがだめだった、という形で断りたいということ。)
2.融資の可否は、担当の銀行員で決めるのは銀行内で禁止されている。(支店長など上層部に報告し、断ることについての承認が必要。)

「他の銀行にもあたってみてほしい。」という言葉が出てきたら、融資審査が通る可能性は少ないと考え、早めに次の手を考えておく必要があります。

 

(15)融資受けられない+手形を切っている会社の落とし穴

1.銀行から融資が受けられない。
2.買掛金の支払いなどで手形を切っている。

このような企業は、より資金繰りに注意を払っていただきたいです。

例えば、次のような企業があるとします。

年間の売上400百万円 当期利益1百万円、減価償却費9百万円借入総額200百万円 毎月返済金額5百万円

簡易のキャッシュフロー計算式で、年間キャッシュフローを計算すると当期利益1百万円+減価償却費9百万円=年間キャッシュフロー10百万円となります。
年間返済金額は60百万円(5百万円×12ヶ月)なので、年間返済金額60百万円>年間キャッシュフロー10百万円となり、このような企業は単純に計算して、60百万円-10百万円=50百万円、現金預金が減少していくことになります。

このような企業の場合、年間で減少する現金預金50百万円は、融資を受けて補うことになります。このような融資を銀行用語でハネ資金と言います。
名目は運転資金での融資となりますが、実際はキャッシュフローで返済できなかった分を融資を受けて補う形になります。

しかし、問題はこのようなハネ資金の融資が受けられない企業です。

そのような企業の経営者として、もっともやってはいけないこと、それは資金が足りない分を、手形を多く切ることによって乗り切ろうとすることです。

例えば、現時点で支払手形が20百万円あるとしましょう。
上記例の企業で、年間50百万円の現金預金が減少し、その分を補てんする融資が受けられないとすると、やってしまいがちなのが、その不足分を、手形を切ることによって補おうとすることです。

資金不足分を手形で資金繰りすることにより、支払手形はどんどん膨らんでいき、1年後は多額の支払手形となります。行き着く先は、支払手形の不渡り→倒産、となってしまいます。

上記例の企業の場合、融資が受けられず資金繰りがまわらないのであれば、やるべきことはリスケジュール、つまり返済条件の変更を銀行に交渉することです。

毎月の返済金額5百万円を、ほぼ0円までに持っていくことができれば、支払手形を増やしていくことなく、資金繰りがまわるようになっていきます。

銀行融資はリスケジュールして毎月の返済金額を減らすことができますが、支払手形はそんなことはできません。手形ジャンプという奥の手はありますが、銀行融資のリスケジュールの方がずっとやりやすいです。

 

(16)赤字の会社でも融資が受けられる

■事業計画書を使う

保証付融資はいっぱいいっぱい、決算書の内容が悪くビジネスローンが悪くビジネスローンが通らない、このような企業は、資金調達の手段がもうないのでしょうか。

このような状態の企業が銀行から融資を受けようとするために強力なツール、それは「事業計画書」です。

※赤字であったり、債務超過であったりする企業でも、事業計画書により融資が出るケースは、最近多く出てきています。
不良債権の処理も一段落し、貸出姿勢が積極的になりつつあるのが、その背景にあります。

  • ★事業計画書は銀行よりも、政策公庫、商工中金などの、いわゆる政府系金融機関に有効に効いてきます。政府系金融機関は、営利を第一目的とせず中小企業の育成を第一目的としているので、現在の状態が良くなくても、事業計画書でアピールすることにより融資を期待しやすいのです。
  • ★金融機関が事業計画書に求めるものは、会社の理念、商品の将来性など、文章として書くものよりは、今後3年ぐらい、売上・利益はどのように推移していくのか、その「数字」です。もちろんその数字の根拠も書かなければなりません。売上が毎年倍増していくと言っても、それはどのように達成されるのかが書かれなければいけません。
  • ★銀行員は、「数字」を第一にします。いくら立派な理念、いくら立派な商品があっても、それが利益に貢献していくということを数字で示すことができなければ、その事業計画書は銀行にアピールするものとはほど遠いものとなります。
  • ★数字をあげて具体的に自社について分析し、説明できるような経営者を、有能とみます。 事業計画書でもそうです。いくら立派なことが文章でならべられていても、数字に落とし込めていなければ、事業計画書の価値は大きく落ちます。

 

(17)銀行が融資をこれ以上、出してくれない!

その会社の状況を調べてみると・・・

1.決算内容は特に悪くない。
2.取引銀行は1つ。
3.会社は年々、売上が上がっている。

対策は


取引銀行を増やす。

★銀行から見ると、1つの企業に対して融資できる総量は、限りがあります。
なぜなら、銀行は融資先を分散することによって、リスクを抑えているからです。

年々、売上が上がってきている会社は、「増加運転資金」が必要となります。売上が大きくなればなるほど、売掛金、在庫で抱える金額は大きくなります。融資を多く受けていくことができなければ、会社の成長は止まってしまうのです。

成長著しい会社は、銀行とのつきあい方を考え、融資を増やしていけるように対策をうっていくことが重要なのです。

融資取引銀行を増やす銀行と接点を持つための方法
  • ①ねらいをつけた銀行と取引している知り合いの経営者に、紹介してもらう。
    ただ、この方法では、紹介してくれる知り合いの経営者がいなければなりません。
  • ②ねらいをつけた銀行に、まずは預金口座を開設します。
    銀行は、法人が預金口座を開設したいと言ってきた場合、テラー(預金窓口の行員)ではなく、上席者が出てきます。
    なぜなら、法人は、実態のない法人や、犯罪に使われる法人も多く、そのような法人に預金口座を開設したら銀行はやっかいなことに巻き込まれるためです。
  • ③そのため、法人が預金口座を開設したいと言ってきたら、上席者が対応し、預金口座を開設してもよいのかどうか審査します。
    審査といっても、融資の時みたいに厳しい審査ではありません。何か問題がありそうな法人かどうかの審査です。
その審査を、逆手にとるのです。
  • ④上席者が出てきたら、法人が問題ないかどうか審査するために、いろいろ聞いてきますが、その時に、会社案内と、最新の決算書を渡すのです。理由は、「問題ない法人であることを証明するために会社案内と決算書を見てほしい。」というようにします。
  • ⑤そうしたら、会社案内と決算書は、よほど営業センスのない預金係の上席者ならともかく、普通であれば、 その会社案内と決算書は営業係にまわされます。なぜなら、銀行にとっては新規融資先獲得のチャンスだからです。
⑥決算書を見て、この企業に一度行ってみよう、と銀行員に思わせたらしめたものです。

 

(18)銀行から資料の提出を要求されたが、自社を警戒しているのか?

(質問) 今、リスケジュールを各銀行様にお願いしてます。
1つの銀行が言われますには、信用保証協会は長くて返済期間を5年に延ばすのがせいいっぱいです。またリスケジュールについて保証協会が審査しましてこれもどうなるか当銀行では解りません。保証協会が決めることですからとのことですが、これは言われるままにのみ込まなくてはいけませんか?
(回答) リスケジュールの考え方は、返済期間を5年に延ばす、というような考え方ではなく、毎月の返済金額を少なくする、という考え方です。 例えば、ある融資の残高が1200万円、毎月の返済金額が40万円としますと、残り返済期間は2年半ということになりますが、この返済期間を延ばして5年にする(そうすると毎月の返済金額は20万円になる)、という考え方ではなく、毎月の返済金額を1万円にする、という考え方です。
「返済期間」が先にくるのではなく、「毎月の返済金額」が先にくるのです。「返済期間を延ばしたい」という交渉ですと、現在A様が体験されているような交渉になってしまうので、そうではなく「毎月返済金額を1万円にしてほしい」という交渉を行う必要があります。

銀行の言うことにほんろうされていらっしゃるみたいですが、銀行は、「銀行にとって一番メリットとなることを言う」ので、銀行の言うことに惑わされないことが重要ですね。

 

(19)リスケジュール

この質問、多くの経営者の方からいただきます。

そもそも銀行は、融資を行ったらその後、3カ月に1回は、試算表や銀行ごとの借入一覧は要求します。

融資先企業ごとに、ファイリングされ、その資料の中に、試算表を添付し、銀行ごとの借入明細を付けています。それを、担当の銀行員は3カ月に1回のペースで更新しなければならないのです。
それに基づいて、企業に、資料提出を依頼しているだけです。

だから、試算表や銀行借入一覧を要求されたことは、融資を受けている企業にとっては当たり前のことで、そのことだけで何も心配することはありません。

 

(20)銀行から今までにない資料を要求された

例えば、売上先の一覧や、仕入先の一覧など、今までに提出したことのない資料を要求されたとします。

★この場合、次の3つのケースがあります。

  • 1.融資申込後の融資審査において、稟議書を書く人が、稟議書の資料の肉付けとして、詳細な資料がほしい、もしくは稟議書が回覧されるにあたって、融資係長や支店長などから、ここをもう少し知りたいという指示があって、資料を追加したいケース。
  • 2.決算書提出後、決算書の中の勘定科目明細で、不足している部分があったり、もしくは決算書を分析するために細かい明細が必要であるケース。
  • 3.銀行の自己査定作業の中で、債務者区分の決定にあたっての判断材料として資料不足であるところを補ったり、もしくは金融庁のヒアリングにあたって銀行が金融庁から突っ込まれないようにあらかじめ想定される資料を用意しておきたい場合。

  • ◎いずれにしても、資料不足の状態があり、そこを補いたい、という趣旨が第一となります。
  • ◎資料不足を補いたいということですから、資料の提出を要求すること事態が、銀行がその企業を警戒している、ということには結びついてきません。

★銀行が聞きたいポイントは、だいたい決まっています。

なぜこの資料が要求されたのか、その資料を聞くと、銀行は何を知りたいのか、だいたい分かります。

例えば売上明細であれば、

  • ・こちらの会社は、安定的な売上先はどれぐらいあるのだろうか。(数年にわたっての売上先ごとの売上金額。)
  • ・1社もしくは数社へ売上を大きく依存しているのかそれとも売上は分散されているのか。
  • ・それぞれの売上先の、業績や安全性はどうなんだろう。
  • ・売上高は、粉飾していないだろうか。

だから、例えば売上明細を提出するにしても、その売上明細から見えてくる自社の弱点を考え、それを補うような文章を付けておくと、銀行に与える印象は良くなります。

例えば1社への売上依存が6割あり、その企業の動向に左右されやすい体質であれば、「前期の売上の6割はA社によるものであるが、弊社としてはA社依存ではA社の動向に左右されやすいため、売上先を分散できるよう、B社以下既存の売上先に営業担当を1カ月に1回訪問させ新たな受注ネタの情報収集をするとともに、○○県内の業種○○業の企業を300社ピックアップし、新規開拓の活動を行っている。」

現状の弱点をほったらかしにしているのではなく、その弱点を経営者としては把握し、それを克服するために対策をうっている、という姿勢を見せるのです。

それで銀行に伝えたことが、融資審査の材料となり、自己査定の債務者区分決定への材料となり、良い方向に向かうのです。ただの資料提出という作業自体でも、それをメリットにできないか、工夫してみてください。

 

・ストック型の借入

会社を倒産させない資金繰りの鉄則は、現金預金をできるだけ多く持っておく、とても単純ですが、これが一番の、資金繰り策、となります。

例えば年商600百万円(6億円)、月商50百万円(5千万円)の企業であれば、その企業の現金預金が一番少なくなる瞬間(集中支払い日に支払った後など)に、50百万円の現金預金がある状態、です。

■現金預金を豊富に持つには、やはり第一に銀行から融資を受けることです。

×借入総額が少ないのが安全な経営だ!と言う人がいますが、大間違いです。

◎現金預金が多いのが安全な経営

借入総額が少ないのが安全な経営と思いこんで、そこに経営者の目がいってしまうと、現金預金がぎりぎりの状態でまわさなければならない事態に陥りかねません。
そして、資金不足となってしまう時にやっと気がついて、あわてて銀行から融資を受けようとしても、そんなに簡単に受けられないことでしょう。

「借入総額が少ないのが安全な経営だ」論の根拠は、借入総額が多いと返済負担が大きいから、借入総額を少なくしよう、ということでしょう。
借入総額が多くなり、返済負担が大きくなった。その状態で、融資を定期的に受けて資金繰りをまわしていたが、ある時から融資が受けられなくなった。
そのような時には、銀行と交渉して返済金額を0円近くにしてもらえればよいです。

 

また、融資を受けて、それが使われずに月々返済されていくのみだから、利息(と保証協会保証料)がもったいない、という考え方もあるでしょう。
ただ、それは「保険料」のようなもので、融資で受けた金額が使われずに月々返済されるのみであれば、それはそれでよいのです。

 

融資は、受けられる時に受けておくべきものです。資金が足りなくなりそうだからと資金不足の直前に受けようとし、うまく融資が受けられなかったら、それだけですぐに経営の危機に陥ってしまいます。

融資は、企業にまだ余裕がある時に受けやすいものですから、受けられる時に受けておきましょう。

 

・「これが最後の融資ですよ」は何を意味するか

銀行から融資を受ける際、「これが最後の融資ですよ。」と言われたとします。
言われた企業側としては、この言葉は何を意味するのか、不安になってしまいますね。

銀行員が融資先企業の方にこの言葉を伝える時の経緯は、だいたい次のようなものです。

企業から融資の申込みを受けた。
  ↓
銀行内で、融資審査が行われた。
  ↓
しかし、審査はスムーズに通らず、銀行内で融資を出すか出さないかについて議論が何回も交わされた。
  ↓
ただなんとか今回の融資は出したいと、審査通過に有利な材料を得るために、企業からも追加の資料の提出を受けるなどして、あらためて審査が行われた。
  ↓
そのような努力の甲斐もあって、やっと今回の融資審査は通った。
  ↓
ただ、今回の審査は難航したため、企業側に、次の融資は簡単に出るとは思ってもらいたくないと銀行は考えた。
  ↓
銀行の担当者は、その企業に「これが最後の融資ですよ。」と伝えた。

「これが最後の融資ですよ。」と銀行から言われたことがある方は、だいたいこのような流れがあったのではないでしょうか。

ここから考えると、「これが最後の融資ですよ。」と言われた場合、銀行はその会社に対し、融資審査は厳しく行う、というスタンスであることになります。

しかし、本当にこれが最後の融資となってしまい次に融資を申込んでも絶対に通らないかというと、そうではありません。⇒なぜなら、次に融資を申込んでも通らないということであれば、そもそも今回の融資自体を出していないはずだからです。

今回は融資が出たということは、その会社に対しての銀行の「取引方針」は、下記の区分が銀行にあるのだとしたら、 A.積極推進方針 B.推進方針 C.現状維持方針 D.消極方針 E.取引解消方針 「C.現状維持方針」となっている可能性が高いと思われます。 ※ちなみに「C.現状維持方針」の企業に対しての銀行のスタンスは、その企業に対しての融資量を維持する程度にとどめる、という方針です。

しかし


今後の企業の状況によっては「D.消極方針」、つまり新たな融資は困難になる方針、に転落してしまう可能性もある、という背景があって、「これが最後の融資でよ。」という言葉になって現れるのです。

具体例

A銀行で、現在受けている融資は80百万円である。今回は20百万円の融資を受けてA銀行での融資残高は100百万円になったが、A銀行からは「これが最後の融資ですよ。」と言われた。ちなみにA銀行には、今回の融資後、全部の融資を合わせて1ヶ月2百万円ずつ返済することになる。

この場合、1年後にはA銀行での融資残高は76百万円になります。この会社は利益がそんなに出ていなく、返済は手元にある預金から行っている形(利益によるキャッシュフローで返済できていない)になってしまっているので、このままでは資金不足に陥ってしまいます。

このような状況において、この会社は、1年前にA銀行から言われた「これが最後の融資ですよ。」の言葉どおり、A銀行から融資を受けることはできないのでしょうか。


答えは、その時の、企業の業況によります。

ということは、「これが最後の融資ですよ。」という言葉を言われたのであれば、その次の決算がどうであるかが、いつにもまして重要となります。
だから、次の決算が出たら、その銀行に早く提出して融資を申込みしてみて、その銀行のスタンスをすぐにはかるべきです。

そして融資が出ないとしたら、すぐにでもリスケジュール、つまり現在の融資返済の減額交渉を行っていく必要があります。
そうしないと、融資が受けられないのに銀行への返済ばかりが進んで、早晩資金がショートしてしまうことになります。

「これが最後の融資ですよ。」と言われたら、企業としてはその後の銀行対策、そして資金繰り対策により慎重であらねばなりません

 

財務ノウハウ(4)

(1)銀行の、できる担当者、できない担当者

■あなたの会社を担当する銀行員が仕事ができる人かどうかをどう見分けるか

問題は、その担当者が、「仕事ができる」人か、「仕事ができない」人か、それにより、あなたの会社において、影響が出てくる、ということです。

仕事ができる担当者
  • ◎担当者の方からあなたの会社に、融資の提案をしてくれます。
    例えば、銀行の担当者が次のように言ってくれるとします。
    「前回融資を出してから6ヶ月が経とうとしていますが、そろそろ融資を検討してみませんか。」
    提案ができる銀行マンであれば、仕事ができると見てよいでしょう。
  • ◎また銀行の得意先係は、ノルマを課されています。仕事ができる担当者であれば、そのノルマの達成に積極的であり、企業に積極的に融資の提案をし、企業から融資を申込まれたらその審査が通るように、支店長などを説得できるような融資稟議書を書くこともできます 。
仕事ができない担当者
  • ◎担当者が「何かご用はないですか?」としか言えない人であればどうでしょうか。このような担当者は、論理的に物事を組み立てることができない人です。 つまり、論理的に書く技術が必要である稟議書を上手く書くことができない人である可能性が高くなります。
  • ◎また、企業側から融資の話をされることを待っているということは、受身の姿勢の人、ということになるでしょう。
  • ◎また、仕事ができない担当者であれば、仕事の段取りも遅くなりがちです。

このように、あなたの会社に銀行の担当者が、仕事ができる人かできない人かによって、あなたの会社が、銀行と円滑な融資取引ができるかどうか、大きな影響が出てしまうことになります。

仕事ができない銀行員を「属性」で見ていくと、30代後半以降で、特に役職についているでもない人は、仕事ができない人である可能性が高いです。 銀行の標準では、30代前半ぐらいから、係長や課長、支店長代理など、なんらかの役職がついてきます。 それが30代後半以降の年齢でも平行員であると、銀行内で仕事ができない人であるとみなされていることになります。

■銀行では誰を担当者とするかをどう決めるか

例えば、ある支店に、得意先係の長を含めて5名の得意先係行員がいたとします。
得意先係の長は、その支店において重要な取引先とされている企業を担当します。
残り4名で、地区を4つに分け、そのテリトリーごとに担当者が決められます。
ということは、あなたの会社が仕事ができる担当者に当たるかどうかは、運不運でしかないわけです。

 

(2)できない銀行担当者にあたった場合の対処法

では、仕事ができない担当者にあたって、我慢の限度を超えるぐらい仕事ができない担当者であった場合、どうすればよいでしょうか。

答えは簡単です。担当者を別の人に変えてもらうことです。

※担当者を変えてほしいという要望は、さすがに担当者本人には言いにくいでしょうから、その支店の別の行員に、申し出をしてみましょう。得意先係の長や融資係の長、副支店長などがよいでしょう。

  • ◎また、得意先係や融資係の別の平行員に対して申し出するのは、おそらくその行員は支店内で発言権がない人ですから、その行員で話が止まってしまう可能性があります。
  • ◎一方、支店長に申し出するのもよくないです。支店長にそのような話をすることにより、その担当者の評価は大きく下がることになります。あなたの会社にとって、その担当者の評価がどうなろうと関係ない、と言ってしまえばそれまでですが、その担当者のことを考えると、支店長に担当者の変更の申し出をすることはあまりよくないかと思います。
  • ◎ただあまりにもあなたの会社に対して悪い影響を与えた担当者であったのなら、直接、支店長に担当者変更を申し出てもよいでしょう。

銀行員の、一つの支店にいる期間は2~3年です。
仕事ができない担当者にあたってしまったのなら、その担当者と2~3年、付き合わなければなりません。
我慢の限度を超える担当者であったのなら、担当者の変更を申し出ましょう。

 

(3)銀行が融資審査の返事をなかなかしてくれない

融資を申込んだ方としては、一日でも早く融資を受け、会社の現預金を潤沢にして、安心したいですよね。 そのようなあなたの思いとは裏腹に、銀行はなかなか融資の返事をしてくれない。そうしている間に、この日にだけは必ず資金がほしい、という日がどんどんせまってきます。 このような時、一方の銀行では、何が起こっているでしょうか。

  • ◎融資審査は、稟議方式で行われます。つまり、融資審査についての稟議書が担当者により作成され、それが次の順番でまわることになります。
    得意先係の担当者→得意先係の係長→融資係の担当者→融資係の係長→次長→支店長
  • ◎また、金額が大きいなど、支店長では融資審査を決裁することができない案件であれば、支店長の後に、本部(審査部)にまわされ、本部において融資審査の決裁がなされることになります。
  • ◎これを見ても分かるように、融資審査の稟議書は多くのところを回るので、なかなか融資審査の結論が出ないのです。
  • ◎また、稟議書をすぐにまわしてくれるとよいのですが、あるところでとどまることも多いです。

銀行に融資を申込み、その結果がなかなか出ない時は、融資を申込んだ相手である銀行員をせっつくことからはじめるとよいでしょう。

ただ、この場合でも、決してその担当者にきつく怒ってはいけません。


きつく怒られてしまうと、その会社が融資が出るように取り組んでみようという気持ちがその後、薄れてしまうようになります。あまり、その会社に近づこうとしなくなるかもしれません。

融資審査の結果を早めに出してもらうためには

融資の申込書に、「○月○日までに返事をいただくことを希望します。」と書いておくことです。
必ず、書面で伝えるようにします。

以上、述べたように、融資審査の結果がなかなか出ないのは、「何か重大なこと」があなたの会社の案件において起こっているから、というわけではありません。
ただ単純に、稟議書が滞っていることが原因であります。

また場合によっては、融資を申込んだ担当者が、稟議書をまだ書いていない、ということもありえます。

このようなこともありますから、融資を申込んだら、なるべく多くその担当者と話す機会を作り、融資の稟議書が早くまわるようにするために働きかけていきましょう。

 

(4)日本政策金融公庫と民間銀行とのバランス

<質問>

最近の「日本政策金融公庫」との付き合い方についての質問です。
現在の弊社の概況をお知らせすると 都銀、地銀、地元第2地銀、信金及び政策公庫との取引があります。少々オーバーバンキング気味ですが、メインは地銀です。
毎期決算明け早々に年間の「ハネ資金」(※企業が事業で稼ぐ現金内では返済をまかなえずに資金が減少していくため、それをまかなうための融資のこと)をいずれかの銀行でお世話になっています。

それぞれの借入金額は、せいぜい正常運転資金の範囲前後で、できるだけ分散化をはかっています。借入総額は年商の約4~5割です。 これまではメインバンクの借入総額が一番多かったのですが、今回はそのタイミングがずれて来期借入後の来期末決算では、政策公庫の残高が一番多くなってしまいます。
将来の設備投資などの点を考えるとメイン行のプロパー融資や信用保証協会保証付融資よりも、何となく政策公庫での実績を重視した方が良いような気がしますが、一方で「いざという時のための銀行」として融資枠を確保(あえて来期は借りない)という選択肢もあります。

状況説明が長くなりましたが、他行(地銀など)を意識した「政策公庫との付き合い方」に留意点などがありましたらアドバイス下さい。 因みに幸いなことにこの7~8年は黒字決算で、今期も黒字化の見込みです。
(K様)


<回答>

日本政策金融公庫は、政府系金融機関ですが、銀行は、政府系金融機関をどう見ているか。それは、民間の銀行ではまかないきれない融資を補完してくれる金融機関、と見ております。
そのため、政府系金融機関の融資残額が一番多くなろうと、そういったことは、民間の銀行としてはたいして気にしていないものです。

あなたがおっしゃるように、将来を見据えて「総額ここまでの融資を借りたことがある」という実績を付けておくために、政策公庫から借りるという選択肢もありでしょう。政策公庫としても、民間の銀行としても、融資審査において必ず見るのが、「ここ2~3年において、この会社に一番、融資の総額が多くなった時はどれだけ融資をしていたか」です。

例えば、ある銀行が1年半前に、ある会社に融資総額が82百万円までなっていたとします。現在の融資総額が58百万円であれば、82-58=24、24百万円の融資が、出しやすくなります(業況が悪くなっていなければですが)。
こういう意味で、借入実績を付けておくと、その後の融資が受けやすいことになります。

また政策公庫は、中小企業の育成のための金融機関ですので、民間の銀行よりも融資審査が通りやすく、いざという時のために今はあえて借りないでおく、という選択肢もあるでしょう。

ここまで述べたように、政策公庫のような政府系金融機関の融資残高がどうであるか、民間の銀行はたいして気にしていないものです。分けて考えてよいでしょう。

 

(5)銀行との融資交渉の秘訣

★私たちが、多くいただく質問の一つに

「明日、銀行と融資交渉をするが、こんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなる秘訣があるのか?」というものがあります。


答えは、そのようなものはありません、ということになります。

作成された稟議書は、次の順番で回覧されていきます。
  • 1.支店長で決済できる融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長(決裁)
  • 2.支店長で決裁できない融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長→審査部(本部)の行員→審査部の部長(決裁)

ここで重要なのは、稟議書は書面で回覧される、ということです。

※書面で回覧されるということは、稟議書作成時に、稟議書に盛り込まれる内容が審査を大きく左右する、ということです。

あなたの融資交渉の交渉相手の行員が稟議書を作成しますが、交渉にあたって、融資を通りやすくしてもらおうとあなたが自社のアピールを「口頭」で行ったとします。

しかし、交渉相手の行員は、その全てをメモし稟議書に書くことは難しいでしょう。

融資交渉であなたの会社をアピールするときに、「口頭」で行うのではなく、「書面」で行うのです。 また融資申込も口頭で行うのではなく、「借入申込書」を作成し書面で行う方がよいでしょう。その方が、融資の希望条件を明確な形で銀行に伝えることができます。

アピール材料としては、事業計画書が一番強力なものとなります。
口頭で「自社の売上は今期は前期に比べ2割アップする」といっても、相手は聞き流すぐらいですが、事業計画書でそれがうたわれ、売上がアップする根拠を銀行が理解しやすいように書くと、口頭で伝えるより、よっぽど効果があります。 そのような書面で書かれたものは、稟議書に添付資料として添付されます。 ということは、審査を通しやすくするにあたってあなたが伝えたいことが、融資決裁者である支店長や審査部部長までしっかり伝わる、ということです。

融資審査を有利にすることをいかに書面で伝えるが重要です。

 

(6)メイン銀行の融資を他の銀行で借換えしてよいものか

<質問>

銀行からの借入についての相談です。
年間売上は前期1億5000万円ですが今期は1億1000万円になりそうです。
現状、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)から2500万円と銀行から3500万(2本)の借入があります。N銀行においては、今年の2月に借換を行ったばかりです。

上記の状況及びN銀行の対応等から今後の新規融資は難しいと思っていたのですが、先日短期融資等で取引のある信用金庫からN銀行からの借入+新規分で借換をしないかといわれました。
過去10年近くメインバンクとしてつきあってきたN銀行から信用金庫に借入先を変えて良いものか悩んでいます。
(F様)

<回答>

N銀行借入分を信用金庫へ借換えするのはだめです。その後、N銀行からスムーズに融資を受けられなくなることでしょう。
この場合、もし借換えが行われたとしたら、N銀行としては、あなたの会社から裏切られた、という思いを持ちます。
それだけ、銀行としては融資を他行に借換えられるのは、屈辱なことなのです。

あなたの会社が、N銀行と取引解消するつもりなら別ですが、そうでないなら借換えはやめてください。

 

(7)運転資金の種類について

銀行からみた【運転資金】の分類を参考にしていただいて、資金繰りの悩みから少しでも解放されて、今後の銀行との関係を良化するようにしましょう。

・銀行が融資するときの【運転資金】は1種類ではありません、
・お金に色はありませんが、銀行が融資するお金には青・黄・赤の3色あります。

・貸したい(青色)融資
・積極的に貸すことはないが貸してもよい(黄色)融資
・貸したくない(赤色)融資

・では銀行での【運転資金】の「資金目的」には、どんなものがあるのでしょうか?

1番:経常運転資金 (売上を現状維持する場合に恒常的に必要な仕入・経費等の支払資金)
2番:増加運転資金 (売上が増加する場合や決済条件に変化が生じた場合に必要となる資金)
3番:賞与資金 (夏期・冬期のボーナス資金)
4番:決算資金 (決算時に必要な納税、株式配当、役員賞与、等)
5番:季節資金 (季節によって商品仕入等が増加するときに必要となる資金)
6番:その他運転資金 (手形決済資金、買掛金決済資金、赤字による経費支払資金、等)

★1番・2番は
★3番・4番・5番は
★6番は
(青色)貸したい融資
(黄色)積極的に貸すことはないが貸してもよい融資
(赤色)貸したくない融資

その上限を判定する基準が、『正常な運転資金』という呼び名の【運転資金】です。
「正常でない運転資金」だと判定されたら借入はできません。
借入を実現するためには、『正常な運転資金』として判定されなければならないのです。

※その計算式は・・・  売上債権(売掛金+受取手形(割引・裏書譲渡手形は除く))
+在庫(不良在庫を除く)
-仕入債務(買掛金+支払手形(設備支払手形を除く))

以上の金額が、1番:経常運転資金であり、すべての金融機関を合計して借入が可能となる計算上の上限金額となります。
また2番:増加運転資金は、売上債権の増加額+在庫の増加額-仕入債務の増加額が、計算上の上限金額となります。
1番・2番の場合は、企業が存続する限り必要な資金となりますから、できるだけ自己資本でまかなうのが理想ですが、ほとんどの企業の場合は借入金でまかなっていることでしょう。

ですから、長期借入資金というよりも、むしろ永久に必要な資金ということになり、〔借りっぱなし〕になってもおかしくありません。
ならば、借入をするときに、元金返済をゼロにできたほうが資金繰りの不安・心配は、大幅に減少することになります。
当座貸越・手形貸付(極度)での借入を実現するようにしましょう。
いずれの借入方法でも、毎月の金利支払いと一部印紙代でOKです。

3番~5番については、『正常な運転資金』としての基準は適用されませんが、目的・金額・返済方法が決まっていますので、資金の目的の証拠があれば、1番・2番の運転資金がいっぱいの場合でも、融資は可能となる場合があります。
ただし、3番~5番の資金については原則6ヶ月以内に返済するルール(場合によっては9ヶ月~12ヶ月)がありますので、手形貸付(都度)扱いが一般的です。
ちなみに6番については、ほぼ借入ができないと考えてください、借入可能となるのは、保証協会付の別枠融資や緊急保証の場合です。

■運転資金の借入時期等について

1)資金繰り予想表を作成し、資金の必要な月の3ヶ月前に申込む。
銀行には、融資したい時期と融資をしたくない時期があります。
1ヵ月前に申込んでも銀行の貸したくない時期に当たると、計画通りに借入できないケースが多数発生します。
また、余裕をもって申し込んでおくことによって、次年度から銀行から営業に来る確率が高くなります。
ですから、資金繰り予想を立てるということは、事業継続には必要不可欠なのです。
2)1行ではなく、数行同時に申込みを行う。
1つの銀行で申し込んで、断られてから次の銀行に申し込むと、余分な時間がかかります。
タイム・イズ・マネーですから、数行同時に申し込んでください。
万が一全部の銀行から借りてくれという回答が来たら、ありがたい悩みとして、楽しみながら借入する銀行を選択してください。
  • 3)3番~5番については、支払う時期がほぼ確定していますから、必ず、決算期の3か月前、賞与支給月の3ヶ月前に申込みを行いましょう。

 

(8)経営者は腹をくくれ

「銀行から資金調達ができず、資金繰りが苦しい場合にどうしたらよいか。」

絶対にだめなのは
  • ×金利が10数%もする商工ローンやヤミ金から借りること。
  • ×会社に関係のない第三者を保証人にしてまでお金を借りようとすること。
    迷惑をかける人を増やしていくだけです。
  • ×買掛金や給料の支払いを遅らせようとすること。
    最終的にはやむをえないとしても、それはあくまで最終手段として考えましょう。
 
資金繰りを円滑にまわしていくにはどうすればよいか、それを考えることが優先順位としては一番になります。

そのために、すぐにできる手段があります。
それは、リスケジュール。つまり、銀行に融資の返済を緩和してもらうことです。

 

  • ★このリスケジュール、経営者としてはその決断に、勇気がいることでしょう。
    これは、もう経営者の決断しかないです。誰が決断してくれるでもなく、経営者だけです。決断できるのは。
  • ★経営者では決断ができず、危機意識がない他の役員に聞いてみて「もう少し様子を見よう」と言われ、何の手立てもとらず、資金繰りが破綻してしまった企業。
  • ★5社や10社のコンサルタント会社で相談してどこからも「リスケジュールしかないですね。」と言われても、どこかで「究極の裏技があるだろう。」とさまよい続ける経営者。

私が、今まで多数の中小企業経営者から相談を受けてきて、そのような企業を見てるから、実感をこめて言えます。決断が一ヶ月遅れると、それだけ現金を失い、再生が困難になります。

 

(9)リスケジュール判断時期

  • ・銀行から融資が受けられず、一方で毎月の融資返済は大きい。そういう企業は、返済負担がとても重荷になります。
  • ・その場合、銀行と交渉して、毎月の返済金額を少なくしてもらう返済条件変更交渉、いわゆるリスジュール交渉を行います。

しかしリスケジュールには、資金繰りを一気に楽にするという大きなメリットがある一方、副作用もあります。

「リスケジュールを行うと、二度と銀行から融資を受けられなくなる。」
という大きな誤解が、中小企業経営者の中で蔓延していますが、二度と融資が受けられないわけではなく、リスケジュールを行っている間は、リスケジュールを行っている銀行において、融資が受けられないにすぎません。
「二度と」「一生」、融資が受けられないわけではありません。

リスケジュールを決断する前にまずは、取引している全ての銀行で、融資が受けられないかあたってみてください。

そして、全ての銀行で断られたり、融資が受けられたとしてもわずかの金額であったりすれば、そこでリスケジュールを決断するのです。

ある銀行がリスケジュール(融資返済を減額すること)に対してどのように対応してくるか、その一部抜粋です。

  • ・ビジネスローンのリスケジュールは半額までが限界。それ以上のリスケジュールを求めると、サービサーへ移行となる。
  • ・リスケジュールを求めると、関連会社のサービサー「●●債権回収」が窓口となる。それは交渉窓口が移るのみで、債権が売却されるわけではない。
  • ・リスケ進行中、昨年11月より適用し、今4月末をもって「期限の利益喪失」を図り、利息分を元金に内入れして行く方向を提案され、それに乗るようにした。その上で、最大限期間を考慮しても3年が限界。要は3年以内に不良債権処理を行うということです。●●●●●の場合、ほぼ同じようです。 
    本件は40億企業の場合であり、借入総額15億が裸与信であります。規模がもっと小さいければ、処理の速度は速まるものと思われる。
  • ・●●4県のビジネスローンのリスケジュール担当は●●一人でやっています。リスケジュールは半額程度で5年程度で完済できる計画でないと受け付けてくれません。ただ、金額・期間とも『程度』なので多少幅をもった交渉は可能です。

 

(10)リスケジュールを行うと二度と融資が受けられなくなる?

ある企業が毎月の返済額を減らして頂こうと思い、某地方銀行にお願いに行きましたところ、言われたことの回答です。

(a)これは一行だけではできず、融資行全行一斉にやらなければならない。
(回答)
これは、そのとおりです。理由はリスケジュールを行わない銀行があると、リスケジュールを行う銀行から見れば「なぜあの銀行はリスケジュールを行わないのか。」というように、不公平に見られてしまう。
というところにあります。またリスケジュールを行う銀行と行わない銀行とがあると、中途半端なリスジュールになります。毎月返済が300万円あったとして、それを一部の銀行でリスケジュールを行って150万円まで減額しても、はたして毎月150万円、支払いができるでしょうか。リスケジュールを行うのなら、全銀行、一斉に行うのが原則です。
  • (b)これは信用保証協会付の融資なので、リスケジュールをやったら今後一切信用保証協会付の融資は受けられなくなる。
(回答)
そのようなことはありません。信用保証協会付の融資において、「リスケジュール」は毎月の返済金額を抑えること、「代位弁済」は信用保証協会に、企業の代わりに融資残額を銀行に支払ってもらうことです。
そうすると信用保証協会に債権が移ります。代位弁済になると、代位弁済を行った融資を全額返済するまでは信用保証協会に保証を付けてもらって融資を受けることはできなくなりますが、リスケジュールまででしたら、将来利益が上がるようになって返済が再開したら、融資は受けられるようになります。
  • (c)返済の延滞が一ヶ月を過ぎると事故扱いになり、その場合でも信用保証協会付の融資は一切受けられなくなる。
(回答)
一ヶ月過ぎると自動的に事故扱いになるわけではありません。延滞となっても、リスケジュール交渉を行って毎月の返済金額を減額することに金融機関側が同意すれば、それは返済条件の変更という、事故でない状態となります。
ただ、リスケジュールを行っている期間中は、その銀行からは融資は受けられません。返済が再開したら、融資は受けられるようになります。リスケジュールを行うと「二度と」融資が受けられなくなるのではなく、「リスケジュールを行っている期間中」は融資が受けられなくなるのです。その違いはしっかりご認識ください。

 

(11)関係会社がある場合とリスケを行っている場合の融資

<質問>

会社を二つ持っています。ひとつはリスケジュールをしています。もうひとつはリスケはしていません。この会社は日本政策金融公庫から2本借り入れがあります。
現在3本目を申し込んでおります。面談後三週間が過ぎますが、いまだ回答がありません。

銀行での融資ができるのでしょうかお尋ねします。
(有)B 卸売業 綱渡り状況 リスケ中
(有)H 美容室経営 債務超過であるが、ここ二年単年度では黒字で、今年度も黒字です。代表はどちらも私がしています。すると他の銀行へ融資を申し込んでもだめなのでしょうか、 (K様)

<回答>

まず、BとHは同じ代表者ということで、金融機関の見方とすれば、同一体、つまり同じ会社として見られます。まずポイントは、BとHが同一体として見られているのかどうか。例えば日本政策金融公庫でHの決算書を出しているが、Bは出さず、またその銀行でBの存在が気づかれていないのであれば、日本政策金融公庫はBだけを見て、融資審査を行うでしょう。逆も然りです。

また同一体として見られているとして、B社がN信用金庫でリスケジュールしていても、日本政策金融公庫や他の銀行で、リスケの事実が分からなければ、リスケが原因で融資を受けられないことはないです。決算書などの審査によります。

 

(12)預金ロックに気をつける

リスケジュール交渉を行うには、その交渉を行う銀行の預金口座からお金を抜いて、延滞状況にしておく、のはセオリーです。

リスケジュールの希望を銀行に持ちかけると、たまに、銀行が自社の預金口座を動かせなくすること、いわゆる預金ロック、を行ってくることがあります。
  • ※定期預金があるのであればそれも解約して抜いておかなければなりません。(定期預金の解約は、銀行から抵抗があるかもしれないですが、なんとかやりとげてください。)

リスケ交渉前にやっておくこと

1.リスケジュール交渉を行おうとする銀行の預金口座は、お金を抜いておく。

2.連帯保証人の預金口座からもお金を抜いておく。

3.後でそれら口座からお金を振込されないように、売掛先などに振込口座の変更を依頼しておく。

 

(13)リスケジュールの交渉は成功するかどうか

リスケジュールを銀行が応じてくれると、「借入金変更契約書」を銀行と交わし、その中で今後の返済方法をどう変更するかが明記され、変更契約を交わすこととなります。
つまり、銀行が同意して返済方法を変更することになるので、連帯保証人に取立がいくこともないし、不動産担保が競売にかけられることもないのです。

しかし銀行がリスケジュールに応じなかった場合、銀行の同意が得られないということで、次の段階に進みます。

信用保証協会の保証がついた融資(保証付融資) スケジュール交渉がうまくいかないと、銀行が信用保証協会に代位弁済を求め、代位弁済となります。そうすると、債権者は銀行から信用保証協会に移ります。その後は信用保証協会との交渉になります。
保証がない融資(プロパー融資) 銀行が債権者として次の手をうってくる場合もあれば、サービサーという債権回収会社に銀行が債権を売却して、そのサービサーとの交渉となる場合もあります。

ここでポイントとなるのが、1.保証人、2.担保、です。


保証人に資産があるのであれば、その資産を守ることを考えていく必要があります。
不動産担保も同じです。

※そして残った残債は、支払いを金融機関等が請求しようとしても、支払えないものは支払えないので、金融機関等もあきらめたような感じになります。

保証付融資であれば、保証人に毎月少しずつ支払ってもらえればよいという感じになったり、プロパー融資であれば、それがサービサーに売却されても、サービサーとしては少しずつ支払ってもらい、数年支払い続ければ後はこれだけの金額を支払ってもらえばそれでケリをつけますよ、というような感じになったりします。

まとめますと、リスケジュールに成功しない、つまり銀行がリスケジュールを応諾してくれなかった場合でも、支払えないものは支払えないので、保証人と担保の問題があればその対策を考えていきながら、金融機関等の動向を見ていく、という方向になります。

リスケジュールを行って将来返済再開すれば、再び融資が受けられるようになりますが、保証付融資の代位弁済やプロパー融資のサービサー売却となれば、その後融資が受けられない、ということを認識しておく必要があります。


しかし、保証付融資の代位弁済であれば、保証人が少しずつ返済をしていくことになりますので、その融資がいくら大きな金額でも、実態は融資がほとんどないも同然、つまり返済がほとんどないので大きな残債が残っていても実質的にはほとんどないも同然、ということになります。

プロパー融資でサービサーに売却された場合も同じです。サービサーは、銀行から不良債権を買うので、額面の金額から大幅に値引きしてその債権を買います。

例えば残債が5,000万円の融資でも、不良債権なので価値がほとんどないとされ、200万円でその債権を買ったりします。
サービサーとしては、200万円以上回収できれば後は利益なので、300万円支払ってもらってその時点でケリをつけたりします。
債務者としては、もとは5,000万円あった融資が300万円の返済で終わるので、とても楽でしょう。
その銀行から今後融資を受けられなくなるということにはなりますが、このメリットは大きいです。

またリスケジュールでは金利は通常どおり支払っていかなければなりませんが、保証付融資の代位弁済やプロパー融資のサービサー売却では、元金返済と金利支払いがまとめて考えられますので、金利支払いの負担がなくなるような形になり、そのような点もメリットとなります。
このように、リスケジュールが成功しなかった、つまり銀行がリスケジュールに応じてくれなかったら、それはそれとして、次の世界があるわけです。

 

(14)リスケジュールの必要条件とは?

<質問>

弊社はビジネスホテルという、装置産業であり、例にもれず大きな借入金があります。
この不況で資金繰りが悪化しており、リスケジュールの交渉をしているところなのですが銀行側からの回答が、「まだ資金的な余力があるのでリスケジュールには応じられない」というものでした。「資金的な余力」というのは、ズバリ経営者の個人資産です。個人資産の投入は、これまでも常に行ってきていることは銀行も知っています。それらの返済も全くできていないにもかかわらず、「まだ足りない」とする銀行の姿勢は、出尽くしたら捨てるつもりではないかと思わせるほどです。

銀行が言うにはリスケに応じる条件には3つあって
1.調達の手段がもうないこと
2.経営者に資産が残っていないこと
3.リスケジュール後の具体的な再建計画書も必要だそうです。
1についてはまだ保証協会の枠が残っていますし、2についても少しは残っています。借入金が返せないから交渉しているのに、限度まで借りさせるという考えにはどうしても納得がいきません。本当にこれらは必要条件なのでしょうか? (F様)

<回答>

あなたの会社の損益状況や資金繰り状況を見ているわけではないので、例でしか言えないのですが、例えば、毎月返済金額が500万円、×12で、年間返済金額が6,000万円であれば、事業自体のキャッシュフロー、つまり現金の出入りが年間でトントンとして、年間6,000万円借入することができれば、なんとか資金繰りはまわるのではないでしょうか。こういう資金調達ができる状況であれば、リスケジュールを行わず資金調達で資金繰りをまわしていくべきです。

問題は、この例で年間2,000万円しか調達ができなさそうな場合など、借入はできるもののとてもそれでは資金繰りがまわらない場合です。こういうことが予想されるのであれば、2,000万円調達して、現金預金を豊富な状況にしておき、それとともに別の銀行ですぐにリスケジュール交渉をスタートし、2,000万円借りた銀行においては2~3カ月後からリスケジュール交渉をする、というように、調達が多少できることを利用して、現金預金を豊富にしながら一方でリスケジュール交渉を行っていくやり方です。会社を再生させるには、一方で多少の調達により現金預金をある程度もてるようにしながら、一方でリスケジュールにより資金の流出を一気に抑える、そうして資金繰りを楽にしておくと、やりやすくなります。

リスケジュールの条件が銀行からいろいろつけられようと、そんな条件が合わないからとリスケジュール交渉を止めてはだめです。「1.調達の手段がもうないこと」の条件があり、一方借入が多少できる状況であれば、上記のようなやり方を行いながら、この条件を気にすることなくリスケジュール交渉を進めていくのがよいでしょう。

「2.経営者に資産が残っていないこと」も同様です。資産があっても、それがどれだけの資産かは分かりませんが、個人の生活費分は確保しておくべきですし、それ以上の分は、会社に投入して現金預金を豊富にし、会社再生のための軍資金にするべきです。資産があることが銀行に分かってしまうのは、その銀行で経営者個人の預金を多くおいているからでしょうか。それであれば融資を受けていない銀行にその預金をうつし、個人資産はほとんどなくなってしまった、というように見せられないのでしょうか。
「3.リスケ後の具体的な再建計画書」これは作らなければなりません。それにより、どう再建していき、また返済をどう再開できるようにしていくのか、方向を伝えるためです。これは作ればよいことなので、早く作って銀行にもっていきましょう。

 

(15)あなたの会社が融資の借換えを行うにあたって注意すべきこと

・融資を受けている企業は、自己査定といって銀行が行う自行の貸付金(企業から見たら借入金)資産の査定作業の中で、1社1社、債務者区分をつけられています。

区分は  正常先
要注意先(要注意先の中の一般の)
要管理先(要注意先の中の)
破綻懸念先
実質破綻先
破綻先
となります。要注意先には、一般の要注意先と、要管理先があります。

債務者区分が下になる融資先に対しての貸付ほど、銀行としては貸倒引当金を多く積まなければならなくなり、そのように区分がつけられた企業は、融資を受けることが困難となっていきます。
一般の要注意先であれば融資を受けるのに支障が出てきます。要管理先以下になると基本的に融資は受けられなくなります。
そのため、自分の会社が、一般の要注意先以下にならないように、気をつけなければなりません。せめて、要管理先以下にはならないことです。

要管理先となる要件
3カ月以上延滞となっている融資があるか、「貸出条件緩和債権」があるか、これらいずれか一つが当てはまることです。

 

「貸出条件緩和債権」とは

以下の4つのいずれかの定義が当てはまる融資のことを言います。ただし、そうなった理由が、企業の信用力の悪化によるものに限ります。
  • 1.融資期間中、金利を引き下げ・棚上げ・減額・免除したもの。
  • 2.当初の最終返済期限を延長したもの。
  • 3.分割返済していたものを、返済猶予・ステップアップ返済・期日しわ寄せ返済・期日一括返済へ変更したもの。
  • 4.正常な運転資金として算定される額以上に借入した運転資金の返済期日に、返済財源がなく、継続、延期したもの。 (正常な運転資金・・・売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形)

ここでのポイントは、企業の信用力の悪化により、融資がこのような状態になったかどうか、です。 例えば、リスケジュール。リスケジュールとは、毎月の返済金額を、銀行と交渉して少なくしてもらったり、一括返済の期日に、その期日を延ばしてもらったり分割返済にしてもらうなど、融資の返済条件を、企業にとって楽な方向に変更することを言います。

リスケジュールは、企業側から銀行に交渉しますが、この場合、企業の資金繰りが厳しいから交渉を行うので、企業の信用力の悪化により行われるとみなされることになり、リスケジュールを行うとその企業の債務者区分は要管理先以下になってしまいます。

これが、リスケジュールを行っていると融資が受けられない理由です。

また、リスケジュールが、単なる毎月返済額を少なくするという形ではなく、借換えという形をとっても、それがリスケジュールとみなされることもあります。

例えば、次のようなケースです。
(例)
既存の長期借入が2億円残っている状態で年間5,000万の返済しているという前提で、設備投資のために新たに4億円の融資が必要だが、既存の2億円と4億円を足して6億円の融資額で、年間3,000万の20年払いにしてほしいと銀行に依頼した場合。

このケースでは、銀行が「企業の信用力の悪化」により借換えの手段を使って返済額を圧縮した、と判断したら、貸出条件緩和債権になってしまいかねません。

要は、このような借換えを行う背景がどうであるか、です。

そのため、もしあなたの会社がこれから、返済額が緩和されるような借換えを行う場合、銀行としてはその借換えをどう見るか、銀行と事前に話し合っておくべきです。

 

(16)銀行との返済交渉の質問

<質問>

リスケジュールを取引銀行に約定の数日前に申し入れましたが、必要書類の作成に幾日か要するのとその月分の返済の資金繰りも間に合わない現状です。

担当の融資係には延滞のままだと話ができないかもしれないと言われ、また、月中での延滞はまだしも月超えはしない方が会社の将来のためですよとも言われました。何となく言ってる意味合いは理解も出来るのですが、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか?

  • 1.延滞のままだと話ができないと言うのは銀行がですか保証協会ですか?
  • 2.月中の延滞と月超えの延滞の違いは信用情報センターに登録されるからですか?また、登録されるとしたら月を超えた時点ですぐにですか?後、月超えの延滞を1度してしまったら将来どのようなデメリットがあるのですか?

<回答>

銀行としては、返済を1カ月分でも進めてもらうに越したことはないため、企業に返済を促すことを第一の目的として、「延滞のままだと話ができない」ということをよく言ってきますが

あなたの会社で最も重要なことは、資金繰りをまわすことであって銀行の返済を進めることではないですよね?銀行の言うことはうのみにしないことです。1カ月分でも返済をしないことにより、あなたの会社はその分、資金を確保でき、それは会社建て直しのための重要な資金になるはずです。

1について・・・ 保証協会保証付融資はあくまで銀行が資金を出している融資ですので銀行と交渉することになりますが、銀行が「延滞のままだと話ができない」と言ってブロックをかけていると考えてください。
2について・・・ 企業の融資は、信用情報センターには関係ありません。信用情報センターは、「個人」での融資の情報を取り扱っているからです。
だから延滞が月中であろうと月超えであろうと関係ありません。また延滞を行うと、その記録は、信用情報センターは関係なくても、その銀行や、保証協会に残ります。延滞が数日続くと、その記録が残ってしまうので、しばらくはその銀行からの融資や、保証協会の保証を付けた融資が受けにくくなるでしょう。

 

(17)できる会社は、今後1年分の資金繰り表を銀行に見せている

あなたの会社は、資金繰り表を作っていますか?

銀行から融資を受けている会社であれば、資金繰り表を作っておくのは、資金繰り対策において、基本中の基本です。

資金繰り表
実績資金繰り表・・・過去の資金繰り
予定資金繰り表・・・今後の資金繰り

資金繰り表を作っているとして、銀行との関係がうまくいっている企業は、その資金繰り表を毎月、最低でも3カ月に1回は提出しているものです。
融資を受けている企業であれば、1カ月に1回は、銀行と接触を持つべきです。
接触を持つには、試算表を提出したい、資金繰り表を提出したい、という理由で十分です。

★銀行に資金繰り表を提出する目的は、企業の資金繰り状況を銀行に報告するとともに、資金繰り表にて、今後の融資を受けたい時期、融資を受けたい金額を事前に銀行に伝えておくという目的があります。

★ぎりぎりでの融資申込みがなくなります。だいたい、融資を受けたい月の3カ月以上前から、資金繰り表を使って融資の話をしておくイメージでしょうか。

企業によっては、今後の1年の融資希望として、1年先の融資の話をしているところもありますが、そこまで資金繰り表に基づいた銀行との話ができるのは、とても理想的なことです。
このように、余裕を持って融資の話ができると、企業としては余裕を持って資金繰り対策ができるし、銀行もじっくりと融資を検討しやすいので、これが銀行との関係を円滑にできることにつながっていきます。

 

(18)リスケジュールにあたって担保提供必要?

<質問>

3年位まえに、リスケジュールを取引銀行に申し入れましたが、所有不動産の中に長男の嫁名義の建物があり、それを担保に入れないと保証協会が話に乗ってくれないとのこでした。ですので、長男と嫁に相談したら担保提供はできないとのこと。それから銀行と何回も交渉しましたが、保証協会が、うん、といってくれないとのことで、話が進展しませんでした。そこで昨年12月より今年の3月まで支払いを延滞しました。今年の4月に入り銀行よりリスケジュールの話があり、5月より1年間のお話でした。ただいま実行中です。今後どうしても、嫁名義の建物は担保提供、しなくてはいけないでしょうか。

<回答>

結局はお嫁さん名義の不動産を担保に入れなくてもリスケジュールを行ってくれたということで、リスケジュールを更新していくにしても、その時に担保として差し入れる必要はないでしょう。
ただ今後もずっと返済金額を少しずつでも増やしていかない中でのリスケジュール更新は、銀行や保証協会も納得しないでしょうから、早急に利益体質を作っていき、少しずつでも返済額を増やしていけるようにしていく必要があります。

 

(19)他行のリスケジュール交渉状況を聞かれたら?

<質問>

本日、自ら銀行に、リスケジュールをお願いに上がりました。
政府系金融機関のNさんはその場で大丈夫のようでしたが、他の銀行は他行の様子を見ながら考えましようとのことでした。その時に保証人さんをつけてもらうかもしれませんよ、またNさんはいくらでリスケジュールして下さいましたと告げたのがいいですか?

<回答>

リスケジュール交渉を行っている銀行に、他行の様子を聞かれたら、他行がリスケジュールに合意してくれていたらその事実を伝えて、あなたの銀行もやってほしいと促してもよいでしょうが、気をつけなければならないのは、その他行のリスケジュール金額が中途半端な場合です。
経営者自らリスケジュールを行うと、例えば毎月の返済金額100万円を50万円にする(本来なら返済を0円近くにするまで粘り強く交渉をするべきなのに)ような中途半端なリスケジュールをしがちです(50万円にしたところで返済を続けられるのですか?)。
そのような場合に正直に伝えると「ではうちも50%カットでよいですね。」とその銀行においても中途半端なリスケジュールをされがちなので、他行のリスケジュール交渉の状況を言うことはケースバイケースで考えなければなりません。他行が中途半端なリスケジュールであれば、いっそのこと「0円近くで合意できそうな感じ」とでも言っておいた方がよいでしょう。

 

(20)リスケジュールをやっているのに資金繰りが苦しい

★ざっと、弊社にお電話いただく方の3~4割は、すでにリスケジュールを実行済の中での、それでも資金繰りが苦しいというご相談です。

多くの企業では、毎月の銀行への返済負担が重いのであり、その返済を0円近くにまですると、普通であれば資金繰りは楽になるはずです。

しかし、リスケジュールを行うと同時に、事業の赤字を黒字化対策を行なっていません。
資金繰りが苦しい会社の6~7割が、このパターンです。

残りの3~4割はリスケジュールを行っても返済金額の減額が、十分にできていない、ということろにあります。
例えば毎月300万円の返済をしていたとして、それを、銀行と交渉して毎月100万円の返済に抑えてもらったとします。
しかしそれでよいのは、毎月100万円以上の現金が生み出されるほど、利益を出している会社です。ということは、毎月100万円の返済に抑えるとすると、200万円の減額ということで一見、良さそうに見えるのですが、実は不十分だ、ということになります。
銀行と粘り強い交渉を行い、0円近くにまで返済を抑えるべきだったのです。

大事なのは経営者の「あきらめない気持ち」です。

リスケジュールを行っても資金繰りが苦しいと、「やることはやった。」と思って、経営をあきらめ、つまり破産などの法的整理を選択しがちですが、リスケジュールはやっても、会社を立て直すための対策をあまり行っていない企業が実に多いとよく感じます。
本当に、抜本的な対策を立てて実行していかないと、このような企業は生き残っていけません。
いつ経営者が、開きなおって、再生への道を歩むことを決断するか、です。

 

(21)得意先係行員からいろいろなことを要求されている

<質問>

弊社 数十年の取引であるメイン行A銀行と、数年の取引であるサブ行B銀行、C銀行、の三行取引です。
今回、B銀行より、御社との取引(融資)で、銀行が儲かっていない(旨みがない)ので、何とかしてほしいと言われました。
具体的には、投資信託を買ってほしい、当行の預金口座にもっと入出金してほしい、担保を入れてほしい、信用保証協会の融資を使ってほしい、積立を増額してほしい(現在は月々10万)などなど要求されました。

応じてくれないのなら、お付き合いが太くならないうちに別れたほうが...という勢いでした。
現在 3000万円の当座貸越と 手形貸付枠2000万円です。
当貸は500万円~3000万円の間で使っています。今月は500万円だけです。
手貸はたまに使いますが、今月は使っていません。9月末と3月末はお付き合いで当貸3000万円MAXまで借りています。金利は1.5%~1.9%ぐらいです。

たしかに儲からないかもしれませんが、得意先係から、手を引くぞというようなニュアンスの発言には困惑しました。
私自身は、銀行から借りてやっているなんていう態度はとっていないつもりです。
立場の違う融資係から言われるとか、儲かってないので金利を上げさせてほしいとか言われるのなら理解できますが・・・
このような少し強引と思うようなやり方はありえる範囲でしょうか?
このような態度からなにか銀行側の狙いが見えますでしょうか?

<回答>

銀行内で、銀行の収益を増やす役割を持つのは、得意先係です。融資係の役割は貸倒れを作らないことが第一なので、収益を増やすために、融資先企業に、ああしてほしい、こうしてほしい、というようなことは言わないでしょう。だから、得意先係の行員から、ご質問内容にあるようなことを言われるのは自然です。
また銀行は、1社1社の融資先において、融資取引以外に、どんな取引があるのか、またその融資先からもたらされる利益はトータルでいくらか、というデータを出しております。それで、B銀行はあなたの会社との取引は細く、また利益もあまりないので、ご質問内容にあるようなことを言ってきているのでしょう。おそらく得意先係行員が、その上司や支店長などからきつく言われていることと思われます。

このような得意先係行員の要求を全て断わっても、融資自体引き上げようとすることは、あなたの会社の業況が悪くないかぎりは、やってこないでしょう。利益がマイナス(例えば、あなたの会社において当座貸越や手形貸付から銀行が得られる利息収益から、調達コスト・社内経費などを除いた利益がマイナスになる場合)になるのであれば、銀行が考えるべきことは、当然金利の引き上げであり、その前に融資の引き上げは、順番が違います。

上司から、あなたの会社からもたらされる利益を増やせと言われているのと、投資信託や信用保証協会保証付融資のノルマ達成を言われているのが重なって、そのプレッシャーから、あなたの会社に対していろいろ要求しているのでしょう。
特に無視してもかまいませんが、得意先係行員に少し花をもたせて今後のコミュニケーションをスムーズにするという観点から、少しぐらいは何か、付き合ってあげてもよいかもしれません。

 

・リスケジュール更新時に敷金・保証金を担保に入れてほしいと言われた

<質問>

2年前にリスケジュールを各銀行にお願いしました
・日本政策金融公庫・担保あり
・地元地銀T銀行・担保あり
・地銀S銀行・担保なし
・都銀M銀行・担保なし
それぞれに対応してもらいました今年もう一年我慢すればリースなど終わるので、この1年だけは元本0円で利息のみの返済にできないかと、都銀M銀行に話をしたところ、賃貸の敷金、保証金を担保にしてくれと言われました。 敷金、保証金等は担保提供する必要があるのでしょうか。もともとはM銀行はビジネスローンでしたので、当然担保は、いらなかったのですが・・・

<回答>

銀行は、リスケジュールの申込時や、更新の申込時に、追加の担保や保証人を要求し、保全(もし貸倒れとなった場合の補てん手段)を少しでも確保しておこうと考えるものです。
ただ、それら担保を追加してくれと言われても、突っぱねればよいです。

銀行は、あなたの会社や、経営者個人の資産などから、担保となりそうなものを探します。あなたの会社において、担保として追加できそうな不動産や預金などはなく、だから敷金や保証金に目を付けてきたのでしょう。銀行の言うことを聞く必要はありません。
言い方としては「大家さんが、敷金や保証金を担保に入れるのを嫌がる」とでも言っておきましょう。

 

・金利の分割支払い交渉、再リスケジュール交渉は可能か

<質問>

広告・印刷関係の会社です。
今年の一月より銀行返済のリスケジュールを行っています。
当時、法案が通った直後で弁護士より書類を作ってもらいました。金利は払う状態だったのですが引き落としはされてない状態でした。
銀行担当者からは今まで手続きがかかってしまったが銀行内部では通り、保証協会も通るでしょうとのことですが半年分の金利を現金で払ってほしいとのことでした。

リスケを行い半年で出た利益は昨年未払いの社会保険・税金の支払いに充ててしまい半年分一括で支払えば社員の給料遅配を起こしかねません。 当社の現状の返済能力は元金、利息込みで本来の四分の一程度です。それくらいに抑えて頂けたらなんとか運営し返済も可能です。
銀行からは他には払ってうちには払ってもらえないのですかとのことですがなんとか当社の現状を理解していただき半年分の金利を分割、また上記のように再リスケを行いたいのですがどのようにすれば銀行に納得してもらえますでしょうか?

<回答>

金利は分割で支払いできるように交渉してみましょう。銀行の方では、未収利息という勘定であがっているので、それを分割で支払うことによって、内入していくという形になります。無理ない支払いができる範囲で、支払い計画と資金繰り表、経営改善計画書(これはリスケジュール交渉時に提出しているでしょうが)を持っていきます。

また他の方法で、リスケジュールによって抑えた毎月の元金返済金額をさらに抑える、再リスケの交渉を行うことは、一度は減額した返済金額をさらに抑えるということで、交渉に困難は伴いますが不可能ではないです。
交渉方法は通常のリスケジュール交渉と変わりません。
ただやはり、最初のリスケジュール交渉時に、無理のない支払い金額を算出してから交渉にいどみたいものです。

 

・リスケジュールは短期融資と長期融資で違いがあるのか

<質問>

借入金返済のリスケジュールに関するご質問です。
当社は、製造業で年間売上300百万円、短期借入金35百万円、長期借入金が65百万円あり、短期借入の約定返済が月1,800千円、長期借入の約定返済が月1,100千円あります。借入れ先は信用金庫と公的金融機関です。
既存借入金のみでも毎月のキャッシュフローからの返済が難しい状態ですが、起死回生を図るため、この度取引先で社長が高齢のため廃業する会社から高収益事業部門の譲渡を受け、売上・利益拡大を考えています。

機材、材料費等事業買収のための資金が約6百万円必要であり、公的金融機関に新規事業のための融資を申し込みましたが断られました。 メイン銀行である信用金庫に既存借入金返済対策と新規事業資金確保のため借入返済のリスケジュールの相談をしたいと考えています。 借入金残高は、公的金融機関は約1,000千円で他はすべて信用金庫1行です。
新規事業と経費削減で当面1年を乗り切れば売上・利益が回復し現在の約定返済は可能と考えています。

質問の内容
  • 1.どのようなストーリーでリスケジュールの相談をすればいいのか?
    リスケジュール申し込みの留意点
  • 2.短期の約定返済のリスケと長期の約定返済のリスケはどのように違うのか?
    金融機関は短期貸付のリスケと長期貸付のリスケはどちらがやりやすいのか?
    短期資金のリスケと長期資金のリスケは今後の当社の信用格付に差はあるのか
以上ご教示お願いします。

<回答>

借入額は月商4ヶ月分と、そんなに多いとも感じないのですが、公的金融機関から断られたのは、はたして新規事業が評価されなかったのか、御社の財務内容に問題があったのか、その判断が必要です。

新規事業資金としては融資は断られても、通常の運転資金であれば融資が受けられるのかもしれないですし、また取引されている信用金庫でも運転資金の融資が受けられるかもしれません。リスケジュールの判断は、それらでも融資が受けられない場合に行うべきです。

リスケジュールを行う場合、返済条件変更申込書と経営改善計画書、資金繰り表をもって金融機関に相談にいきます。今は返済できないから見守っていてほしい。しかしこの経営改善計画により利益を出せるようにし、返済を再開できるようがんばります、というのがリスケジュールのストーリーです。

また短期融資と長期融資のリスケジュールに違いはありません。 どちらも行ってください。どちらか一方だけリスケジュールを行う、という中途半端なことは行わないでください。

 

・リスケジュール後の方向性

・事業で稼ぐ現金(キャッシュフロー)をCFとして表すと、毎月の資金繰り(単位:万円)が次のような企業があるとします。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
事業活動で、毎月100万円の現金が流出し、さらに銀行への返済が毎月400万円あり、毎月500万円ずつ現金(手元にある現金・預金)が減少していっています。

上記のような状況では、事業が赤字ですので、銀行は融資を出さないことが多いでしょう。
その場合は、毎月の返済を抑える交渉、つまりリスケジュール交渉を銀行と行います。それで、資金繰りがだいぶ楽になるようになります。

例えば上記例で、リスケジュール交渉により、毎月の返済金額400万円を0円にまで減額できると、次のようになります
CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100

・しかし、安心してはいけません。毎月のCFを黒字に転化し、そしてCFを多くしていく、つまり事業を改善していって利益を多く生み出すことにより、現金を多く生み出せるようになり、早く返済を元に戻すことができるようにしていかなければなりません。

手元の現金を最低月商1ヶ月分、理想は2ヶ月分、ためるまでは、返済金額はできるだけ上げていかないよう、銀行と交渉します。
なぜ銀行への返済を増やしていかず、手元の現金をためていくべきなのか。
それは、経営の安全性を高めるためです。
手元に現金が豊富にある状態であれば経営者としては余裕を持った経営ができますし、投資すべきところに投資を行うことができます。

 

・次の表は、毎月のCFが△100万円→+100万円と改善し、毎月100万円ずつ、現金をためていくことができている状態です。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
そして、手元に現金が十分たまっていったら、返済をじょじょに再開していくようにします。
上記の状態であれば、毎月0円→50万円ぐらい、返済を再開しても問題ないでしょう。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
そして、さらなる事業の改善により、CFを500万円まで改善できたとします。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
  ↓
一部再開 100 △50 +50
  ↓
もっと改善 500 △50 +450
そうすると、完全に返済を再開することができます。

CF 返済 合計
現状 △100 △400 △500
  ↓
リスケ後 △100 0 △100
  ↓
改善後 100 0 +100
  ↓
一部再開 100 △50 +50
  ↓
もっと改善 500 △50 +450
  ↓
完全再開 500 △400 +100
イメージできますでしょうか。これが、銀行にリスケジュールを行った後、企業として目指すべき方向性です。

現実は、こんなに劇的に経営を改善できるものではないですが、理想を追い求めるのは経営者の役目でしょう。

 

・資金調達とリスケジュール

資金調達とリスケジュール(融資の返済金額減額や猶予)、どちらをやったらよいか。

金融円滑化法により、企業においてリスケジュールという手法は一般的になり、多くの経営者が、抵抗が少なくリスケジュールを行うことができるようになりました。
しかし、リスケジュールを行わずに、通常通り返済を続けられるのならその方がよいのです。
リスケジュールを行うと、やはり企業としては、一歩踏みこんだことになるのです。

リスケジュールは、全銀行一律に行うことが鉄則ですが、リスケジュールを行うと、リスケジュール期間中は融資を受けることができません。

そもそも、現状、銀行から融資が出ない状態でリスケジュールを行って融資が出ないといってもそれは問題ないですが、現状、銀行から融資は出る状態であるのにリスケジュールを行って融資が出なくなることが問題なのです。
だから、銀行から融資は出る状態であるのに、リスケジュールを行うという選択はありえないわけです。

銀行から融資が出ず、一方で通常どおり返済を進めると資金繰りが厳しくなるからリスケジュールを行うわけで、融資は出るのにリスケジュールを行うのは間違っています。
企業としては、そこを間違って判断してはなりません。!

 

・銀行から融資が少しは出る場合のリスケジュール判断

・次のようなケースもあるでしょう。銀行から融資は出るが、融資でいっぱいいっぱい出る金額より、返済負担の方がずっと大きいケースです。

企業が現金流出するのは事業赤字と融資返済ですが、事業がトントン、つまり事業で流出する現金は0とし、毎月融資返済が500万円ある場合。
毎月現金が500万円流出し、年間6,000万円流出してしまうので、このような企業は年間を通じて6,000万円を調達する必要があります。 ただ、いくらがんばってもせいぜい2,000万円しか調達できない場合、どうしたらよいでしょう。

その場合、さっさと2,000万円を調達して、調達して少し経ってからリスケジュール交渉をスタートする、というやり方になります。

企業としては、一番手元に現金が残るやり方を考えるべきです。

資金調達を行うと同時にリスケジュール交渉を行うと、銀行から見たら「はじめから返さない気だったのか。」と見られてしまうので、融資を受けた銀行においては2、3回返済してからリスケジュール交渉、一方で融資を受けられない銀行にはすぐにリスケジュール交渉を行って返済金額を0円近くにすることが、企業の手元により多くの現金を残すことになり、有効となります。

そして、事業が赤字であればすぐに利益向上対策をとり、なけなしの現金を減らしていかないようにしなければなりません。

 

・既にリスケジュールをしているので新たに借入できない場合

中途半端なリスケジュール、つまり元金返済が一部しか減額されていなかったりしていませんか?


『正常な運転資金』の部分は元金ゼロにしてもらうようしっかり交渉しましょう。

  • ★リスケジュール期間は、手間がかかりますが3~6ヶ月と短目にしてみて、できるだけ銀行と交渉する時間を増やすようにしましょう。コミュニケーションの頻度が、あなたの会社を救う機会になります。
  • ★また、資金繰り安定のための金利引下げも積極的に交渉しましょう。 資金繰りが良化すること、間違いなしです。

では、『正常な運転資金』でない運転資金の場合はどうでしょうか?


ここは、最長3年間の元金据え置きを依頼してみましょう。

  • ★その間に、事業を立て直し、適正な利益を出し、返済開始を実現しましょう。

    3年間の時間があれば【必ず事業を再生します】と、銀行で言えるくらいの決意を持ってください

 

・リスケジュールにおいて銀行ごとにいくらずつ返済するか

・リスケジュール(返済条件変更)を申し込んだ後、かならず問題となるのが「各銀行に毎月いくらの返済をするか」という問題です。

今回は、各銀行への返済額を決める方法について説明します。

具体的な手順
手順1 今後の収入と支出を冷静に判断して計算する。

手順2 計算した収入と支出にもとづいて毎月確実に返済できる返済総額を計算する。

手順3 返済総額を各銀行に配分する方法を決める。

手順4 各銀行との個別交渉に入る。

手順1 今後の収入と支出を冷静に判断して計算する。

1)現状の収入額と支出額を表に書き出す。
2)次に当面1か年の予想資金繰り表を作成する。

綿密な経営改善計画を作成することから始めるのがベストです。
しかし実際には時間的な余裕もなく、作成方法もわからずにいる企業がほとんどです。
資金繰りは待ってくれません。スピードがもっとも大事な問題ですので、銀行側にその旨を正直に伝えて、後日改めて綿密な経営改善計画を提出することで了解を得ます。
まずは資金繰りがわかる資料を作成して現状を把握することから始めましょう。
手順2 計算した収入と支出にもとづいて毎月確実に返済できる返済総額を算出する。

作成した収入と支出にもとづいて、実際に返済できる金額を決めましょう。
一度変更した後で、再度減額を申し込むことは信用の失墜となります。
よって確実に返済できる金額を銀行に提示することが大事です。

次のことを考えて返済額の目安とします。
  • 1)経常的な年間の返済財源は、「年間利益+減価償却額」が上限です。
    設備維持にかかる投資資金や、優先して返済しなければいけない資金を差し引いた金額以内を返済財源と考えましょう。
    • 2)資産処分等の返済財源がある場合は、処理できる日時に十分余裕をもたせて返済計画に組み入れましょう。
      • 3)現預金が月商の1か月分もないことは経験則上異常な状況です。
        また今後の銀行調達ができないことを考えれば2か月分あっても少ないぐらいです。
        十分な現預金ができるまでは思い切って元金据置の返済を依頼することも一つの方法です。
手順3 返済総額を各銀行に配分する方法を決める。

案分方式(プロラタ方式)で算出するのが基本的な考え方です。
具体的な案分方式の計算式は次の様になります。

(案分計算の具体例)  X銀行 債権額 1,000万
Y銀行 債権額 2,000万
Z銀行 債権額 3,000万
総債権額     6,000万

毎月返済可能財源  6万
毎月返済可能財源×(X銀行債権額÷総債権額)=X銀行への毎月返済額→6万×(1,000万÷6,000万)=1万

毎月返済可能財源×(Y銀行債権額÷総債権額)=Y銀行への毎月返済額→6万×(2,000万÷6,000万)=2万

毎月返済可能財源×(Z銀行債権額÷総債権額)=Z銀行への毎月返済額→6万×(3,000万÷6,000万)=3万
手順4 いよいよ各銀行との個別交渉に入りましょう。

銀行側は少しでも多くの返済を要求してきます。

あくまでこちら側主導で決定していくことが大事です。

こちら側主導でないと、各銀行がそれぞれに主張する金額や根拠に惑わされていつまでたっても調整できない状況となってしまいます。
本来ならばメインバンクがその役割をするのが筋でしょうが、中小企業や個人事業主に対しては、そこまで動いてくれないのが実情です。
公平な立場から各銀行の調整をしてくれるどころか、メインバンクだからと債権者側の権利だけを主張するひどいケースもあります。

リスケジュールのさまざまな返済額算出根拠

(ア)債権残高で案分する。
先ほどの例で説明した案分方法です。
もっとも基本的な方法であり、この方法で進めればたいていの銀行は納得します。
下記の(イ)~(オ)の方法はかなり高度な交渉力が必要となりますので、一般の方にはお勧めはできません。
しかし債権者側からは自行の取り分を少しでも多くしようと「屁理屈」のように使ってきますので考え方だけは知っておきましょう。
(イ)担保で保全された額を除いて案分する。
つまり無担保部分を優先して返済する方法です。
担保で保全されている部分は確実に回収できるので、後回しで返済するという考え方です。
弁護士等が介入して配分するときによく利用する方法です。
無担保の銀行等がよく主張する方法です。
この方法を主張してきた場合には、担保処分で返済するのではなく、あくまで毎月の収入での返済を前提としていることを言って理解してもらいます。
(ウ)当初の返済金額により案分する。

先ほどの例で説明した案分方法を「債権額」でなく「毎月の返済額」で案分計算する方法です。たとえば、X銀行の返済額は次の様に決まります。

(案分計算の実例)
X銀行 当初の毎月返済額 
Y銀行 当初の毎月返済額 
Z銀行 当初の毎月返済額 
当初の毎月返済総額

毎月返済可能財源


20万
30万
40万
90万

6万

毎月返済可能財源×(X銀行の当初毎月返済額÷当初毎月返済総額)=X銀行への毎月返済額→6万×(20万÷90万)=13,333円
(エ)それぞれ借入金1本ごとに同額の返済金額とする。

これは次の様なケースでよく利用します。

  • 1)少額の返済額を提示した時に便宜上採用する。
  • 2)借入金の種類上、1万以上の返済額を設定する方法をとるしかない場合。
    たとえば、制度融資(保証協会付)や一部の保証会社付融資でこのケースがあります。
    多くは、債権者側の交渉条件というよりも制度上やむをえない事情からです。
    理由を聞いた上で各行の理解を得て了解しましょう。
    ただし将来返済金額が大きくなってきたときには案分方式にかえてゆきましょう。
(オ)返済財源を考慮して検討する。
当初の返済財源を考慮して変則的に返済財源を決める場合があります。
たとえば、当初に特定の売掛金や未収入金の回収を返済財源としていたときには、その分をそのまま充当する場合があります。
もちろん他行の承諾はとっておくことが前提です。
そして充当後の残額分のみを各銀行で案分する方法です。
しかしこの方法は各銀行の同意が得られなかった場合に長期間もめる原因にもなりかねませんので要注意です。

■リスケジュールの各銀行との個別交渉

当初の返済条件を変えなければならなくなった事態を招いたのはこちら側の責任ですので、まずは詫びることが大事です。
この姿勢は最後まで忘れてはならないことです。
しかし、一方で今後の返済を行っていくのはやはり自分側であることは間違いないことです。
最後まで返済に責任を持つという意味でも、自分自身が主導的になって返済方法を提案していくことが大事なことだと思います。

 

・リスケジュール中に新規借入ができる方法

■新規借入が再びできるようになるために、いうまでもないのは、リスケジュールを行う前の返済条件に戻すことですが、この厳しい経済状況下で、そんなことは不可能に近いと思われます。
ただ、そこまでの状態に戻さなくても新規借入をできるようにする方法がありますので、具体例を用いて説明をいたします。

(具体例)

Y社の場合 (現在元金棚上げ利息のみ支払い中)

プロパー融資 保証協会付 残高計
A銀行
B銀行
C信金
合 計
4,800万円
1,200万円
0
6,000万円
4,200万円
1,500万円
300万円
6,000万円
9,000万円
2,700万円
300万円
12,000万円

1.保証協会付融資分の返済開始

まず保証協会に行って保証協会付融資分の正常化を図りたいので、保証協会付融資分の返済を始めたい旨のご相談をしてみて下さい。

以前なら運転資金の返済期間は最長で通常5年でしたが、資金繰り円滑化借換保証(借入を一本化し返済期間を最長10年まで延ばせる制度)導入後、運転資金であっても10年の返済期間でみてくれる場合が多くなりました。
上記具体例の場合、保証協会付融資分の合計6,000万円を120回で除してみて算出される金額、月50万円の返済をC信金にて交渉してみます。
(なぜC信金を窓口にするか。C信金は保証協会付融資のみなので、返済を開始するにあたって話がしやすい)

→6カ月間滞りなく返済をすることができれば、保証協会はY社の保証協会付融資について正常に戻ったと判断します。
2.A銀行及びB銀行融資分の返済
1で保証協会付融資分の返済実績を積み上げられれば、A銀行及びB銀行のプロパーの借入金について、各120回で除した金額の返済を開始する
交渉を各銀行として下さい。また、C信金からの借入残高は6カ月経過した時点で0円になりますので、A銀行及びB銀行からの保証協会付融資分についても資金繰り円滑化借換保証を使って一本化するか、それぞれ120回で除した返済金額を返済するように交渉をして下さい。
3.新規融資の実行
1の返済を開始し始めて1年後あたりには保証協会付融資が実行されることが、私の経験上では多いです。
(当然のことながら、企業の経常利益が黒字化されていることと融資実行時点ですべての借入金が少なくとも120回で除した金額分の返済が開始されていることが条件になると思われます。)

(留意点)
ただ、この手法を使うと正常化に向け返済は進めたもののその後予想に反して業績が悪化して新規融資が実行されない場合などは、今まで以上に資金繰りが厳しくなるというリスクを秘めています。
経営者の方に経営改善計画をきちんと履行できる手腕がないと安易にお勧めはできませんので、慎重にご検討をされた方が賢明です。

 

財務ノウハウ(5)

(1)リスケジュールのタイミングをどう判断するか

リスケジュールにおいて重要なのは、そのタイミングです。
このタイミングは、早すぎても遅すぎてもいけません。
タイミングが早ければ、リスケジュールをしなくてもよかったのにリスケジュールすることになってしまったり、タイミングが遅ければ、遅れる間に返済がどんどん進んでしまうので、資金が枯渇してしまうことになったりします。

まず、リスケジュールを行うべきと判断とは
銀行から新たな融資が受けられるかどうかを基準にします。

 

例えば、事業におけるキャッシュフローが年間0、毎月の返済金額が300万円の企業があるとします。
その企業は、年間3,600万円の返済を行うことになります。
キャッシュフローが年間0で、返済額が年間3,600万円あるため、その間に新たな融資が受けられなければ現金預金は△3,600万円、減少してしまうことになります。だから、その企業は年間、3,600万円の融資を受けられるようにしなければならないのです。
しかし、銀行から融資が全く受けられなかったり、受けられたとしても年間返済額3,600万円に到底、満たない金額の融資しか受けられなかったりすると、現金預金は枯渇してしまうことになります。

どこの銀行からも融資が受けられなくなったり、もしくは年間に消えていく現金預金を補う金額に到底、満たない金額しか融資が受けられなさそうであったりすれば、それがリスケジュールを行うタイミングであります。

注意!
しかし、どこの銀行からも融資が受けられない、ということを気づくことが遅れてしまうと、リスケジュールのタイミングが遅れてしまうことになります。

リスケジュールのタイミングが遅い企業の例

例えば、現在23年3月、現金預金1,000万円、毎月の事業キャッシュフロー0、月間返済額300万円とします。 今、どこの銀行からも融資が受けられないことが分かったら、リスケジュールするタイミングは、今、ということになります。


しかし、今、融資を申し込まず、そこから3ヶ月×300万円=900万円の返済を進めて、23年6月に残り現金預金100万円になったところでやっと銀行に融資を申込み、審査が通らず、どこの銀行からも融資が受けられないということが分かったとします。


その場合、リスケジュールを行っても残り現金預金が100万円しかありません。

融資が受けられないことに、気づくタイミングが遅いのです。

23年3月時点、残り現金預金が1,000万円の時点でどこの銀行からも融資が受けられないことに気づいて、すぐにリスケジュールを行えば、残り現金預金1,000万円がある状態になり、多少は余裕を持って、経営を行うことができます。

ここから考えると、各銀行のあなたの会社への融資スタンスを常に把握しておき、リスケジュールのタイミングが遅くなりすぎないようにすることが重要であることが、分かります。ここから考えると、各銀行のあなたの会社への融資スタンスを常に把握しておき、リスケジュールのタイミングが遅くなりすぎないようにすることが重要であることが、分かります。

次のようなケースではどうでしょう。

リスケジュールのタイミングが遅い企業の例年間の事業キャッシュフローは0、年間3,600万円の返済があり、一方で現在は、ある銀行で1,500万円は融資が受けられそう(ただその銀行から今後1年間は追加融資は受けられなさそう)であるが、他の銀行からは融資が受けられる見込みない。


この場合、年間で消えてしまう現金預金3,600万円に対して、年間で受けられる融資が1,500万円しかなく、リスケジュールを行いますが、その1,500万円の融資は、すぐに受けておくべきです。

  • ■融資を受けられない他の銀行ではすぐにリスケジュールを行い、一方で1,500万円の融資を受けられる銀行においては融資を受けておき、2,3ヶ月返済したら、その銀行でもリスケジュールを行うのです。
  • ■1,500万円の融資を受けられる銀行には、実際に融資金が入金となるまでは、もちろん他行でリスケジュールを進めているという話をしてはなりません。
  • ■またその1,500万円の融資が信用保証協会保証付融資だったら、他行での保証付融資のリスケジュールを同時に進めてしまうと、その1,500万円の融資の保証協会保証はおりないことになってしまうので、それも間違えてはなりません。


このように、各銀行の融資スタンスをはかり、リスケジュールのタイミングが遅くならないことにすることが重要です。

■次に、リスケジュールのタイミングが早すぎないようにする、とはどういうことかについて述べます。

特に、金融円滑化法によりリスケジュールという手段が一般的なものになってから、リスケジュールを行わなくてもよいのにリスケジュールを行っている企業を、多く見受けます。

第一に、銀行から普通に融資が受けられるのに、その融資を受けることを選択せず、リスケジュールしてしまう企業、です。

例えば、年間の事業キャッシュフロー0、年間返済額3,600万円の企業で、年間3,600万円の融資を受けられる企業であるにもかかわらず、これ以上融資を増やしたくないという理由で、リスケジュールを行ってしまう企業があります。


この場合、リスケジュールを行ってはなりません。
リスケジュールは、銀行から融資が受けられず、返済負担が大きくなった場合にとる「次の手段」です。


なぜなら、リスケジュールを行うと、やはり銀行は、リスケジュールを行った企業に対しては厳しい見方をするようになるからです。 その銀行は、その企業に対し、リスケジュール期間中は融資を出さないし、また返済を再開し、正常な状態に回復するのも時間がかかります。

 

(2)工務店におけるキャッシュフロー経営とは

"勘定合って銭足らず"よく耳にする言葉ですよね。

帳簿上では利益が出ているのに、なぜか金が無い状態を言い表しています。ただ、やっかいなのが建設業の場合、"勘定も合っていなし、金もない"という会社が結構多いんです。


こんな会社でも、最悪、キャッシュフローだけ意識して経営していたなら、何とか持ちこたえることができるかもしれませんが。

一般的に「キャッシュフロー経営」とは、キャッシュフロー計算書により、現金の流れを重視して、現預金残高を大きくしていく経営のことです。

このキャッシュフロー計算書は上場企業だけに作成が義務づけられていて、
 1.営業活動によるキャッシュフロー
 2.投資活動によるキャッシュフロー
 3.財務活動によるキャッシュフロー
が判るようになっています。
重要なのは、1の営業 活動によるキャッシュフローを意識して経営を行うことです。

いま中小工務店がやらなければならないことは
「資金繰り表」の作成です。
少なくても3~6ヶ月先の資金計画ぐらいは把握できるようにしましょう。私が担当している工務店さんには、資金繰り表でも「日繰り表」を毎日付けて貰うようにしています。

 

いつ、どこに、いくら支払うか、予定を入れ、日々実際の入出金に合わせてメンテナンスをします。

ここで重要なのが、把握できている範囲で出来るだけ先の予定を入れる事が鍵だということです。

受注工事が増えたら、都度メンテナンスをして、おおよその金額と支払い時期がわかるようにしておきます。

これによって、土壇場で慌てることなく前もって資金繰りが考えられます。

この日繰り表は、出来ることなら社長さん自らが作成して欲しいものです。
中小工務店の場合、結局、資金調達は社長さんの仕事でしょうから、頭の中に"日繰り"をたたき込んでおきましょう。

 

(3)元請け、下請け、どっちが良いの?

"ゼネコンを目指した"、一、専門工事業者がありました。
専門工事業者ですから、とび・土工、鉄筋、型枠・・・と、数多くの業種があるわけですが、その一職種に特化した下請会社が、元請会社である、ゼネコンを目指したというわけです。

この会社の社長が言うには、ゼネコンの元社員で、現場で施工管理をやっていた技術者が入社したことで、建築一式工事を請けたそうです。詳しくは言えませんが、その現場で契約上のトラブルが発生し、請負金を巡って訴訟中となっているらしく、当然、かなりの金額が滞っているので、経営的に窮地に立たされています。

  • ●出来るからやるのは「建設者」の発想であり、発注者との合意を、法律に則って履行する「契約者」としては如何なものでしょう。やはり、一度原点に戻って事業の立て直しを考えるべきだと話しました。
  • ●繰り返しになりますが、ゼネコンになるということは、発注者と約束した建物を、約束通りの「価格」で「安全」に「工期」内で造らなければならないということです。 それではじめて約束した「金額」を受け取れる権利を主張できるのです。
    ただし、例え、約束した「金額」を受け取れない場合でも、下請け業者には、請負代金の支払いなど、約束を履行しなければなりません。
  • ●私は下請け業者が、元請けを目指すのは悪いことだとは思いません。 実際、下請け業者でも三次下請けであれば、二次を目指し、二次は一次を目指すべきだと思っています。しかし、そうなるには、そうなる資質を備えていかなければなりません。何事も一足飛びにはできないのです。

財務を立て直すこと、それから地に足のついた「事業再生計画」の策定を第一にするべきです!

 

(4)建設業の再生方法

■建設業は、1件1件の工事でどれだけ利益を出していけるか、がその企業のトータルの利益を決める業種であります。

粗利管理の重要性
  • ◎原価積算の正確性、外注や材料費の相見積りによる原価の抑制、十分な利益を確保した見積り提示、が重要。
  • ◎また、それとともに、施主や元請け先からのサービス工事、つまり追加工事をサービスで引き受けないことも、利益確保の上で重要になってきます。
  • ◎工事ごとの粗利管理をしっかり行わないと、1件1件の工事において利益がほとんど確保できなかったり、もしくは赤字工事になったりして、その企業は苦しい状況に追い込まれてしまいます。
予算実績管理
  • ◎必ず予算と実績の比較を行っていますでしょうか。
  • ◎実績でどれだけ原価がかかったかを見ないと、予算の設定が適正であったのか検証することができず、今後の粗利管理に生かしていくことができません。
  • ◎予算実績管理を行わないと、サービス工事のこわさが分かりません。
    サービス工事を行うと、とたんに利益は少なくなります。粗利管理を行わないと、これが分かりません。

■例を見てください。1年で工事が5件ある企業だとしますと

工事名 売上 原価 粗利益 (単位:百万円)
工事A
工事B
工事C
工事D
工事E
合計
150
70
90
130
80
520
120
60
70
120
60
430
30
10
20
10
20
90
この企業の共通経費が80百万円だとしますと、この企業の利益は90-80=10百万円、となります。 1件1件の工事で粗利益を稼いで、共通経費をまかなうイメージはこのような感じです。

ところが、工事Aにおいてサービス工事を請けてしまい、その分の原価が20百万円かかったとしましょう。


そうすると、工事Aの粗利益は10百万円となり、この企業の1年間の利益は△10百万円となってしまいます。

サービス工事を安易に引き受けず、20百万円をせめて追加請求していれば、赤字の転落はなかったです。 このように、サービス工事は、その企業の業績を一気に悪化させます。簡単に請けてしまってはいけません。

建設業の再生のためには、一にも二にも、工事ごとの粗利益の改善です。

 

(5)建設業における公共事業と民間事業の戦略

■同業他社と競争し、高額商品である住宅(もしくは大規模修繕リフォーム)のご契約をいただくために、第一に検討しなければならないポイントを申し上げます。

  • 1.自社の会社としての『強み・弱み』は何か?を考え、自社の強みをどう生かすことができるか?
  • 2.誰(どんなターゲット層)に、何(どんな住宅・リフォーム商品)を、どのように販売することができるのか?

必ず、1が最初でなければいけません。
なぜならば、自社の状況を検討し、戦略を練った上で、そのターゲットに向けた情報を発信しなければ、集客も契約もできないからです。

例えば、ターゲットとすべきは、30代や団塊世代を狙うべきだ、自然素材を売りにした住宅を販売すべきだ、オール電化や太陽光発電などエコ商品をターゲットにしたら良い!と、コンサルタント会社からの提案を受けて2からスタートすると...
オール電化や太陽光発電等世間で注目されているから、というだけでは、同じものを取り扱っている会社はたくさんありますので、お客様からお問合せをいただいたとしても、ご契約できるかどうかはわかりません。価格競争にさらされる危険性が高いです。

営業的な入口は、あなたの会社の特徴(=強み)は、ハッキリとした他社との差別化をどう打ち出せるのか?の検討がなければ、成果を出し続けることはできません。

■新規事業へのシフトをお考えになる場合には、現在の事業の財務面も併せて検討することが重要です。

まずは、現状の財務の問題点・改善点を検討した上で、現在の資金繰り表を作成し、最低でも6か月、基本的には12ヵ月先までの収支を確認します。

なぜならば、例え、今すぐにご契約をいただいても、着工は早くて3か月先、基礎工事からお引渡まで、4ヵ月の工期として、支払の多くは上棟後発生し、それからお引渡後2ヶ月程度まで発生し続けますので、契約前にその工事の支払が全て終了するまで原価・工程管理の中で利益額(率)を把握し続けることが大きなポイントとなります。

なぜならば、お客様との基本的な金額の同意は契約時に決まりますが、利益は全ての支払いが終了した後に確定するのですから。

自社でお建ていただくお客様を集客するための広告宣伝費(顧客獲得単価)契約までの追客コストを把握していなければ、利益確保は覚束ないのです。

■すべてにおいて毎月の予算実績管理を徹底していく必要があります。
つまり、あなたの会社を発展させるには、『財務』と『売上向上』が全て一体となった計画=戦略がなければ、成功できないとういうことです。どちらか一方だけではいけません。

 

(6)会計データとにらめっこ

私の会社は7月決算で、平成25年7月期の売上・利益がどうやって成り立ってるかの分析はもちろん、部門別の会計を行い、データを分析しておりました。
そして、ずっと会計データとにらめっこしていました。

そのようにすると、利益をもっと大きくするにはどうすればよいか、見えてくるものです。
利益を大きくするための対策が浮かんでくるのです。

利益を大きくするためにもっともやらなければならないことは、経営者自身が会計データとにらめっこすることだと思います。

会計データのいろいろなところを見まくることにより、業績をアップさせるためのいろいろな対策が浮かんできます。
対策が浮かんできたら、あとはそれを実行するだけです。

 

資金繰りを良くする、銀行から融資を受けやすくするために、もっともとるべき対策は
業績アップです!

 

経理を行わない、いわゆるどんぶり勘定の企業は、自然と業績が悪くなります。経営者が会計データを見ることができないで、どうやって業績アップの対策が立てられましょうか。

業績アップのために、毎月、試算表を翌月の中旬ぐらいまでに作り、経営者が会計データとにらめっこして、対策を練るべきです。

 

(7)赤字補填の借入の見分け方

資金調達には、大きく分けて2種類の性質があります。

・売上増加にともなう運転資金、生産力増強のための設備資金など、前向きな資金調達
・赤字で資金が減少していくにあたって、その補填のための後向きな資金調達

見分ける方法があります。


売上が増加していないことを前提として、決算期ごとに、借入総額が増えていっているかそうでないかを見ることによって、見分けることができます。

資金繰りが苦しくなったのは銀行のせいではないですよね。赤字を黒字にする対策を怠り続けた経営者の問題ですよね。

原因を他人(銀行)のせいにすると、経営者になんの反省も生まれず、その会社は改善、いや改革していくことはできません。 早めに気づいてください。

 

(8)事業融資は「住宅ローン」ではない

中小企業経営者と話をしていると、銀行からの事業融資を、住宅ローンと同じ感覚でとらえている方が多いことに気がつきます。
何かと言いますと。
企業で借りる事業融資は、完済、を目指すべきではない、ということです。一方で、個人で借りる住宅ローンは、完済を目指してください。

多くの中小企業経営者は、銀行から融資を受けることを「悪」と考えています。
そういう経営者は、「無借金経営」を目指そうとします。
無理なのに無借金経営を目指すと、どうしてもギリギリの、現金預金保有量で資金をまわそうとします。


以下のAとB、どちらの会社が、資金繰りがまわっていて安全な企業、と言えるでしょうか。

A.現金預金 100万円 借入金 5,100万円
B.現金預金3,100万円 借入金 8,100万円

当然、Bの会社の方が、安全な企業、ということになります。

無借金経営を目指すと、現金預金が尽きる寸前まで、借入をせずに資金をまわそうとします。

現金預金がギリギリとなります。

しかし、融資は経営者が望めば、出てくるものではありません。
  審査が通らなければ、どうでしょう。もうAの会社は、アウトです。

  • ★事業を営むには、当然、運転資金が発生します。
  • ★設備資金も発生します。
  • ★売上が大きくなればなるほど、売掛金や在庫が多く発生します。それで資金が足りなくなり、銀行から融資を受けて資金を確保します。
  • ★このように、銀行から事業資金を受けているという状態は、企業が事業活動を行っていくためには「当たり前の状態」なのです。

無借金経営は、キャッシュフローをいかに大きくするか、という観点からしか、目指すことはできません。
無借金にしたいのなら、まずはいかに、利益を大きくするか、そちらを考えるべきです。それが結果として、無借金経営に近づいていくことになります。

キャッシュフローの簡易計算式は次のとおりです。
キャッシュフロー=利益+減価償却費
キャッシュフロー計算書を作れば正確なキャッシュフローが計算できますが、それが難しいのであれば決算書内の損益計算書を見て、上記計算式で計算してみるとよいでしょう。

キャッシュフローが返済額を上回ると、現金預金量は減らさずに、借入残高を減らしていくことができます。そうすると、無借金経営、に近づいてきます。
一方で、キャッシュフローが返済額を下回ると、返済が進むにつれ、現金預金量が減っていくことになります。


そうなった場合、新たな借入を起こせばよいのです。
企業は、銀行から融資を受けている状態が「当たり前の状態」なのです。

 

(9)代表者の住宅ローンを返済猶予する場合の事業融資への影響

<質問>

代表者個人の住宅ローン(住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)より借入中)の返済猶予を申入れして、可能となった場合に、その後、代表者の個人保証が必須の、信用保証協会への法人借入れに影響は出るのでしょうか?
現在資金繰りが厳しいため、返済猶予法が施行されている間に、住宅ローンの返済猶予を申請し、代表者の給与を運転資金に充てたいと考えているのですが信用保証協会の借入れに影響するのであれば、無理なのではと思案中です。

<回答>

信用保証協会保証付融資の審査は、信用保証協会と、融資を出す銀行が行います。
その保証協会と、銀行に、代表者の住宅ローン返済猶予の情報が分かると、保証協会の保証審査、銀行の融資審査に著しく不利になります。
住宅金融支援機構の住宅ローンが返済猶予されている情報は保証協会に伝わることはありませんが、問題は銀行です。住宅金融支援機構の住宅ローンを返済している銀行と、保証付融資を申込む銀行が別々であれば、住宅ローンを返済猶予している情報が銀行に分かることはないでしょう。

 

(10)決算書のポイントは3つ

銀行が企業に融資を出すかどうか審査をする際に、最も重要なのは、決算書です。

決算書が、審査のウェートの8割を占めます。決算書の重要性を今一度、ご認識ください。 では決算書で、どこが重点的に見られるか。それを知っておけば、銀行から融資を出しやすい決算書はどのような決算書か、分かるようになります。


貸借対照表で最も重要なのは
  • ◎純資産がどれだけあるか
    純資産とは、企業の持つ資産から、負債を引いたものです。この数値が高い企業は、財務体質良好な企業と言えます。
  • ◎純資産の絶対額と、そして純資産を総資産で割った比率「自己資本比率」がポイントとなります。これらの数値が高い企業は、財務体質良好な企業として、融資審査は通りやすくなります。
  • ◎純資産がマイナスの企業は、それだけで融資を受けられる可能性が限りなく低いということになります。
損益計算書で重要なのは
  • ◎営業利益と経常利益がどれだけあるか
    営業利益は、事業でどれだけ稼ぐ力があるかをあらわします。
    経常利益は、コンスタントにどれだけ稼ぐ力があるかを表します。
  • ◎一方、当期純利益は、土地を売却して損失が出た場合の「固定資産売却損」での特別損失など、その期だけの特別な要因が影響します。そのため、営業利益、経常利益ほど重要視されるわけではありません。
  • ◎営業利益・経常利益がプラスであることは、融資審査を通しやすくするためには絶対、なのです。

そして決算書の中で最重要なポイントは

 貸借対照表・・・純資産
 損益計算書・・・営業利益・経常利益


いくら、融資を受けやすくするためのテクニックを使おうとしても、これらの数値を良くすることに勝ることはありません。 これらの数値を良くするには、毎月試算表を作って経営管理をし、その結果良い決算になるように経営していくことが求められます。経営者の努力が重要なのです。

 

(11)汚れた貸借対照表

貸借対照表で最も重要視されるのが、純資産合計です。

純資産=資産-負債ですが、純資産がマイナスということは、資産より負債の方が大きい、ということです。
これが債務超過です。
しかし、純資産がプラスで、見た目は債務超過ではなくても、実質債務超過と見られることもあります。


純資産=資産-負債ですが、資産に計上されているものが資産価値がなければ、その分、資産は差し引きして見られます。

そのため、貸借対照表の資産の部において、いかに不良資産を出さないか、融資審査を大きく左右します。


債務超過かどうかは、融資審査においては天と地ほどの大きな差です。

影響は大きいです。ではどうしたらよいかというと、資産の部において、不良資産として見られるものを少なくするしかありません。
例で言えば、経営者に対しての貸付金15百万円を経営者が会社に返済して貸付金を0にすることができればいいです。

しかし、それができれば苦労しません、実際はほとんどの企業で、無理でしょう。

対策


その場合、生命保険を使って貸付金を消す方法があります。 この方法を使って貸付金を保険積立金に振り替えてしまえば、不良資産として見なされる資産を少なくして、銀行から良い評価を受けるようになることが期待できます。

今回は貸付金が不良資産の場合を例にしましたが、仮払金、未収入金など他の資産科目でも、返ってくる見込みのない資産として不良資産として見なされるものは消した方がよいです。

経営者向けの貸付金を例にしましたが、関係会社向けや、従業員向けなどで、返ってくる見込みのない資産でも、同じことが言えます。
これら不良資産として見られるものも、保険積立金に振り替える方法などを活用して、消していくとよいでしょう。

 

(12)将来期待できる商品や技術

銀行員が、よくうのみにするのが、「将来期待できる商品や技術」です。
銀行員は、その分野の専門家ではありません。あらゆる業種と融資取引をしており、ある特定の分野で専門的な知識がある、というわけではないのです。
そのため、この商品や技術は、将来このように広がっていく、というような事業計画を、もっともらしく書けば、銀行員は「すごそう!」とうのみにします。

そのため、いかに、斬新な商品や技術を、それが将来どれぐらいの売上増加につながるか、銀行にアピールするかは、銀行から融資を引き出すための有効な手段ということになります。
それで通常は融資が出ない会社でも、融資が出てしまうことは多いのです。

しかし!

事業が赤字でも、将来性が期待できる商品や技術をアピールした事業計画を見てもらって出た融資は、ほとんどの場合、赤字の補てんに消えてしまいます。
そうなると、借入金はふくらんでしまう一方。
残ったのは莫大な借入金と、赤字体質のままの事業、ということになります。

あなたの会社は、このようなことになっていないか、見直してみてください。

 

(13)余計なことにお金を使わないで!

資金によほど余裕のある企業ならまだしも、そうでないのであれば、余計なことにお金を使えないはずです。資金繰りが厳しいのは、本業とは関係のない、余計なことにお金を流出させてしまっていることがひとつの要因であるケースは多いです。

貸借対照表を見れば、その会社はどのようなことにお金を流出させているか、分かります。

・知人の会社や、個人から頼まれてお金を貸すこと。
 →知人の会社や個人への貸付金

・儲け話が舞い込んできて投資をしてしまったこと。
 →その事業や事業会社への出資金や有価証券、貸付金

・事業の見通しが立っていない新事業のために別会社を作りそこにお金をつぎこむこと。
 →別会社への出資金や貸付金

・社長個人での、遊びや贅沢、投資話のために社長にお金を出すこと。
 →社長個人への貸付金

・必要もない不動産を、ただ不動産を所有したいという所有欲のためだけで買うこと。
 →過大な有形固定資産

負債の部を見ると、借入金勘定があります。

貸付金(知人の会社)25百万円
貸付金(赤字の別会社)30百万円
出資金(赤字の別会社)20百万円

借入金が200百万円。としますと、借入金200百万円のうち、75百万円が、余計なことに実質的に使われていると見ることができます。 このような余計なことにお金を使わなければ、この会社の借入金は125百万円ですんでいるはずです。

 

(14)銀行はお金をあげるのではない

  • ・赤字の会社に、銀行は融資をしません。私の会社は、あくまで正攻法で、中小企業の資金繰りが円滑にまわるように、取り組んでいます。赤字の会社には、どうやって資金繰りがまわるようにするか、あらゆる手を考えて実行していきます。
  • ・資金調達第一、ではありません。裏技みたいなものはありません。
  • ・裏技・テクニックを追い求めても、それがたまたま、一時的には功を奏すかもしれませんが、効果は短期間です。裏技があったとして、融資を受けられても、業績が悪いままであれば融資を受け続けるのにも限りはあります。

しかし


多くの経営者は、その正攻法を実践し、資金繰りがまわるようになっています。

正攻法と言っても、資金繰り困窮時で資金繰りをまわす方法なので、経営者には聞いたことがない方法を伝えています。ただ、会社が生き残っていくためには、こんな方法やりたくない、なんて言っていられないでしょう。

経営者としては、

 ○資金繰りをまわすためにはどうすればよいか。を考えていくべきであって、
 ×資金調達をするためにはどうすればよいか。

を第一に考えてはいけないのです。資金調達のことを全く考えないわけではなく、資金繰りをまわすために資金調達もひとつの方法として考えるべきです。

 

(15)取引銀行を絞る?

・連日、多くの中小企業経営者様からご相談をいただきますが、その中で、取引銀行を集約、もしくは1行に絞りたい、という話もよく聞きます。

例えば、次のようなイメージです。

現状の借入
A銀行 
B銀行 
C銀行 
1億3千万円
5千万円
2千万円
こちらを、次のように集約
A銀行 
B銀行 
1億3千万円
7千万円
(C銀行の融資を借換)

もしくは、次のように集約
A銀行  2億円 (B銀行・C銀行の融資を借換)

しかし、こんなことは、行わないでください。
銀行とのつきあいにおいて、取引銀行は多く持つことは、鉄則です。
そうしないと、次のようなデメリットがあります。

  • ・ある銀行に融資を申し込んで断られた場合、他に取引銀行がなければ別の銀行に融資を申し込むことはできない。
  • ・優良な企業であれば金利引下げを交渉できるが、取引銀行が少ないと金利の競争相手がなく、金利は高止まりとなってしまう。
  • ・このように、取引銀行を集約することは、デメリットばかりでメリットはありません。
そもそも、優良な企業でないかぎり、集約しようとする銀行は、他の銀行の融資の借換を引き受けないことでしょう。

銀行から常に融資を受ける必要がある企業であれば、融資を申込む金融機関の選択肢を自らせばめることは、やってはならないのです。選択肢は広げていくことが、鉄則です。

 

(16)資金があと1か月もつかどうか・・・

①この場合、まず、頭の中を
「通常の資金繰り → 緊急の資金繰り」に切り替えてください。
 
  • ②入りを増やすために資金調達の手段をいろいろとっていくとともに、出を減らすために、優先順位をつけた支払いを行います。

  • ③全て支払いを行うと、資金がショートします。そのため優先順位をつけた支払いを行い、一方では優先順位が後の支払いは支払先に対して待ってもらう交渉を行うことによって、資金のショートを防いでいきます。では、支払いの優先順位はどうやってつけていったらよいのでしょうか。

  • ④そもそも、中小企業が、資金が出ていくのは、大まかに分けて次の5つです。
    1.銀行返済
    2.社会保険・税金
    3.経費
    4.買掛金(仕入・外注)
    5.給与        この中で、支払いの優先順位が高い準に、5→4→3→2→1です。

このように考えると、「緊急の資金繰り」においては、銀行返済や社会保険・税金の支払いは、優先順位は後でもよいのです。 一方で、銀行などへ、支払い条件の緩和の交渉をしていきますが、まずは緊急事態なので、交渉の前に延滞するのです。

 

(17)融資申込みに必須の「資金使途」

融資を申し込むにあたって、銀行から必ず「資金使途」というものを聞かれます。

資金使途には、大きく2つに分かれます。
・設備資金・運転資金

設備資金 設備資金として融資を申し込むにあたっては、必ず、その設備の見積書等、証拠書類が求められます。
そして融資がおりたら、その資金を、支払先へすぐに振り込むことがが求められます。
また、後日、融資によって手に入れた設備を、銀行員が確認に行くこともあります。
運転資金

運転資金は、資金繰りに使われるための資金なので、何に使うか、証拠書類を出すことはできません。
そのため、運転資金として融資を受けたい場合は、その旨を銀行に伝えるだけでよいことになります。将来6ヶ月~1年ぐらいの予定資金繰り表を作り、融資を受けるとどう資金繰りがまわるか、銀行に伝えると、審査においては多少、有利になります。
運転資金といっても、その資金の支払先が決まっている場合もあります。

例えば、建設業によく見られる、工事引当の資金。
工事の、外注費や材料費の支払いが先行し、入金が後になる場合、企業の資金繰りは大きな負担になります。
そのため、工事の発注書や契約書などを証拠書類として、入金予定日に一括返済をすることを約束して、融資を受けます。

例えば、季節ごとに売上の増減が激しい業種を対象とした、季節資金。

例えば衣服製造業で、冬のシーズンに向け夏のうちに衣服を製造し、在庫として蓄えておく、このような場合には夏の時期にいろいろな支払いが先行しますが、その時期に融資を受けて、冬のシーズンに売上を上げて資金を回収し、それを返済にあてます。短期の融資となります。

また、賞与資金や納税資金として、融資を受けることもあります。
これらは全て運転資金の範ちゅうですが、何に使うかが明確なので、証拠資料を出すことができます。工事引当の資金であれば発注書や契約書、季節資金であれば製品や商品の製造・仕入→販売計画や昨年の実績、賞与資金であれば賞与支給予定の計算書、納税資金であれば税理士から出される 納税予定などです。

とすると、単なる運転資金として融資を申し込んだ方が面倒くさくなくてよいのでは、ということになりますが、資金使途をしぼった運転資金として融資を申し込むと、審査が有利になるのです。

なぜなら、資金の使い道がこの場合はっきりしているので、銀行としては 融資を出しやすいのです。設備資金も同じです。

 

(18)粉飾決算がばれるとどうなる?

・銀行は、粉飾決算が分かった場合の対応として、特に取り決めはしていません。
・銀行は次のように対応してきます。上の段階から下の段階にかけて、厳しい対応、ということになります。

【第1段階】新規融資は出さないようにする。
【第2段階】既存の融資の一括返済を求めてくる。
【第3段階】経営者や、場合によっては粉飾決算を作った税理士に、貸倒れた融資の損害賠償を求めてくる。
        (融資が出た時の決算書を作った税理士が損害賠償を請求されます。)
【第4段階】詐欺罪として刑事告訴してくる。

これら、どの段階の対応かは、・粉飾決算の度合い(どれぐらいの利益や資産勘定を上乗せしていたか)粉飾決算で受けた融資の量 などによって、支店と審査部との話し合いの上、銀行は決めます。
ほとんどの場合、第1段階、せめて第2段階までです。第3段階や第4段階はめったにないでしょう。

またこれらリスクよりも、私が重要なリスクと考えることがあります。


それは、通常は融資を受けられないような企業が、粉飾決算で融資を受けることによって、経営者は安心してしまい、経営改善を後回しにすることです。
粉飾決算は、それがばれた時のリスクも高いのですが、それ以上に、粉飾決算が問題の先送りを引き起こし、企業がどうしようもない状態までなってしまうことの方がリスクが高いのです。

 

(19)銀行は粉飾決算をどう見破るか

どうやって見破られたのかというと、

ケース1
  • ・信用保証協会で審査を行ってもらおうと信用保証協会に決算書を提出 したが、他の銀行から提出された決算書が違っていた。
ケース2
・銀行に提出された決算書が、前期と当期で、数字のつながりがなかった。

銀行の支店は、大きく「得意先係」「融資係」「預金係」と分かれます。

得意先係 企業に営業して、融資案件をとってくる「攻め」の立場。
融資係 融資審査にあげられた案件の審査を行い、貸倒れが増えないようにする「守り」の立場です。

  • ◎ほとんどの銀行では、決算書をコンピュータで分析して粉飾の可能性を探るソフトがあり、全ての融資先の決算書を分析しています。
  • ◎他に経営者への質問や実地調査などによって、銀行は、粉飾決算を見破るために、いろいろな取組みを行っています。

粉飾が判明したらその後の融資はいっさいストップ、回収をはかっていく、という流れになります。

 

(20)税金や社会保険を滞納してしまっている

資金繰りがまわらず、法人税・消費税・従業員からの源泉徴収分など、税金を滞納してしまっている企業、社会保険事務所に支払わなければならない社会保険料を滞納してしまっている企業があります。


税金や社会保険料の滞納をそのままにしておくと、税務署や社会保険事務所は、あなたの会社の財産に「差押え」をかけてきます。

  • ①預金口座を差押えようとしてもそこには資金がないので、まずねらわれるのは所有している不動産、です。
  • ②不動産が差押えられても、依然滞納の解消ができない場合、競売手続きを進めてきます。そして不動産を、税務署や社会保険事務所の手で、処分されてしまいます。
  • ③また、不動産とともに税務署や社会保険事務所が差押えをねらってくるのが、売掛金、です。そもそも不動産を所有していない企業は、売掛金が真っ先にねらわれることになります。

売掛金が差押えられると売掛先に対し、差押えの通知がいくことになります。
そうなると、その売掛先は、あなたの会社が倒産間近の企業として、警戒してくることになります。売掛金の差押えをきっかけに取引が解消となれば、あなたの会社は商売を続けられなくなります。

税金や社会保険が滞納してしまったら、何よりもやらなければならないのは税務署や社会保険事務所との交渉です。

 

(21)社員への給料が支払えないかも・・・

まず、銀行返済を止めることによって、給与支払いの資金は捻出できないか、考えてみます。。

多くの企業の場合、これで問題解決する場合は多いです。銀行の返済を止めても商売は続けられますが、給与の支払いを止めると商売は続けられません。その後、銀行とリスケジュール交渉を行っていきます。
それでも給与支払いができない場合、どうするか。

給与支払いの中で、支払いの優先順位をつけます。
経営者の給与は当然、後回しにします。
次に、役員です。役員は経営側の人間であり、このような非常事態の場合にこそ、協力を求めるべきです。
そして、一般社員の給与を最優先に考えます。

それでもまだ足りない場合。
この場合は、社員に説明して、給与の遅配に理解を求めるしかありません。
肝心なのは、次の3つです。

1.経営者がおわびの姿勢を見せる。
給与の遅配という事態が起きると、当然、社員は不安に思うことでしょう。感情的になる人もいるでしょう。
まずは経営者が頭を下げることによって、社員の高ぶった感情を抑えるのです。また、経営者が頭を下げることによって「社長も大変なんだ。」という同情心を社員に抱かせ、今後の給与支払交渉をしやすくします。
2.いつに給与が支払いできるのか、日付を提示する。
社員の不安は、給与が支払われないこともそうですが、いつ支払いされるのか、ということにもあります。 いつ、給与が支払いできるのか。それを提示することによって、社員の不安をある程度抑えることができます。
ただやってはいけないのは、資金繰り計画も立てず、感覚だけでこの日は支払いできるだろうと、支払い日を提示することです。
一度提示した支払い日は、遅らせることはできないものと思ってください。確実に支払いできる日を検討し、給与がいつ支払いできるのかを社員に提示してください。
3.一部でも支払いをすることによって、支払いの姿勢を見せる。
社員の不安は、経営者が給与支払いを遅らせると言っても、経営者は本当に給与の支払いをしようという気があるのか、というところにもあります。
例えば25万円の給与の社員がいる場合、その社員に、給料日に5万円でも支払いをしておくことによって、経営者として、必ず給与は支払う、という姿勢をアピールすることができます。
全社員に全額、給与を支給できないのであれば、いくらなら支給できるのかを考え、一部でも給料日に支払うことにより、社員の不安を抑えることができます。

このように、給与が給料日に支払えない場合、まずは社員の気持ちを考えた上で行動していくことが、この困難を乗り切るために重要になります。

 

(22)新しい決算書が出たら、銀行のスタンスを見る

決算期が過ぎ、新しい決算書ができあがったら、やってみるとよいことがあります。 特に、前回の決算書より、今回の決算書の方が内容が悪い場合。新しい決算書をもとに、銀行に融資を申込んでみて、銀行のスタンスを探ってみてはどうでしょうか。


  • ★信用保証協会保証付融資は1行だけにしか申込めないので、どの銀行に申込んでみるかは状況を見て検討しなければなりませんが、プロパー融資やビジネスローンは、どの銀行にも一斉に申し込んでみることができます。
    実際に借りる借りないは別にして、銀行の融資審査がどうなるかを見ることによって、新しい決算書で、融資が出るかどうか、を探るのです。

新しい決算書で、融資が出る銀行もあれば出ない銀行もある、ということならまだしも、ほとんど全ての銀行で融資が出ない、ということであれば、次の決算書が出るまでの1年間は、銀行からの資金調達がほとんど期待できない、ということです。
  • ★その場合、キャッシュフロー、つまり事業で稼いだ現金で、毎月の融資返済がまかなえるかどうか、がポイントとなります。
  • ★預金が減り破綻が予想されるのであれば、早急に対策をうつ必要があります。 リスケジュール、つまり銀行に交渉して、毎月の返済金額を減額してもらう手が考えられますが、専門家に相談すべきです。

 

(23)売上が月ごとに大きく増減する会社の経費削減のやり方

企業の中には、売上が月ごとに、大きく増減する企業があります。
そのような企業が損益を改善させるポイントは、売上の増減による影響を極力少なくするにはどうするべきか、です。


事業活動にかかる費用には「固定費」と「変動費」とがあります。
固定費とは売上の増減にもかかわらず一定にかかる費用、変動費とは売上の増減に比例して変化する費用のことをいいます。

固定費の割合が高い企業
(社員の給料)
売上が落ちるとき、利益も大きくマイナスとなります。なぜなら、売上の 増減に比例して変化する変動費の割合が小さいため、売上が落ちると固定費の負担が一気にのしかかってくるからです。
変動費の割合が高い企業
(材料費・外注費・仕入原価)
売上が落ちるとき、利益の減少は、固定費の割合が高い企業ほど大きくはありません。なぜなら、売上の増減に比例して変化する変動費の割合が大きいため、売上が落ちると変動費としてかかる費用も落ちるからです。

そこから考えると、月ごとの売上の増減が激しい企業は、売上が落ちても利益への影響を少なくするため、費用の中で変動費の割合を高く、固定費の割合を低くすることが、セオリーとなります。

(例えば)
製造業。受注状況によって、売上が大きい月もあれば小さい月もある企業が大半でしょう。
固定費の代表的なものは社員の給料、変動費の代表的なものは外注費です。

私どもが相談を受ける製造業で、赤字企業の特徴を見ると、売上が大きい月に合わせた人員構成となっている、ということです。 売上が大きい月に、製造部門がスムーズにまわるように、人員を入れています。
ただ、そのような状態では、売上が小さい月には、余剰人員がでてきてしまうことになります。製造部門の社員に、仕事がない人が出てきてしまうのです。 余剰人員、余剰時間が発生するということは、その分、会社の費用負担は大きく、そこで赤字を発生させてしまう、ということになります。

これが、赤字の製造業の企業でよく見られる特徴です。
そのような企業は、売上が小さい月でも、利益が大きく赤字にならないように仕組みを変える必要があります。
そこで、製造部門をスリム化し、売上が小さい月でも余剰人員や余剰時間が発生しないぐらいまで、人員を減らします。

そうすると、売上が大きくなった月は当然、人手が足りなくなります。そこは、外注でカバーします。
こうすると、余剰人員・余剰時間の発生を防ぐことができるため、赤字の発生を抑えることができ、その企業の損益は大きく改善します。

売上が小さい月をベースに人員を構成し、売上が大きい月は外注でカバーする企業は、固定費の割合が小さく、変動費の割合が大きい企業です。
売上の増減による影響を、こうすることによって小さくできます。安定した経営ができます。
今回は製造業を例にあげましたが、どの業種でも、同じことが言えます。

 

(24)固定費の変動費化にひそむ問題と、その改善策

次に、建設業の会社を例に、考えてみます。

現場の正社員が5人いましたが、仕事の多い時と少ない時の差が激しく、人員構成を考えてみたら、正社員5人の体制は仕事の多い時に合わせた人員体制となっていました。
仕事の少ない時も同じように給料を支払わなければなりません。それで、仕事の少ない時は、人件費の負担が重く、赤字となっていたとします。
そこで、現場の正社員5人のうち、職長1人、他1人残し、3人に退職してもらいます。
一方、新たに外注として職人4人を確保し、その4人は仕事に出た日のみに変動費である外注費として支払うことにします。

固定費である正社員給料は削減できるのですが、一方で外注比率は高まりますし、必要な時にタイミングよく来てもらうことも難しくなってきたりします。
また時間単価で言えば、正社員の場合よりも、支払う費用が高くなりがちです。
このように、固定費の変動費化、つまり正社員に辞めてもらい、外注に変えていくと、毎日の職人の手配の負担は大きくなることでしょう。
また経営者としては、次のように考えることもあるでしょう。
「タイミング良く職人の手配ができないと、受注できた仕事をキャンセルしなければならなくなったり、そうするとその受注先からの仕事が今後来なくなってしまうおそれもあるので、無理してでも技術のない高い外注費の職人を連れてこなければならなかったり、それで時には利益が出なくなってしまったり、技術不足から補修などがかさんで赤字になってしまう場合もあるではないか。」 職人を手配し段取りをする職長の負担も大きくなることでしょう。

だからといって、仕事のピークに合わせて、正社員を増やしてしまえば赤字になります。

この例にひそむ問題は、管理体制、にあります。

  • ■仕事の受注見通しはどうか、職人のスケジュールはどうか、ということを、職長、職人、もしくは経営者で、共有しておく必要があります。
  • ■職長、職人、経営者間でGoogleカレンダーなどを使ってスケジュールを共有したり、全くパソコンが使えない人であれば1日1回は連絡をとってスケジュールを確認しておいたりするなど、情報共有手段はいろいろあるはずです。
  • ■仕事が多い時に困るからと、余剰人員を抱えるのではなく、仕事が多い時でもいかに仕事の受入体制を確保できるか、その体制を構築することを考えます。
  • ■ある仕事に慣れない職人でも、職長が仕事の状況をチェックしておくなど、管理体制をしっかり構築することを考えます。

どうしても仕事が多い時に合わせた人員を確保したいというのなら

仕事の少ない時に、余剰の社員を余らせるのではなく、仕事の少ない時には余剰の社員を営業に出させるなど、時間を有効に使わせるべきでしょう。 「ふだんは現場の社員に営業をさせることなんてできないよ。」というのなら、仕事が少ない時に余剰社員が出てしまう人員体制はとるべきではありません。

仕事が少ない時に照準を合わせた、人員体制を心掛けるようにしてください。

 

(25)決算書の貸借対照表は債務超過

しかし、役員借入金が多くあり、それを実質自己資本とみなすと、債務超過でなくなる。
だから、債務超過の状態はほっておいてもよい(と、顧問税士からアドバイスを受けている。)

債務超過、つまり決算書の貸借対照表において、純資産がマイナスの状態であるのは、銀行から融資を受けるにあたって、致命的です。
銀行融資の教科書的な本を読むと、決算書では債務超過であってもその超過額を上回る役員借入金があれば、それを銀行は実質自己資本とみなし、債務超過でない企業として扱ってくれる、ということがよく書いてあります。
しかし、それは机上の空論です。
やはり、決算書を見て債務超過であるのなら、その企業には融資を出しづらいのです。コンピュータが決算書を分析して審査するビジネスローンも、三井住友銀行のクライアントサポートローンという商品以外は、債務超過の企業は対象外なのです。例え債務超過額を上回る役員借入金があったとしても。

  • ■役員が会社に貸し付けている貸付金を「債務免除」する、という方法があります。
    決算で、役員が債務免除して、それを債務免除益として計上します。
    こうして債務超過が解消となれば、決算書の貸借対照表において純資産がプラスとなります。
  • ■また、役員借入金を資本金に組み入れて債務超過を解消することもできますが、この方法についても税金のことを気をつけなければなりません。

はっきり言って、債務超過である企業、そうでない企業、銀行融資の審査において、天と地の差はありますよ。銀行からスムーズに融資を受けたいのなら、そこは、はっきりと意識を持ってください

 

(26)とうとう商工ローンや消費者金融に手をだしてしまった

・銀行から融資が受けられない企業がやってはいけないこと

商工ローンや消費者金融に手をだしてしまうこと

問題は、次の場合です。

1.事業が赤字であり、赤字を補填するため。
この場合、赤字が借入に化けることになります。一時的な赤字であっても黒字ベースに回復するならまだしも、赤字に陥った企業のほとんどは、そうではなく赤字体質がつづくことになります。
そうすると、赤字が続く限り、永遠に借入で補填しなければならないことになります。これでは、いずれ破綻してしまうことになります。それに加えて、金利の負担がどんどんふくらみます。
2.銀行への融資返済の資金を作るため
この場合、よく考えてみてください。銀行の、2~3%の低金利の融資が、商工ローンなどの、10%~20%の高金利の融資に取って代わることになります。
高金利でお金を借りて低金利のものを返す。すごい矛盾ですね。
このように、銀行からお金が借りられない場合、商工ローンや消費者金融などでお金を借りてしのぐというのは、絶対やってはならないことなのです。

それと、もう一つ。高金利のお金を借りるにあたって知っておかなければならないことがあります。

商工ローンや消費者金融は、高い金利をとられる上に、少しでも返済できなくなったらすぐに強硬な手段をとってきます。 商工ローンや消費者金融などでお金を借りてしのぐというのは、絶対やってはならないことなのです。

 

(27)次の決算が大きく赤字となる場合

前期決算は黒字でした。来期決算は、大きな赤字が予想されるとき


今のうちに、借りられるだけ借りておくことです。

前期決算が黒字であったら、今期の今までの試算表では赤字であっても、銀行は前期の黒字を見て、融資審査してくれやすい、ということです。

そして、今期決算が出たら、それを各銀行にもっていって、また融資を受けることはできないか、融資を申込んでみます。
そうすることによって、各銀行が今期決算をふまえて、どういうスタンスでくるのか、を探ることができます。

それで、融資が出なかったら、おそらく今後1年間は、その銀行で融資が出ない、ということです。
そういった場合、1年間は融資を受けられない状態で、今後1年の資金繰りはどうなるのか、経営計画と資金繰り表で、十分、検討します。

そして、1年のうちに資金繰りが破綻することが予想されたのなら、銀行に毎月の返済金額を少なくしてもらう、いわゆるリスケジュールの交渉も、視野に入れなければなりません。
その判断は、遅くなってはいけません。遅くなると、資金が尽きてしまうから、会社立て直しのための資金も残っていません。
多くの会社は、相談にこられるタイミングが遅いです。

 

(28)売掛金を担保にできないか?

売上が一定である場合、売掛金も常に一定(多少の上下はあっても)であるのが通常です。そのため、一定して企業に存在する売掛金は、担保の一つとして考えやすいです。
例えばいつも売掛金が5,000万円ある企業の場合、売掛金の内容を全て精査して、2,500万円を担保評価とする、というように、実務では行われます。

ただ、売掛金といっても、いろいろなタイプの売掛金があります。
そのタイプによって、担保として見やすい売掛金と、そうでない売掛金とに分かれます。

1.継続的な得意先に対するものかどうか
毎月継続的に売上が発生する得意先に対する売掛金は、常に一定して売掛金が存在することになるため、安定した担保として、担保価値を見やすいです。一方、単発で売上が発生した得意先に対する売掛金は、売掛金は一定して存在するということにはならないため、担保として見にくくなります。
2.債権譲渡禁止特約を結んでいるかどうか
取引契約書等を交わし、その中で債権譲渡禁止特約、つまり売掛金は第三者に譲渡しないものとする、という特約が結ばれている得意先に対する売掛金は、担保とすることはできません。そのような特約が結ばれていないか、そもそも得意先と取引契約書をわざわざ交わしていないのであれば、その得意先に対する売掛金は担保として見やすくなります。
3.売掛先の業況はどうか
そもそも、業況が芳しくない得意先に対しての売掛金は、その得意先が倒産して回収できなくなってしまう可能性が高いので、担保として見にくいです。

売掛金を担保とした融資を検討する場合は、その売掛金の担保価値を、以上のように見ていきます。

「売掛金を担保とすると、その売掛先に、売掛金を担保とした事実が知られ、信用不安が起こってしまうのではないか。」とよく質問があります。

売掛金を担保にするためには以下3つのいずれかを行わなければなりません。
1.「通知」売掛先に対し、売掛金を担保にしたことを通知する。
2.「承諾」売掛先から、売掛金を担保にしたことについて承諾をもらう。
3.「登記」売掛金を担保にしたことを、商業登記簿(売掛金を担保にして融資を受けた企業の登記簿)に登記する。

1.2の方法は、当然、売掛先に対し、売掛金を担保とした事実が知られてしまうことになります。
しかし3の方法は、あくまで融資を受けた企業内でのことなので、売掛先に対し、売掛金を担保とした事実が知られてしまうことはなくなります。
そのため、この方法を使えば、売掛先に知られることなく、売掛金を担保にして融資を受けることができます。

そうすると、次のような不安も経営者は感じてしまうことでしょう。
「商業登記簿を銀行や取引先に提出する機会は多く、売掛金を担保にしていることが見られると、銀行や取引先から警戒されないか。」 売掛金を担保にしたことは、商業登記簿の、別紙に記録されます。
そのため、その別紙を提出しなければ、よいことになります。

ただ、実務的な話をしますと、信用保証協会の保証を付けた売掛債権担保融資でなく今まで述べたような?「5,000万円の一定した売掛金総額に対して2,500万円の担保価値を見てその金額を融資する。」という方法ではなく、「1本の売掛金が発生し、それを担保として融資を受け、その売掛金が回収となったらその回収金を返済にあてる。」という方法がとられ、まとめていくらの融資を受けるという形ではないため、使い勝手はよくないかもしれません。

そのため、私たちが、売掛金を担保とした資金調達の相談を受ける場合、ノンバンク、その中でも売掛債権担保融資を専門的に行っているところを、紹介し、多くの金額がスムーズに受けられるように、アドバイスしています。

そういう危機的状況の会社は、リスケジュールで一気に資金の流出を減らし、売掛債権担保融資で一気に資金を確保し、それを会社再生資金として、そこから再生に向けスタートしなければ、数ヵ月後、破綻してしまうことが目に見えてしまいます。
そのあたりの判断は、経営者として難しいところだと思います。
顧問税理士や、われわれのような資金繰り専門コンサルタント会社などに相談するのも一つの手です。

 

財務ノウハウ(6)

(1)銀行が嫌う業種

銀行が融資審査を行う時に、その企業がどのような事業を行っているかは融資審査において重要なことの一つです。以下の事業を行っている企業は、銀行は嫌って、融資を出すことはなかなかないでしょう。

・風俗
・クラブ・スナック(女性が横について接客するもの)
・MLM(マルチレベルマーケティング)
・貸金業
他にもいろいろありますが、世間的に見て、どうしても偏見で見てしまう事業、といったら分かりやすいでしょう。

また気をつけていただきたいのは、このような事業を、主体で行っていなくても、事業の一つとして行っている企業は、どうしても銀行はマイナスで考えてしまいがちになってしまうことです。

このような事業をどうしても行いたいのであれば、別会社で行い、役員や株主にも念のため、入らない方がよいでしょう。

極端なことをいうと、そのような事業を行っていることは銀行に分からないようにしておくのも、一つの手として考えられなくもありません。

 

(2)メイン銀行、サブ銀行・・・と、どうバランスをとっていくべきか

メイン銀行の定義はあってないようなもので難しいですが、融資金額が一番多い銀行、不動産担保を一番多く入れている銀行、売上入金が一番多い銀行、支払手形を切っている銀行等、総合的に考えてメイン銀行を判断します。
しかし取引が入り組んでいる企業であれば、メイン銀行の判断が難しい場合も多いでしょう。
そもそもメイン銀行が最後は絶対助けてくれるということがなくなった現在、わざわざメイン銀行を決めるのも意味がないような気がします。

融資のメニューの中で、一番ハードルが高いのが当座貸越です。なぜなら当座貸越は融資の極度を決めてそれ以内ならいつでも借りたり返したり自由だから、融資の返済期限が決められている証書貸付や手形貸付よりも銀行にとってはリスクが大きいからです。よほどの優良企業でないかぎり、当座貸越の極度が設定されるためには不動産などの担保を入れる必要があります。(極度額が少ないカードローン型の当座貸越は別ですが。)
そのため、当座貸越の極度を設定している銀行は、メイン銀行と考えやすいです。他は、銀行ごとのトータルでの融資総額の大きさによりますね。
私募債は、まとまった大きい金額の資金調達の手段ですが、都市銀行が中心にやっており、私募債があるという理由だけでメイン銀行であるとは考えにくいです。

また、プロパー融資を行っている銀行はメイン銀行として考えやすいです。
よく、プロパー融資と信用保証協会付融資を受ける銀行を分けている企業を見かけますが、プロパー融資を積極的に行ってくれる銀行にはできるだけ多く、信用保証協会保証付融資を集める方がよいでしょう。信用保証協会保証付融資は銀行にとってリスクが少なく、プロパー融資を行う銀行と信用保証協会保証付融資を行う銀行を分けることはバランスが悪くなってしまうからです。

 

(3)一括返済の融資が返済できない場合どうするか

私の会社にかかってくる資金繰り相談電話の中で、多くあるご相談が、「銀行に6月10日に、手形借入で借りていた1千万円の一括返済の期限がくるが、返済資金がない」というように、一括返済の融資が返済できない、というパターンです。

この場合、どうしたらよいでしょうか。

  • ×良くない方法の一つは、銀行へ融資を返済するために、高金利でマチ金などからお金を引っ張ったり、友人・親戚などからお金を借りたりすることです。

  • ×銀行にお金を返せないより、マチ金や友人・親戚などへお金を返せない方が、やっかいです。マチ金の取立ては銀行よりずっと厳しいし、もしくは友人・親戚との人間関係をこわしてしまうことになってしまうからです。

  • この場合、とるべき方法は、銀行に、本来なら一括返済するものを、分割返済にしてもらうよう交渉することです。
    しかし気をつけなければならないのは、その分割返済額をどうするか、です。

    例えば、1千万円を6ヶ月、毎月160万円ずつ返済すると銀行に簡単に約束してしまうと、それだけ返済して資金繰りがまわるのならよいのですが、そうできるだけの資金繰りではないから、一括返済ができなかったのです。
    会社が存続可能な余裕のある返済額に交渉しましょう!

 

(4)毎月返済500万円→毎月150万円、で払っていけるのか

  • ・銀行から融資を受けたら、その返済は、キャッシュフローで行っていきます。
  • ・キャッシュフローの計算方法ですが、正確に計算するのは大変なので、ざっとしたキャッシュフローを見るために、以下の計算式で簡易的に 計算することができます。

キャッシュフロー=当期利益+減価償却費

■なぜリスケジュールを行っても、資金繰りがまわらない企業が多いのか。


  • ■キャッシュフローを意識してリスケジュール交渉を行っていない。
  • ■現状の会社のキャッシュフローがいくらであり、そのキャッシュフロー内で返済を行うには返済金額をいくらまで抑えるべきか。
    それを意識したリスケジュール交渉を行っていないから、中途半端なリスケジュールを行って、資金繰りがまわらなくなってしまうのです。

 

(5)ハシゴを外される・・・

融資が全く受けられなかったり、受けられても年間で10百万円や20百万円で、50百万円に届かなかったり、と。こういった場合、リスケジュール、つまり返済減額交渉、を行うしかありません。

ただ、なぜこのように、いきなりハシゴを外される、つまりいきなり融資を受けられなくなるのでしょうか。原因は、次のようなものがあります。

  • ・損益で赤字を出した。
  • ・赤字を出して債務超過(貸借対照表の純資産がマイナス)となった。
  • ・黒字であるものの、売上が増えていないのに売掛金や在庫が大きく増え、銀行にとってあやしい動き(粉飾決算?)と見えた。
  • ・前期決算に比べて、売上が増えていない、設備投資も大きくしていないのに借入が大きく増えた。(借入が赤字補てんにまわった?)
  • ・代表者や関係会社への貸付金が大きく増えた。(銀行融資が転貸された?)
  • ・銀行の融資審査がいきなり厳しくなった。
    (最近、三井住友銀行や三菱東京UFJ銀行はビジネスローンの審査を厳しくしています。りそな銀行・みずほ銀行はビジネスローンの取扱いをやめました。信用保証協会保証付融資は、責任共有制度開始で銀行のリスクが増えており、審査が厳しくなっています。)

など、いろいろな理由が考えられます。

~いきなり融資が受けられなくなることを防ぐためには~

■きちんと経営を行う
■余計な節税をせず利益をきちんと上げる
■借入した資金を代表者へ流用しない
■余計な別会社を作って資金を流出させない
■経営者としてあたりまえのことをあたりまえに行う。

そういった経営努力を行わないと、銀行からいきなりハシゴを外されることになります。
まだ融資が受けられているからと、安心しては絶対になりません。

 

(6)ただ担保を差し出すな!

あなたの会社に、担保となっていない不動産がある場合、銀行から、その不動産を担保に入れてほしいという話をされることは多いのではないでしょうか。 しかし、その不動産をやすやすと担保に差し出してはなりません。

あなたの会社と銀行とは、あくまでビジネスの関係、対等な関係です。 担保を入れるなら、その見返りはあるべきです。

その場合、新たな担保を差し出す条件として、新たなプロパー融資を出してくれるなら、としてみてはどうでしょうか。 また融資の金額は、その不動産の時価と同額程度ぐらい、交渉してみるべきです。

ただこの場合、気をつけなければならないのは、その1億円の融資をA銀行は出してくれるにしても、短期の一括返済や、半年・1年分割返済など、短期で完済してしまう条件で融資を受けないことです。

銀行が、短期の一括返済や、半年・1年分割返済の条件で融資を出す、と言っている場合、銀行は、早期に完済させ折り返し融資は出さず、結果、もともとの融資総額2億円の保全を図れた、という状況を目指しています。

また1つの銀行に担保を差し出す際、気をつけなければならないのは、他行の目、です。 メイン銀行であるA銀行に新たな担保を差し出すのなら、まだ説明はつくでしょう。 しかし、例えばC銀行に担保を差し出すと、当然、A・B・D各銀行は、不公平感を抱いてしまい、今後の融資取引に支障が出てしまいます。

新たな担保を差し出すのなら、やはり理由付けは必要です。

 

(7)プライムレートの意味

(Q)
(旧)長期プライムレートと新長期プライムレート、短期プライムレートのそれぞれの意味を教えてください

(A)
・(旧)長期プライムレート
長期信用銀行や信託銀行の、信用度の高い一流企業に対する「長期(1年超)」の「最優遇貸出レート」のことです。
金利は、各行が独自に決めることになるのですが、みずほコーポレート銀行が発行する「みずほコーポレート銀行債券(5年物利付金融債)の表面利率に0.9%上乗せした金利に設定されるのが一般的です。
・新長期プライムレート
「短期プライムレート」に一定水準を上乗せした「レート」で、「短期プライムレート」の変動にともない変動します。これは、短期金利が長期金利を上回ると、短期の調達手段しか持たない都市銀行などの一般銀行が長期の貸出をした場合、調達するコストの方が高くなり、収益を圧迫することになるため、短プラに連動する長期金利新長期プライムレートが設定されました。例えば新長プラは、期間3年以内で短プラ+0.3%というように、各銀行ごとに決められます。
・短期プライムレート
短期プライムレート(短プラ)は、都銀など一般銀行の、信用度の高い一流企業に対する「短期(1年以内)」の「最優遇貸出レート」です。
このレートは、各銀行ごとに、調達コストをベースに金利動向や利益などを勘案し決められています。

 

(8)担保を外したい

(Q)
600坪の工場を移転して高令者用賃貸住宅を建てたいのですが、日本政策金融公庫の担保になっています。
是非ともはずしたいのですがどうすればはずしてもらえますか600坪の土地に住宅金融支援機構から融資を頼みたいのですが、日本政策金融公庫の担保をはずして住宅金融支援機構に担保を付けなければなりません

(A)
日本政策金融公庫に、残りの融資を全額返すことができれば当然よいのですが、それが難しいから相談されていると思います。
その土地を、日本政策金融公庫が担保価値をいくらで評価しているかがカギとなります。その評価額を推定し、金額を決めて日本政策金融公庫に相談します。その金額を支払うから、全額返済はできないが担保は外してほしい、と交渉します。そうすると、日本政策金融公庫も交渉してきて、返済する金額がいくらで妥結できるか、前に進みます。そして日本政策金融公庫と妥結したら、その金額を返済して担保を外してもらいます。
ただこの場合も、その金額は用意しなければならないことになります。ただでは担保を外してもらえません。

 

(9)ベンチャー企業の資金調達

(Q)
ベンチャー企業の間接調達についてご相談は可能ですか?
現状、借り入れは無いのですが開発、広告等で出費がかさみ、ビジネスモデルで日本政策金融公庫に話したところNGでした。
そこで経費を切り下げ今年度中には単月黒目的でチャレンジをしぼっていますが、いざ貸せないとなっては事業継続ができないので早めの措置を考えて行動しています。

(A)
創業してまだ若い会社、売上が少ない会社は、基本的に融資は
 ・信用保証協会保証付融資
 ・日本政策金融公庫
この2つで融資を受けることになります。
これらの機関から融資を受けやすくする方法は、黒字になる事業計画を作ることです。
ビジネスモデルの説明だけでは不足で、メイン資料は、今後3年ぐらいの損益計画(月次計画)で、それに付随してビジネスモデルなど、どのようにその数字を上げていくか、というものにしないと、相手は積極的になってくれません。

 

(10)定期預金を解約できるか?

融資を受けている銀行において、企業としては定期預金は作らないのが原則です。

ただ融資をしている銀行としては、保全の一つ、つまり返済ができなくなった時にすぐに相殺できるように、定期預金を作ってくれ、と言ってきます。
そうやってやむを得ず、定期預金を作ることも多いでしょう。

融資を受けている銀行においての定期預金は、次の2つの形があります。
・担保としてとられている定期預金
  • ■定期預金を担保とするには、質権設定契約書を交わし、定期預金の通帳や証書を銀行に差し出します。
  • ■定期預金は、担保としているのであれば、融資が返済されないかぎり解約することはできません。
・フリー定期預金
  • ■フリー定期預金は担保となっていないため、企業側の意向で、解約することができます。
    しかし、そのような定期預金を解約しようと思って銀行の窓口に行っても、後ろから預金係の役席行員が出てきて、解約したい理由を尋ねられ、解約を引き止められるケースが多いでしょう。
    理由はもちろん、融資先企業が融資返済できなくなった時のための保全を確保しておくためです。
  • ■しかし、フリー定期預金の解約はあくまで、預金者の自由です。フリー定期預金を解約しようとして銀行の引止めに合ったら、一度であきらめず粘り強く交渉して下さい。

いっとき、現金預金が豊富で定期預金を作りたいと思っても、それは融資を受けていない銀行にて行うべきです。いつでも解約しやすいような体制を心がけるべきです。

 

(11)別会社での新規融資

(Q)
先代から業務内容を変更し引き継いだ会社を経営しておりました。
会社ではすでにリスケ状態だったところに私が代表に就任、去年の10月に1800万円あった借金のうち保証協会分1000万円を返済、その後支払いを通常払いに回復し保証協会分残債60万円、政策公庫600万円という状態までもって来ました。
銀行にも政策公庫にも先代(現在故人、義母所有)の不動産が根抵当に入っている状態です。
先代の残した借金の支払いに追われ、新規融資がおりず、会社の経営が好転しない状態を打開するべく、新たな環境で心機一転頑張るために新しい会社を2月に起業しましたが政策公庫から融資を受けられますか?

(A)
信用保証協会保証付融資、日本政策金融公庫からの融資の返済が、リスケジュール状態から脱し、通常の状況に戻っているようですから、リスケジュールの状態がネックになることはなく、この会社でも、新しい会社でも、融資は可能でしょうね。
ただこの場合、信用保証協会や政策公庫での融資制度である創業融資は、使えません。ただ別会社を作っただけであり、創業とは言えないからです。
そのため通常の融資を考えることになるのですが、新会社の業績、それともともとの会社の業績を見られての審査になるでしょうね。

 

(12)民事再生後の資金調達

私たちが、厳しい状況の中小企業経営者からご相談を受ける中で、たまに「民事再生を行えば再生できるんだ。」と考えていらっしゃる経営者がいます。

実際中小企業が民事再生法を使って再生を果たすことは、困難なことが多いです。

  • ■民事再生法申請を行うと、銀行等金融機関や仕入先等取引先に、債務をカットしてもらうことになります。
    そうすると、債務をカットされた金融機関からは今後の借入れが困難、というより不可能になりますし、債務をカットされた取引先からは今後の取引拒否、もしくは取引拒否されなくても、現金支払いを要求されることになります。

そうなると、民事再生法を申請する企業においては、必要なものは「資金」となります。

民事再生法を申請したからといって、資金の不安から一気に開放されるわけではないのです。民事再生法を申請した企業こそ、その後の資金繰りをどう行っていくか、考えていかなければなりません。そこで、次の2つの手が考えられます。


  • ・スポンサーをあらかじめ探しておくか、民事再生法申請を行った後にスポンサー探しに動き、資金を支援してもらう。
スポンサー候補となる企業も、ビジネスでやっているのですから、当然、民事再生を行おうとする企業を傘下におさめることのメリットがないといけません。 民事再生を行おうとする企業が、事業自体は利益が出ていたり、魅力的な顧客を抱えていたり、魅力的な技術力があったりと、メリットがなければ、なかなかスポンサーはつきません。 そのため、民事再生が頭にある経営者は、まずは自社が、外から見て魅力的と言えるかどうか、考えてみなければなりません。
  • ・民事再生法を申請した企業向けの融資を受けられないか検討する。
日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫・中小企業金融公庫等)の「事業再生支援資金」「企業再建・事業承継支援資金」、商工組合中央金庫の「事業再生支援貸付」、信用保証協会の「再建企業向融資」など、政府系金融機関が、民事再生企業向けの融資制度を用意しております。
しかし融資制度があるといっても、現実的に審査が通るのはなかなか困難です。

私たちが、厳しい状況の中小企業経営者にいつも伝えているのは、破産や民事再生などの法的整理を行う前に、再生に向けてやれることはいっぱいある、ということです。

「民事再生」という言葉が一人歩きし、どんな企業でも民事再生法によって再生できるんだ、という誤解を持っている経営者は多いのですが、民事再生の現実をよく考えてみてください。

 

(13)まとめての借換え?

  • ★毎月の返済金額を、借換えによって減額することができます。しかし、借換えを行うにしても同じ銀行内で行うべきです。

例えば、A銀行の1.5億円の借入の明細が(ここではプロパー融資か保証協会保証付融資かは考えないこととします。)
9,000万円 残り返済回数30回 毎月300万円返済
4,000万円 残り返済回数20回 毎月200万円返済
2,000万円 残り返済回数10回 毎月200万円返済
合計、毎月700万を返済しています。

これを、3,000万円上乗せして1.8億円で全部を借換えし、返済回数を60回とすると、毎月返済金額は300万円となり、借換えの効果が出ます。
(この場合、条件変更とみなされ格付が下がる可能性もありますので、そうならないようあらかじめ銀行と話合っておきます。)

このように、借換えは同じ銀行内で行うべきです。なぜなら、借換えにより別の銀行の融資を返済すると、その別の銀行としては、恥になり、おもしろくないからです。
銀行に、企業がケンカを売ることになり、その銀行との関係が悪化します。

また、融資を受ける銀行は、できるだけ多くすることが基本です。
理由は、
 ・1つの銀行が1社に対して融資できる量は、リスク分散の観点から限りがある。
 ・1つの銀行だけだとその銀行が融資を渋った時に打つ手がなくなる。

 

(14)日本政策金融公庫・民間銀行・信用保証協会間の情報のやりとり

(Q)

当方アパレル関係の小売りで開業21年目の個人事業主です。
ただいま地元信用金庫(1社)で4口(1口はプロパー、3口は保証協会付き)と日本政策金融公庫で2口の借入があります。
3年ほど前までは業績もそこそこで両庫とも融資依頼を断られたことが無く、お願いする度に何らかの形で融資を実行してくれましたが、同業の身内(経営は全く別)の倒産もあり、信金はH18年3月を最後に再三の融資依頼にもかかわらず、融資を出してくれなくなりました。

その倒産による保証人債務(約300万)をかぶってしまい、貯蓄や保険を取り崩したり、妻の親に無心をしたり、幸いなことに長年取引のあるメーカーの協力(仕入掛率のダウンや売れ残り品の引き取り、買掛金支払いの延長など)で何とかやってきました。
インターネット販売をH18年より開始し、実店舗での来店客数・売上減少にも関わらす、昨年はトータルで開業以来最高の売上高を出し、融資を断り続けられた信用金庫も2年半ぶりの今年8月に市の小口資金で500万(保証協会付き)を実行してくれました。
しかし、その資金も現在は、返済や買掛金の決済・新たな仕入用運転資金であっという間に底をついてしまいました。
そこで毎月の返済額があまり変わらない日本政策金融公庫で借入(借換え)をしたいのですが・・・・・

H19年度は申告書も以前より改善され、H18年8月の融資分と、あと4ヶ月ほどで返済完了する計2口の融資残の合計もMAX時の半分以下となりました。
ただし、昨年の10月と今年の1月の2回、前回の融資実行から間もないことと、信金を含めた借入残が多いとのことで、融資依頼を断られた経緯があります。
この夏の信金での融資と時期が近いため、その融資を受けたことが日本政策金融公庫でのマイナス材料にならないのかが不安です。
日本政策金融公庫と他の一般銀行や信用保証協会の情報のやりとりはあるのでしょうか?

(A)

日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫・旧中小企業金融公庫など)と、民間の銀行や信用金庫、信用保証協会間では、

日本政策金融公庫―民間の銀行や信用金庫→情報のやりとりなし

日本政策金融公庫―信用保証協会→情報のやりとりなし  

民間の銀行や信用金庫―信用保証協会→オンラインの情報のやりとりはないが、民間の銀行や信用金庫は、信用保証協会に対し、どこの銀行でどれだけの保証を行っているか照会をよく行っているとなります。
信用金庫で融資を受けたことは、直接は日本政策金融公庫では分かりません。

しかし日本政策金融公庫はおそらく御社の銀行通帳等の提出を要求してくるので、それで分かってしまう可能性があります。もしくは日本政策金融公庫に提出する御社の借入一覧や試算表などでも借入事実を知られてしまう可能性があります。
また、御社は手元預金を潤沢にしていく必要があります。あなたは、「借換え」を考えているようですが、新たな融資が受けられ、それと合わせ既存の融資を返済しないですむのなら、それにこしたことはありません。
第一に、手元の預金を増やすことを心がけてください。

 

(15)親族のしがらみ

中小企業の中には、親子・兄弟・親戚など、親族が多く関わっているところも多いかと思います。
親族で固めた経営のメリットは、会社の目標に一丸となりやすいところでしょうか。
ただ、デメリットも多いのが同族経営です。

同族の役員や社員などは、なかなか辞めてもらうことが、できません。
仕事をしっかりやってくれてるとは言えないが、親族であるから、しがらみがあって、会社が危機的状態になっているのに、辞めてもらうこともできない、そのようなケースは多くあります。

対策
  • ◎会社に関わる親族を集めて、親族会議を行うのも手です。
    会社の窮境を打ち明け、どうやって会社の立て直しを図っていくか、経営者だけでなく親族間で問題を共有することにより、親族も協力的になってくれることが期待できます。
    今まで仕事にやる気がなかった親族社員が、やる気を出してくれるかもしれません。
    親族会議では、会社の立て直しのために、経営者以下、体制を固め、一丸となって会社再生に進んでいくことを確認します。
  • ◎このままでは会社が倒れてしまうことを訴え、赤字の黒字化のためには人をスリム化することが必要であることを訴え、協力してもらいます。
    後に遺恨を残さないのは無理がありますが、何も話し合いしないで一方的に辞めてもらうより、じっくり話し合った上での方が、その後すっきりすることでしょう。

注意!
同族企業の経営者の方、やりにくさはよく分かります。しかし、危機的状況だからこそ、会社存続のため、経営者としてのリーダーシップ、それと決断力が求められるのです。

 

(16)旧債振替

■旧債振替という用語は、銀行から融資を受けている会社の経営者でしたら、覚えておきたい用語です。

旧債振替とは
信用保証協会保証付融資(以下保証付融資といいます)で受けた資金を、その銀行の既存の融資の返済にあてること、を言います。

 

新規の保証付融資で既存の保証付融資を返済(つまり借換え)することは、企業・銀行・信用保証協会での事前の打合せの上、よくあるケースなのですが、新規の保証付融資で既存のプロパー融資(ビジネスローンもプロパー融資の一つです。)を返済するのは、後々大きな問題となり、信用保証協会は銀行に代位弁済することを拒否するのです。 なお、同じ銀行のプロパー融資を返済してはだめですが、別の銀行のプロパー融資を返済するのは、旧債振替とはなりません。

【旧債振替の例】

  • ・保証付融資を受け、その資金で分割返済のプロパー融資をまとめて返済した。
  • ・保証付融資を受け、その資金で一括返済のプロパー融資を返済した。
  • ・保証付融資を受け、その資金で、手形割引を以前行って不渡りになり銀行から買い戻し請求されている手形を買い戻した。

【今回の緊急保証制度で保証がおりやすくなった今、心配していることがあります】

  • ・企業にとっては、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくことになり、保証付融資の枠が少なくなり、不利になるのです。銀行は逆に、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくので貸倒れリスクが少なくなり有利になります。
  • ・保証付融資は、プロパー融資より審査が通りやすいので、なるべくプロパー融資を優先させて、保証付融資の枠は後々のためにとっておくのが、銀行つきあいのセオリーです。
  • ・相談にこられる会社にも、旧債振替ギリギリとなっているケースが見受けられます。
    そのような事実があるのであれば、そこを銀行に対する交渉のカードとして企業側が使えるのかもしれません。

 

(17)消費者金融4社より300万円借り入れがあります。保証協会の審査は通りますか?

(A)
信用保証協会は個人信用情報は見ないので(見れる状態にはあるが見ない)個人で消費者金融を借りているということは分からないでしょう。(絶対ではないですが)。
消費者金融のことは気にせず、信用保証協会保証付融資を申し込んでみてはいかがでしょうか。

 

(18)保証協会に代位弁済してもらった場合、借り手側の有利になる事と不利になる事を教えて下さい。

(A)

信用保証協会に代位弁済(代弁)されるとは、信用保証協会保証付融資が、延滞になってリスケジュール交渉を行わずそのままほっておくと、保証協会が企業の代わりに全額返済(代位弁済)して、債権者が銀行から保証協会に移ることを言います。
代位弁済を行うと、有利になることは、リスケジュールの段階に比べ支払いが楽になることです。
リスケジュールの段階では減額した後の元金返済金額に加え、利息は全額支払わなければならないですし、また保証料も、融資残高が残っている分、支払っていくことになります。

一方代位弁済後は、元金と利息を合わせた額をベースに、いくらずつ保証協会に返済していくかを決めるので、支払いは一気に少なくなります。
代位弁済を行うデメリットは、その保証協会での残高が残っているうちは保証協会から新たな保証が受けられないこと、代位弁済した銀行においては今後融資を受けることができないこと、また不動産担保を入れていれば競売に移行することが通常であること、保証人に取り立てがいくこと、となります。そのため、守りたい不動産であればそれを守る対策、また保証人の資産状況を見た上での守り固めを早いうちに行っていく必要があります。

 

(19)信用保証協会保証付融資の流れ

協会付融資の流れのイメージは1.~8.になります。

1.融資を受けたい企業から、協会融資の申込みがなされます。
  • 2.担当行員が借入申込書を作成して、「渉外担当⇒渉外役席⇒融資担当⇒融資役席⇒支店長」と借入申込書が回覧されて支店内決済がなされます。(所要日数イメージは3日程度)
  • 3.支店内決済で本案件の取扱いを認める場合は渉外担当行員が取引先に支店内決済が下りた旨を伝えて、協会の申込用紙に署名捺印をいただきます。
    書類を預かってから金融機関の所見に取引先の取引状況や業況などを記入し、職印(銀行の支店長印)を押印して協会に書類を送付します。(所要日数イメージ3日程度)
  • 4.協会に書類が届き保証課の担当者が審査に入ります。事前審査として申込人の協会利用残高・既保証返済状況を確認します。仮に、今回の申込金額+既保証残高の合計が保証限度額超過の場合や直近1年間において月超え延滞が定期的に発生したり、保証申し込み時点で延滞がある場合は保証限度額内での再申込みや延滞解消をしない限り審査はしてくれません。
    次は申込み案件の本審査に入りますが、申込金額が企業規模に合っているのか、お金の使い道の妥当性があるのか、直近の決算状況・決算から3ヶ月を超えている場合は試算表を精査して申込人の返済可能性を判断します。また、許認可対象業種の場合は許認可取得の有無や有効期限を必ず確認します。
    以上の内容を総合的に判断して問題ないと判断した場合は上司の保証課長に申請を上げて決裁がなされます。 (所要日数イメージは一概には言えませんが、2~3週間程度が一般的と言われております。)
5.保証決定のお知らせについては原則、申込銀行に保証書を送付します。(所要日数イメージは3~5日程度)
  • 6.保証書が申込銀行に到着してから融資係が銀行本部に融資の稟議書を作成します。(所要日数イメージは3日程度)
7.本部の審査部が稟議書の審査をします。(所要日数イメージは2日程度)
8.本部稟議が可になって融資実行になります。(所要日数イメージは2日程度)

この一連の流れを見ていただいても分かるように、協会をからませた融資の場合は通常のプロパー融資と比較しても3.~5.の部分の工程が必要になりますので、2~3週間程度の時間が余分にかかってしまいます。

このように融資実行までにどうしても時間を必要としてしまう協会付融資ですが、4.の時間を短くする方法がないわけではありません。


■信用保証協会に行ってみよう
  • ・まずは保証協会に定期的に訪問するように心掛けて下さい。
  • ・銀行員は融資先企業のことを全て理解している訳ではありません。
  • ・その中で銀行員が、融資先企業のポイントを協会に上手く伝えることができなくて、保証協会から保証が得られなかったことをよく聞きます。
  • ・ですからこのようなことがないように、年に1回は決算書ができ上がった段階で、必ず訪問をするように心掛けて下さい。

定期的に保証協会に訪問して、自社の内容を直に伝えておき融資申込みをしていれば、協会の担当者も濃い情報収集ができるようになりますので、審査スピードが速くなる場合があるのです。

(Q)
私は東京都内で内装工事業を営んでおります。
年商は1億6千万円程度で、現在借入れ残高として信金に1,900万円と日本政策金融公庫に300万円程があります。
返済は何とかこなしてきましたが 取引先の倒産や赤字物件の工事や未払い金が増え、下請け業者への支払いの遅れが出てきました。
そんな中、税務署から5年前の申告漏れを指摘され 重加算税を含め700万円程度納めろと言ってきました。
納付計画書も作成しましたが、毎月の納付金額が少なすぎると、受付けてくれません。
銀行から借入れて納めようと思いがんばってますが税金の未納部分で信用保証協会からOKの返事が取れません。

(A)
税金の未納があれば、信用保証協会の融資審査に引っかかってしまいます。
この場合、700万円をどこかから調達して税金の未納部分をなくし、保証付融資を借りる、しかありません。
もしくは税務署との交渉においては、月30~40万円程度は、納付金額がほしいところですし、それを認めさせるにも経営計画により税務署を納得させられる納付計画書にしたいところです。
それにしても、年商1億6千万円ですから、借入総額は5,6千万円ぐらいあっても普通です。それが現在、2,200万円しかない、一方でいろいろな方面で未払いがある、ということは、あなたの会社の資金繰り対策がうまくなされていない、ということが想像されます。 借入はもっと可能であったにも関わらず、起こすべき借入れをせず、そして資金繰りが厳しい。
ここは、財務管理体制の整備を考えるべきだと思います。
今回の件をきっかけに、今一度、自社の財務管理体制を見直してみてください

 

・大都市に進出している地方銀行をねらう

地方銀行の東京支店、大阪支店など、大都市に進出している支店は、その銀行で融資量を稼ぐ役割を担っている支店、という位置づけである場合が多いです。

例えば四国地方の銀行は、大阪に支店を多く出しています。
なぜなら、地元の四国では融資を出すところが少なく、大阪に出ていって大阪の企業で一定の売上規模の企業に融資を出すことにより、融資量を稼いでいます。
融資量が大きくなると、利息収入が多くなります。つまり融資量を稼ぐことによって、銀行の一番の収益源、利息収入を稼ぐことができるのです。

例えば、愛媛県の銀行の大阪支店があるとします。

・愛媛県に工場がある大阪本社の会社
・社長が愛媛県出身である大阪本社の会社
・愛媛県の会社と大きな取引のある大阪本社の会社

などが、その愛媛県の銀行の大阪支店と取引しやすいのです。

あなたの会社が東京・大阪など、大都市にあるのであれば、このようなつながりを考えて、地方銀行で進出してきている支店との取引をねらってもよいでしょう。

その支店としても、地元とつながりのある企業であれば、そうでない企業より、取引開始の言い分を、本部に伝えやすいのです。

 

・返済の延滞をするとどうなる?

銀行から融資を受けている中小企業の経営者であれば、誰でも不安に思うことは、融資の返済を延滞するとどうなるか?ということではないでしょうか。
これをお話するに、まずみなさんに、知っておいていただきたい用語があります。

それは期限の利益
期限の利益とは、例えば3,000万円の融資を5年(60か月)分割返済の条件で受けるとします。
返済の側面から見てみると、この融資を受けても、1日後すぐに全部返済しなさい、ということにはならないですよね。
60か月、月に割って50万円ずつ、返済してもらえばよいですよ、ということになります。
これを、債務者から見て1か月ごとの各期限(=約定返済日)まで銀行は返済を待ってくれて、すぐに全部返せ、とは言ってこないということなので、期限の利益、とよびます。

 

返済を1日でも延滞すれば、「金銭消費貸借契約書」には期限の利益を喪失する、と書いてあります。ということは、残り全部の金額をすぐに支払いなさい、ということになります。それができなければ、競売、差押え、など次の手がうたれる、ということになります。

しかし実務上は、1日延滞しただけで銀行がすぐに手をうってくることはまずないです。

  • ①また延滞して、ケースバイケースですが3か月程度ほったらかしにしておくと、銀行から催告書といって、融資の返済を促す通知を送ってきます。
  • ②また信用保証協会保証付融資においては、原則90日延滞すれば、一定の冷却期間をおいたうえで銀行は信用保証協会に代位弁済を請求することが可能となります。早いと延滞後6か月程度で代位弁済されます。そうなるとその後は企業と信用保証協会との交渉となります。
  • ③ただ、そのような状態になっても、銀行と交渉してリスケジュール、つまり毎月の返済金額を減額する交渉を行って同意をもらえば、延滞状況が解消され、銀行の同意を得た返済金額の減額状況となり、銀行は矛先を収めてくれます。

必要なのは、何よりも銀行と向き合うことです!

銀行に、なぜ業況が悪くなって返済できなくなったのか、今後どうやって改善を行って利益体質を作って返済を再開できるようにするのか、それを書面で分かるようにして説明し、リスケジュールの応諾をもらえるように交渉します。

 

・社会保険の分割納付交渉

(Q)
弊社は数年前に社会保険を滞納しておりました。
いろいろと催促をされまして、今は毎月銀行引き落としになっておりますので、毎月きちんと納めております。
また滞納分も毎月10万円ずつ返済しており、残り500万円弱になっております。(当時は1,000万円弱ありました)
この滞納に、遅延金が発生しておりまして、現在800万円程になっております。
金利も14%程と非常に高く 払う気にもなりませんし、払える額でもありません返済計画書を提出するようにと、書類が届きました。
やはり支払わなければならないのでしょうか?なんとか安くすることはできないのでしょうか?

(A)
社会保険料の遅延金を安くすることはできません。
少しずつでも、払っていかざるをえません。
どのように分割するか(弊社の事例では20回以上分割にできたこともあります)、返済計画書、それとそれを補完する事業計画書と資金繰り表も資料として作成し、年金事務所に相談してください。

 

・代表者への貸付金

(Q)
資本金5,000万円・年商2億円の株式会社です。
銀行借入以外に、個人的な知り合いや、ノンバンク等からも多額の借入をしています。
しかし、決算書に記載すべき内容ではないと考え、代表者勘定で処理をしています。
しかし、返済時、利息が高額になり、代表者に対する貸付が多く残った形になります。
銀行融資に際し、代表者勘定の内容を問われた際に、上記の理由を説明すれば、納得するものでしょうか。
また、代表者への貸付は、どの程度の金額までなら決算書上、マイナスに作用せずに済むでしょうか。
代表者への貸付を清算するためには、代表者から現金を入れてもらうほかにどのような方法がありますでしょうか

(A)
知人やノンバンクから借入があり、その利息負担を会社でもった場合、代表者に対しての貸付金が多く発生していることでしょう。
このような理由を銀行に説明はしないでください。代表者が知人やノンバンクから多くの借入が多くあることが分かってしまい、銀行の目が厳しくなるだけです。
また代表者への貸付金の程度ですが、少ないに越したことはありません。
代表者への貸付金は不良資産として見られるのが普通なので、その貸付金を純資産から減らしてみてその結果純資産がマイナスとなれば、実質債務超過と見られるので、融資審査において大きな不利となります。
代表者への貸付金を清算するには、「貸付金清算プラン」といった、生命保険を使った方法を使うことが多いです。

 

・私募債について

私募債のメリット
  • ・償還が一括償還もしくは6カ月ごとなどの条件のため、資金繰りが楽になる。
  • ・私募債が受けられる企業は財務内容が一定の条件を満たしている企業であり、信用力のある企業という証明になる。
  • ・資金調達手段の一つである社債のノウハウを得られる。
デメリット ・償還時にまとまった金額が必要となるため、その準備をしておかなければならず、それができなければ融資での調達を考えなければならないが、その時に融資が受けられない場合はどうするかを考えなければならない。(これは通常の融資を受けた場合にも言えますが・・・)

融資の場合は、返済が困難となった場合リスケジュールという手段がありますが、社債ではそれがなく、デフォルト、つまり債務不履行ということになっていきます。 これらメリット・デメリットを考え、どうしても私募債を導入したいのかどうかを考えてください。

 

・経理財務担当者の憂鬱

弊社にご相談いただく方の1割は経理財務部門の方(残り9割は経営者の方です)ですが、 そのような方々からご相談をいただいていて、いつも思うのは、

経理財務部門の方がいくら、自分の会社をなんとかしようと動いても、経営者が動かなければ、何も変わっていかない。

本当なら社長が危機感を感じて、なんとかしよう、と動いていかなければならないのに、社長よりも経理財務部門の方が危機感を感じ、動いている中小企業が多く見られます。

【しかし、経理財務部門の方はいかんせん、決裁権がありません。社長が決断してくれなければ、何も動いていきません。】

コンサルタントの私たちでも、一番難しいのは「人の考え方を変えること」です。社長の考え方が「自社をなんとかせねば」というように変わらなければ、何も動いていきません。
では、社長がいつ、そのような意識を持つか

今月の支払いが足りないなど、本当に最大の危機状態に陥った時にしか変わらないことが多いです。

経理財務部門から社長に忠告がある時は、最大の危機に陥ってしまう前にすぐに対策をうつべき時なんです。

 

・親戚・知人からのお金の借り方

なぜ、親戚・知人にお金を貸してほしいと頼んでも、断られてしまうのか。
お金を貸してほしいと言われる方の立場から見ると、分かるでしょう。
お金を貸してほしいと言われたら、まず考えるのは、「本当に返ってくるのか?」です。

では、親戚・知人が最後の頼みの綱で、お金を貸してほしいと頼む際に、貸してくれやすい頼み方、貸してくれにくい頼み方、を考えていきます。

貸してくれにくい頼み方
ただ単に「お金を貸してください。」と言うことです。 「どうやってお金を作るか、何も具体策がないじゃないか。本当に返ってくるのか?」と疑問に思うのが普通でしょう。

 

貸してくれやすい頼み方
次の資料を用意します。
  • ・自分の会社をどうやって立て直していくのかを書いた経営改善計画書。そこにはむこう3年ぐらいの月次損益計画と月次資金繰り表を入れる。
  • ・その資金繰り表をもとに、親戚・知人から借りたお金をどうやって返していくかを書いた返済計画。
  • ・借用書
    お金を貸してほしいと頼まれた親戚・知人としては、返済計画があり、またその根拠が経営改善計画や資金繰り表で分かりますので、貸したお金が返ってくることの不安が少なくなります。
    また借用書を交わし、どうやって返していくかをその借用書の中で書いておくことによって、貸した方としてはお金が返ってくることに確信を持てます。

 

このようなものを用意してお金を借りに行くのとそうでなくお金を借りにいくのとでは、相手の受ける印象は大きく違うでしょう。 大金を借りようとするのですから、借りるための準備はしっかりするべきです。

親戚・知人からお金を借りるのは、最後の手段です。

  • ×決して、赤字を補てんするために使ってはなりません。
    銀行へ返済するために使ってはなりません。
    赤字補てんや銀行返済のために使うと、またすぐに、「お金が足りなくなった。どこか借りることないか。」ということになってしまいます。

○会社立て直しのために大事に使うようにしてください。

 

・融資を希望金額どおりに出させる方法

■私たちが多く受ける相談の一つに、
 「融資は受けられたが、希望金額より少ない金額になってしまった。」というものがあります。

ここで、銀行員の心理を考えてみます。
  • ◎銀行の審査において、融資が出る金額というのは、これだけは絶対に出る、というものはありません。
    なんとなくこれだけ出る、というものです。結構、感覚で決めるところが大きいのです。
  • ◎また、企業から言われた融資希望金額より少ない金額で審査を通すと、後に万が一貸し倒れとなった場合、上から審査の適切さを問われても、「今回は貸し倒れとなったが、審査はしっかり行った。」
    という言い訳がしやすくなります。貸し倒れの事態も想定して、希望金額より少なくして審査を通した、という言い訳がしやすくなります。
では企業としては、どうしていけばよいでしょうか。

単純に、経営者が本当に希望する金額より多めの金額を、融資希望金額として銀行に伝えることです。

2,000万円を融資してほしいのなら、そのまま2,000万円を融資希望金額として伝えると、減額して1,500万円や1,000万円にされやすいです。
それであったら、希望金額を3,000万円で伝えてみます。
そうすると、減額されて、実際に経営者が希望する金額ぐらいは出る可能性が高くなります。
このような話を聞いて、経営者としては、なんて単純なんだ、と思うのかもしれません。
しかし実際には、結構効果があるのがこの方法です。

 

・売掛金がひっかかった時

■事業を行ってくると、つきものの問題が、売掛金が回収できない、という問題です。

売掛先が事業を継続している状況で、入金期日に入金がなかったら、その入金があるまでは、その売掛先への販売をストップしたり、もしくは下請けをストップさせたりして、これ以上の売掛金未回収をおこさないようにする対策が考えられます。

しかし現実問題、自社内の、その売掛先への売上ウェートが高かったりすると、なかなか簡単に割り切れないものでしょう。そして売掛金をどんどんふくらませて、結局売掛先が倒産してしまったら、大きな金額を引っ掛かってしまうことになります。

このようなケースにそなえ、やはり売上先を分散させることは必要です。特定の1社や2社への売上ウェートが高かったら、その企業が倒れたら自社も共倒れとなります。そういう事態を防ぐために、売上先の分散は、リスクを抑える上で重要な対策です。

では、売掛先が倒れ、実際に売掛金が引っ掛かってしまったら、どうしたらよいでしょうか。

この場合に、銀行に運転資金の融資を申し込みますが、いつも運転資金の融資を申し込むときみたいに、わざわざ売掛金が引っ掛かったことを銀行に言わず、融資を申し込む方がよいです。

ただ銀行に売掛金の引っ掛かりを気付かれないようにするのは、その銀行からまだ融資が受けられている状況の場合であり、リスケジュールを行っていたりしてその銀行からいっさいの融資が受けられていないのであれば、リスケジュールの継続など銀行の協力をもらうために、あえて売掛金が引っ掛かった事実を企業側から伝えた方がよかったりします。

  • ■ちなみに、売掛金が引っ掛かった場合への備えとして、中小企業総合事業団の、経営セーフティ共済というものもありますので、備えとしてかけておくことも考えておいた方がよいでしょう。

経営セーフティ共済→ http://www.smrj.go.jp/tkyosai/index.html

 

・商業手形割引の金利

(Q)

商業手形割引の金利について。割引金利の基準は短期プライムレートでどの銀行も行われているようですが、短プラ以下になることは可能なのでしょうか?

短プラベースの理由としては、支払期日が異なるので銀行側の資金調達の効率が悪いため、短プラが限度である、と説明を受けました。大手の会社には短プラ、マイナス何%など適用しているのでしょうか?

(A)

割引金利が短プラ以下になることは可能です。しかし、それでも都市銀行の一番低い短プラが限度です。短プラは銀行によってちがいますが、例えばあなたの会社の取引銀行の短プラが1.875%で、都市銀行の一番低い短プラが1.625%であれば、短プラ以下の金利と言っても1.625%が限度です。

短プラ以下の金利が適用されるのは大手というよりも、財務内容の良い会社です。そのような会社には割引の取引を増やそうと、各銀行が金利で競うからです。

 

・担保がついている不動産を売却したい

(Q)

会社(父が社長、私は役員)の経営がこのご時世でご多分に漏れず苦しい状況にあります。経営資金確保の為に会社の不動産の売却を考えていますが、もちろん担保になってます。銀行との協議によって売却が出来る場合、第一・第二抵当権を持つ銀行と信組両方と話をしなければならないと思いますが、どういう交渉をすれば良いのでしょうか?

資産の評価額は1億5千万前後。第一抵当権を持つ銀行の負債が3千万位。第二抵当権を持つ信組はまだ2億以上残っています。この様な状況の場合、もし売った場合でも自社で使えるお金は残らないのでしょうか?

(A)

まず買い希望者を探し、買い希望者に「買付申込書」といって、「私はこの不動産を○○円で買いたいです。」というようなことを書いた書面を作ってもらいます。それをもとに、担保をつけている金融機関と交渉していきます。

まず第一順位抵当権がある金融機関に話をします。そこで、売却してそれを一部返済にあててくれれば担保を外してもかまわないよ、という感触が得られたら、後順位の抵当権設定の金融機関にも話をしていきます。

抵当権を設定されている状態であっても、不動産の「売却自体」は可能ですが、抵当権が設定されている物件に買い手はいないでしょう。売却代金での返済配分案を抵当権を設定している各金融機関に説明し、全て抵当権を外してもらうことに同意を得られたら、やっと売却の実務に入っていくことができます。

しかし、あなたの会社の場合は、売却代金を経営資金に使いたいということです。しかし銀行は、信用のある会社でなければ、抵当権が設定されている金額分、物件売却代金は全て融資返済にあてさせるのが通常です。銀行が、売却代金の一部を経営資金に使ってもよいと言ってくれれば良いのですが、その交渉はなかなか難しいところです。

 

・「保証人」の性質

■銀行融資において、重要なポイントの一つが、「保証人」です。

代表者である保証人に求めるものは しっかり経営して返済を行い、返済ができなくなったら責任をとってほしい、ということです。
代表者でない保証人に求めるものは 保全、つまり企業が返済できなくなったら、変わりに返済してほしい、というところです。

  • ■代表者でない保証人として、例えば
    ・不動産を持っている人
    ・サラリーマンで、勤めている企業が安定しており、勤続年数が3年以上である人など、細かい条件が求められることもあります。
  • ■企業が返済できなくなった局面において、銀行にとって担保は確実な回収手段ですが、保証人はそうではありません。だから、銀行融資において、保証人は気休めにつける程度、のものでしかありません。

  • ■また、保証人について、よくあるのが、銀行が後日、追加で「保証人を新たに入れてほしい」と要求してくる場合です。

代表的なのが、リスケジュール、つまり返済金額の減額の交渉時に、保証人を要求される場合です。
この場合、銀行の要求はつっぱねるしかありません。
「保証人を探しているがなかなか引き受けてくれない。」
などの理由をつけて、要求は受け入れないようにします。リスケジュール時において保証人をつけると、その保証人に最終的に迷惑をかける可能性は、当然高くなります。迷惑をかけてはいけません。

 

・新規の銀行があなたの会社にとびこんでくるようになる方法

新しい銀行から融資を受けたい場合、はじめは銀行の方からあなたの会社にアプローチしてくるようにしなければなりません。

銀行の方から、あなたの会社にアプローチしてくるように「仕掛け」を行いましょう。

それは、帝○データバンクのような企業調査会社の資料です。
銀行には、本部に営業支援の部署があります。
営業支援の部署から、3か月に1回や半年に1回、支店のテリトリー内にある企業のリストが、企業調査会社のデータから抽出され、配布されるのです。 例えば帝○データで、評点が50点以上の企業はそこそこの企業、55点以上の企業は優良な企業という見方をします。
銀行員の新規融資先の開拓の仕方は、このように企業調査会社のデータを見て、という場合が多いです。

■ということは、次の2つが、多くの銀行があなたの会社に新規融資先の見込み客としてとびこんでくる仕掛けとなります。

1.企業調査会社に、あなたの会社の企業情報が掲載されること。
2.企業調査会社のデータで、あなたの会社の評点が高くなること。

 

・根抵当権極度額は減額できるか?

(Q)
担保の書き換えなどはできますか?
たとえば、借入当初に不動産を担保としました。返済が順調に進み残高が当初借入額の半分になったとします。あきらかに不動産担保物件のほうが価値があるとします。この場合、担保の再設定などのようなことは可能でしょうか?

(A)
根抵当権極度額の減額ということで可能です。ただし、その際にかかる費用は負担しなければなりません。ただ、そのような申し入れをしても、銀行から、根抵当権の減額は待ってほしいと言われることは多いです。今後、再び融資を実行したときにその時の根抵当権の極度額が大きければ、融資にともない極度額を再び増額することがなく、手続きが楽だからです。
もし将来、その銀行から融資を再び受けたいということであれば、根抵当権極度額はそのままにしておくのも一つの考え方です。

 

財務ノウハウ(7)

(1)保証協会へ代位弁済される?

(Q)
ある銀行で借入(運転資金)があり、この不況で返済が苦しく、利息のみの返済をしておりましたところ、あるときに「信用保証協会にまわす」といって、銀行員は用意しておりました利息を受け取らずに帰りました。
その後保証協会と話をはじめていましたが、突然その銀行より内容証明で、当座預金に入った売掛金を「利息分として受領した」という通知が来ました。
お尋ねしたいのは、用意していた利息を受け取らずに帰っておいて、当座に入った売掛金を勝手に引き出して利息に充当すると言う行為は銀行としては当たり前の行為なんでしょうか。理不尽な気がしております。

(A)

「信用保証協会にまわす」という言葉の意味は、保証協会に銀行の融資を代位弁済もらうよう手続きする、という意味でしょう。 信用保証協会の保証がついている融資は、あくまで出し手は銀行ですが、それを保証協会に代わりに払ってもらうと、その後は保証協会が、あなたの会社の債権者となり、保証協会と交渉を行っていくことになります。
当初、利息を受け取らなかったということは、代位弁済手続きに入るということが銀行内で決まっていて、その銀行員に、指示があったことと思われます。

また、当座預金に入った売掛金を利息分として受領したことについてですがもとは売掛金であっても、当座預金に入金となったら、当座預金の一部となります。銀行が、延滞となっている融資の利息を当座預金から受領したということであれば、この銀行の行為は法的に特に問題はない行為でしょう。
また状況から、保証協会への代位弁済手続きが着実に進んでいるのでしょう。

あなたの会社が、現時点でやっておくべきことは、保証協会保証付融資の保証人と担保がどうなっているかを洗い出しておき、今後の対策を考えていくことです。
保証協会への代位弁済が行われると、保証人への取立てや、担保の競売手続きが現実的となっていきますので、影響を最小限に抑えられるような対策を考えていく必要があります。

 

(2)信用保証協会の保証枠は合算される?

(Q)
東京都と神奈川県の保証協会で信用保証を受けている場合の無担保保証枠
 8000万円はどのようになりますでしょうか教えてください。考え方としては、
 例えば東京都+神奈川県=8000万か
 東京都=8000万円、神奈川県=8000万円
を最高限度額として保証してもらえるのでしょうか。

(A)

信用保証協会の保証枠は、合算で決められます。
質問の例で言えば、東京都+神奈川県=8000万です。
全国の信用保証協会がオンラインでつながっていて、他の信用保証協会でいくら保証枠を使っているか、すぐに分かります。

なお、保証協会は、企業が支店登記をしている地域の保証協会も使えるので、東京都が本社、神奈川県が支店(支店登記あり)という場合などで、このように複数の都道府県の保証協会を使う場合が起こりうるのです。
もしくは、愛知県信用保証協会と名古屋市信用保証協会のように、「市」にも保証協会がある地域で、名古屋市の企業が愛知県と名古屋市の保証協会を使う場合なども起こりえるケースです。

 

(3)信用保証協会保証付融資が代位弁済となるとどうなるか

経営者の中には、信用保証協会自身が融資を出している、と勘違いされている方もいらっしゃいますが、あくまで融資の資金を出しているのは銀行です。銀行の融資に、信用保証協会が保証をしている、という形です。

信用保証協会
保証
銀行
融資
企業
 
その融資の返済ができなくなり、リスケジュール(返済条件変更)交渉も行わず、延滞のままほっておくと

代位弁済になります。

代位弁済とは、融資の返済ができなくなった企業に代わって、信用保証協会が企業の代わりに、銀行に残額を一括返済することを言います。

代位弁済となると、その代位弁済金額が全額、信用保証協会に返済とならないかぎりは、信用保証協会は保証を付けてくれません。

一方、信用保証協会保証付融資でも、リスケジュールであれば、リスケジュール期間中に利益が上げられる体質になって返済再開ができ、6カ月経過すれば、審査しだいですが保証を付けてくれるようになります。

ここで、次の違いを再認識してください。

延滞は、銀行や信用保証協会に無断で返済をしないことで、ほっておくと代位弁済に移行されます。 リスケジュールは、返済できないならできないで銀行や信用保証協会と交渉し、毎月の返済金額を減額してもらうことです。
延滞をほったらかしにして代位弁済となれば、代位弁済金額が全額完済となるまでは、信用保証協会は保証を付けてくれません。 一方リスケジュールの形であれば、リスケジュール期間中に利益が上げられる体質にして返済を元に戻せば、信用保証協会は保証を付けてくれるようになります。リスケジュールした融資金額を全額返済しなくても。

こう考えると、やはり代位弁済になるよりは、銀行や信用保証協会と交渉してリスケジュールしておく方が、後々のことを考えるとよい、ということになります。

しかしリスケジュールの方は、元金の返済額は減額しても、利息はしっかり支払う必要があります。一方代位弁済の方は、利息も含めて信用保証協会と支払交渉を行うので全体的に支払いの負担は少なくなります。
利息の負担を考えると、企業の資金繰りがよほど厳しい状況であれば、いっそのこと代位弁済として企業の支払い負担を一気に改善する、という手もあります。

いずれにせよ、返済が厳しくなってきて、新たな融資も受けにくくなったら、どうすればよいか対策を考える必要があります。最もいけないのは、何も動かないで、単なる延滞にしてしまうことです。

 

(4)団体信用生命保険(保証協会団信)

法人の代表者に万が一のことがあった場合の後のことを考えるのなら、保険は加入しておいた方がよいでしょう。

(Q)
信用保証協会保証付融資を信用金庫から受けた時、「団体信用生命保険(保証協会団信)」を借入限度額まで行いましたが、加入されない借入者が大半との事で、私の加入した判断は正しかったのでしょうか?

(A)

保証協会団信とは、
「信用保証協会からの債務保証を伴って融資を受けた個人事業主の方が、その債務を全額返済されないうちに死亡もしくは所定の高度障害といった不測の事態に陥られた場合、または信用保証協会からの債務保証を伴って融資を受けた法人がその債務を全額返済されないうちに、代表権を有する連帯保証人の方が死亡もしくは所定の高度障害といった不測の事態に陥られた場合に、社団法人全国信用保証協会連合会が生命保険会社から受け取る保険金をもとに、金融機関に対する債務を弁済することによって、事業の維持安定・円滑な事業継承とともに、ご家族・後継者の安心を図ることを目的とした制度(全国信用保証協会連合会のサイトより抜粋)」というものであり、任意加入となっています。

例えば住宅ローンを受ける際には、団体信用生命保険をかけますが、もし債務者が死亡するなど万が一のことがあると、残りの融資残高は保険金が払われて一括返済となり、残された家族等に債務が残らないことになります。それと同じように保証付融資においても、保証協会団信に加入していれば、法人の代表者に万が一のことがあった場合に、保険金が払われて一括返済されることになり、残された法人の維持安定、後継者への円滑な事業承継が図られることになります。だから、法人の代表者に万が一のことがあった場合の後のことを考えるのなら、保険は加入しておいた方がよいでしょう。

 

(5)人件費を変動費化できないか

いかに固定費の割合を減らし変動費の割合を増やすかを考えることによって、売上低下の局面に強い企業作りができます。

以下、単純な事例を見てみます。

売上が100百万円(1億円)で、経費が80百万円かかっている会社があるとします。利益は、100-80=20百万円です。
この経費が、
 1.100%固定費
 2.50%固定費50%変動費
 3.100%変動費
の場合、売上の増減により利益はどうなるかを見てみます。単純な計算なので容易に理解していただけると思います。

売上が100百万円→70百万円と、30%低下した場合、利益はどうなるかを見てみます。
  • 1.100%固定費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費80百万円(100%固定費のため変わらず)
    →利益△10百万円
  • 2.50%固定費50%変動費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費68百万円
    (50%固定費50%変動費のため変動費部分40百万円が30%低下し28百万円となり、固定費部分40百万円を足すと)
    →利益2百万円
  • 3.100%変動費の場合
    売上70百万円(30%低下)
    経費56百万円(30%低下)
    →利益14百万円

このように、経費の中で変動費の割合が高い企業ほど、売上の低下の局面に強い企業、ということになります。

固定費として見られる経費の代表は、人件費です。 その人件費を、変動費化する方法を考えてみます。

1.パート社員、派遣社員の活用
売上が減少した時、社員の削減を考えなければならなくなりますが、正社員では、なかなか辞めてもらうことはできません。パート社員では辞めてもらいやすいですし、派遣社員であれば派遣を終了すればよいです。
つまり、売上が減少してもなかなか辞めさせづらい正社員は固定費として、辞めさせやすいパート社員や派遣社員は変動費として、見ることができます。
2.外注化
外注費は、変動費の代表です。例えば製造業などで、仕事が最大にある時を基準とした工場の社員を抱えている企業がありますが、仕事が少ない時を基準として工場の社員を確保し、仕事が多くなった時は外注を活用するなど、考えられないでしょうか。
3.社員の成果により変動する給与を拡大
営業社員などで考えられます。売上を多く作る営業社員も、売上を全く作らない営業社員も、同じ給与であれば、売上を全く作らない営業社員は、そこで会社に赤字をもたらしていることになります。売上や粗利益の獲得に応じた成果給部分を多く、成果によって変わらない基本給部分を少なくする給与体系を作ることにより、人件費の変動費化が進みます。
4.会社の業績に応じた賞与
毎月の給与部分を少なくし、会社の業績に応じた賞与を多くします。
例えば月給25万円の社員がいるとすると、会社の業績が赤字であれば、年間賞与を0円とし、会社が大きく利益を出しているとすると、賞与を年間100万円とします。このように、会社の利益が赤字やトントンであれば賞与を出さず、利益を上げれば賞与を出す方式にすることにより、人件費が変動費化します。

しかし、いざこれらの方法を導入しようとしても、社員の反発がこわい経営者の方は多いかと思います。

◎自社の経営状況が悪くない会社であれば、悪くなる時に備えて、やれるところからやっていったり、今後採用する社員から変えていく方法が考えられます。

問題は、現状で売上が減少して赤字が出ている企業です。

そういう企業は、待ったなしですので、例えば営業社員で売上を上げてくる社員が少なく赤字となってしまっている会社であれば3の方法を導入して人件費の変動費化を行うなど、経営者が断固とした意志を持って、人件費の変動費化を行っていくべきです。
またこういった企業の場合、会社に貢献しない社員に辞めてもらうなど、一部社員に辞めてもらう策をう必要があります。

例えば社員数30名の会社であって、5名辞めさせると黒字化する会社があるとします。
その5名を辞めさせることができなければ、30名全員、共倒れとなってしまいます。
そこを考えると、5名は辞めさせないといけないことがよく分かるのではないでしょうか。

 

(6)新会社を作る時の鉄則

(Q)
当社は建築業をしています。主にハウスメーカーの下請け工事です。
父親が代表のときの借金があり(現在の返済は金利のみ)融資が受けられない状況だったため、母親名義で別法人を5年前に立ち上げました。
私はハウスメーカーに勤めていて、1年半前から家業を手伝っているのですが、先日運転資金の借入れを申し込んだところ、保証協会の審査で落ちてしまいました。S銀行さんの話では売上等では問題はないとのことでした。
やはり、同一の住所で、家族が経営している赤字の会社があると融資は難しいのでしょうか。

(A)
新会社を作る時の鉄則は、旧会社の
1.役員、2.株主、3.保証人
を全く切り離して作るとともに、同じ住所にしてしまってはだめです。
そうしないと旧会社で融資が受けられないから融資を受けられるように新会社を作ったのだろうと信用保証協会に見透かされてしまい、融資を受けることは困難になります。

 

(7)ノンバンクからの借入

商工ローンやビジネスローン専門金融機関、不動産担保融資専門会社など、ノンバンクからの借入れを銀行に知られてしまうとどうなのか、という質問は、よくいただきます。


銀行から見ると、ノンバンクからの借入れがある企業は、通常であったら銀行から融資を受けて資金繰りを行うところ、銀行から融資が受けられず、銀行よりも金利が高いノンバンクから借入れした、という見方をされますから、そうでない企業よりは、融資を出さないというわけではないですがやはり、融資審査に慎重になってしまいます。

■また、ノンバンクといってもいろいろな種類がありますが、それぞれのタイプごとに、そこから出る融資がどういうものか、見てみましょう。

○商工ローン
以前破たんしたSFCGのように、高金利で融資を行う金融機関です。 商工ローンから融資を受けるのは、せいぜい、一時的に資金が足りない状況ですぐに返済のあてのある場合ぐらいにとどめておき、銀行から融資が受けられないからと商工ローンでしのごうとしてはなりません。
○ビジネスローン専門金融機関
融資の金額は数百万円と少額で、金利も10%あたりと銀行に比べて多少高い融資を出す金融機関で、多くは銀行の資本が入っています。このような金融機関からの融資を受けるにしても一時的な資金ぐらいにとどめておくべきです。
○不動産担保専門金融機関
不動産担保融資を専門とする金融機関があります。金利は一桁台後半から10%前後あたりとなります。担保とできる不動産があるのなら、通常であればそれで銀行から融資を受けるでしょうから、不動産担保金融機関から融資を受けるということは銀行からなかなか融資が受けられない会社、ということが通常であります。

いずれのタイプの金融機関においても、共通するのは、
 ・銀行からなかなか融資が受けられない企業が使う金融機関であること。
 ・金利は銀行からの融資よりだいぶ高いこと。
という特徴があります。

  • ★これらノンバンクから融資を受けるにあたっては、銀行の融資はリスケジュールを行い、金利の高い融資で金利の低い融資の返済を行うという構造にしないことが前提となります。
  • ★そしてノンバンクから受けた融資は、最後の会社を立て直すための資金とします。
  • ★銀行から融資が受けられない状況は、業績が芳しくない状況であり、立て直しを意識的に図っていかねばならない状況です。

 

(8)売上大幅激減の会社の立て直し方

とにかく、企業は倒産を回避し、再生に向かって進んで行かなければならないのです。

ここ数年、多くの企業から、売上が激減した、というご相談をいただきます。
この理由としてよくあるのは、1社や2社に多くの売上を依存しているパターンです。
売上が激減した場合、倒産を回避して再生への道を進むにはどうすればよいでしょうか。

この場合、2つの考え方があります。

1つは、今まで1社や2社に売上を依存していた体制を見直し、売上先を分散する体制を作ること。リスク分散の考え方です。
この場合、自社の技術を生かし、今まで依存していた業界ではなく異なった業界にアプローチできないか、を考えます。
ただ、この場合は新規売上先の開拓の必要があり、すぐにとれる対策ではないでしょう。将来的な策ではあっても、緊急事態にすぐに行うことができる策ではありません。

そこで、2つ目は「縮小均衡」 売上5億円が、例えば4.5億円に減少するような少しの売上減少であれば、一部の経費削減でしのげるのかもしれません。
しかし売上5億円が、2億円にまで減少するような売上激減の状況であれば、経費削減という生ぬるいことでは全く足りません。売上2億円で損益がトントンとなるように、損益計画を一から作ります。

最も削らなければならない経費
多くの会社では人件費でしょう

 

社員を辞めさせることができなければ、会社は破たんして、全員、共倒れということになってしまいます。

この場合の解雇は、整理解雇ということになりますが、整理解雇には次の4要件が必要です。
1 人員整理の必要性
整理解雇を行うには、相当の経営上の必要性が認められなければなりません。
2 解雇回避努力義務の履行
解雇は、最後の手段であることが要求されています。役員報酬の削減や、新規採用の抑制、希望退職の募集など、整理解雇を回避するための経営努力がなされていることが必要です。
3 被解雇者選定の合理性
解雇される社員の選定基準、具体的人選が合理的である必要があります。
4 手続の妥当性
説明、協議など、整理解雇を納得してもらう手順を踏んでいる必要があります。

※このように、整理解雇を行い、売上が激減しても損益がトントンとなる体制作りが必要です。

 

(9)催促の手紙を出して失敗した・・・

内容証明郵便の出し方

■支払を催促する活動の一つに、手紙を出して催促をするという方法もあります。
この手紙を使った催促の中で、最も過激な方法が「内容証明郵便」という特殊な郵便方法を使ったものになるのです。

内容証明郵便とは・・
 1.どんな内容の手紙を
 2.いつ相手に出したか
ということを、郵便局が証明してくれる特殊な郵便物のことです。

売掛金を回収をするためのノウハウ本を読むと、内容証明郵便が魔法のツールのように書いてあることがあります。インターネット上で検索しても、「売掛金回収と言えば内容証明郵便」というような感じです。
内容証明郵便だけで回収できるならば、誰も売掛金回収に苦労しません。実際には、むしろ内容証明を出すことで、
 ⇒"話がこじれて長引く"
 ⇒"まったく無視される"
というようなことも珍しくありません。
内容証明はなんら法的な拘束力を持つものではないために、まずもって無視できてしまうのです。

とりあえず支払が滞ったから内容証明郵便を出そう、という発想は捨てて下さい。

では、どんな時に内容証明郵便を使って催促すべきなのでしょか?

内容証明郵便は「宣戦布告」の意味合いが強いです。
コミュニケーションも取りづらく、支払意志がないならば、これはもう戦闘を開始する相手ということになります。

注意!
しかし、注意していただきたいのは、内容証明郵便を出すだけではダメだということ、出して反応がなかったらどうするのか、ここを考えてから動かなければいけないということです。

 

(10)差押えしてみたが回収できない・・

差押えすればどんな会社からでも回収できる、というのは非常識

  • ■売掛金を支払ってもらえていない場合や、貸したお金の返済がない場合など、あなたに正当な権利があれば、その相手が持っている財産の差押えをして回収することができます。
    例えば、銀行の預金口座とか、売掛金、不動産なんかがいい例です。

しかし、例えばいざ相手の預金口座を差押えできたとしても、実は回収に成功しないことがあるのです。

■具体的な事例を見てみましょう。
例えば、差押した銀行の預金口座に肝心の預金がないかもしれません。
調査した口座が、既に解約されていることもあります。
差押えをした銀行口座の名義人である、売掛金を払わない相手先が、その銀行から借入れをしていたとします。
すると、あなたが差押えを行ったことを発動条件に、その銀行はあなたに優先して口座にある預金を回収してしまうということも起こります。
ちなみに、お金を貸している銀行が持っている、そのような権利を相殺といいます。
こんなこともあるのです。
例えば、不動産を差押えしても回収できないことがあります。
それは、中小企業の場合、ほとんどの不動産が銀行借入れの担保に入っていて、既に価値がない状態になっているからです。
そのような状態だと、差押えすることすら裁判所が認めてくれないことがあります。
また、差押えができたとしても、換金手続きに高額なお金が必要なことも障害になるかもしれません。
しかも、そもそも不動産の売却には時間がかかります。高額なだけに買い手を探すための時間が必要なのです。
あなたがいくら急いで差押えをしても、換金するまでには時間がかかってしまいます。それこそ、都心の一等地だとしても換金までには最低半年は見ておいた方がいいでしょう。
早く回収して資金繰りを良くしよう、という中小企業のニーズには合わないのかもしれません。

差押えという面倒な手続きをした結果として、実際に手元にお金が帰ってくるためには何を差押えればいいのか、これを知っておく必要があります。

また、一度差押えの手続きをすると、その相手も財産を隠したり、差押えを妨害してくることが往々にしてあります。 つまり、できるだけ初回で決めないと取り逃がす可能性が高まるということなのです。

そのためには、何が換金性のある差押え対象物なのか、そしてその調査方法は何か、についてもっともっと知っておく必要があります。

 

(11)差押えは誰にでもできるのか

■あなたの会社が売掛金を持っているのであれば、もしものことを考えて、「差押え」についての最低限の知識を持つことは必要です。

まず知っておいていただきたいのは、あなたの会社の売掛金が未入金になった場合で、その入金すべき会社に倒産可能性があるとすれば、すぐにでも差押えができるという事実です。

裁判をしなくても差押えをすることができるこの手続きを、『仮差押』といいます。

裁判所に一定の保証金を積めば、あなたの一方的な主張に基づいて、相手の財産を差押えてくれるのです。

但し、何でもかんでもOKということではありません。もし不当な仮差押えであって相手に損害を与えた場合、保証金は損害賠償の一部に充当されます。

また、すぐにでも、といっても、それぞれの状況がありますので、おおよそ1ヵ月以内には差押えができると思っていただければ間違いないでしょう。

そして、弁護士さんに頼まなくても自分で手続き可能です。やはり始めてのことで不慣れな分、手間はかかると思いますが、裁判所に問合せをしながらやればできないことはありません。

機会があっても良くないですが、一度チャレンジしてみると良い経験になると思います。
実践してみてもいいですし、書籍やマニュアルで勉強してもいいのですが、そうして知識を得ておけば、いざという時の対応に違いが出てくるようになるでしょう。

 

(12)取引先から急に支払を延ばしてほしいという要請が来たら・・・

何か起こってからでは遅いです。

もし、あなただったらどう対応するでしょうか?

「急にどうして支払ができなくなったのか」
「いつ支払ができるのか」
「現在の資金繰りはどうなのか」
帝国データバンクなどの興信所に問い合わせて、興信所の点数が何点であるのか、その確認のためにデータを取得するところまで行う方もいるかもしれませんね。
状況確認でしかない

 

■ヒアリングにおいては、その会社によって質問の内容を事前に考えます。

一例として一般的なことを挙げると
  •  ⇒「メインの取引先さんは、S社さんだったと思いますが、現在も取引は継続しているんですか?」
  •  ⇒「今は、他にどんな取引先と商売をしているんですか?」
入金になってから3ヵ月以内に回収しないと回収率が激減するという事実を知っているから、最悪の場合に『何を差押えするか』という観点で行う!

 

まとめると、

 1.差押え手続について最低限の知識は持っておく  2.どんな資産が差押えできるのかを知っておく  3.上記の1と2が明確であればいざという時の対応が回収目線になる  4.結果的に未回収売掛金は減る

・売掛金の回収は社員に任せきり。
・会社としての対応は何もしていない。
・既に未回収が発生している相手先から受注を受け続けているが、なんの対応策も打っていない。
・経営者が未回収の売掛金がどこにいくらあるのか把握していない。
・過去に未回収売掛金が発生しているが、今後の対応策を立てていない。
・社内で誰も取引先の信用調査ノウハウがない。
・社内で誰も売掛金回収・債権回収に詳しい人がいない。

このような状況を放置していませんか?

 

(13)金貸しの審査と回収

■融資を検討する場合『定量』と『定性』の両面からの視点で可否を決めます。

定量とは
数字で見える部分のことだと思って下さい。
今回で言えば、不動産に貸すお金以上の価値がありましたから、この点では何の問題もないように思えます。

 

定性とは
数字では見えない部分のことです。
例えば、社長の性格、人柄、趣味、会社の評判・噂、などなど。

 

■やはり定性よりも定量情報の方が審査の上で占めるウエイトは高くなります。
おおよそノンバンクの基準から言えば、定量が80~90%、定性が10~20%

以下の8点をよくチェック
1.取引をするのかしないのか、定量と定性の両面から考えること
2.定量と定性には一定割合を決めて判断すること
3.リスクがあると判断したらそれを軽減するための方法を考えること
4.基本的にはキチンと契約を行うこと
5.契約した時点で回収時のストーリーが描けていること
6.未入金が発生した時点で当初から考えていた回収アクションを準備
7.未入金はのんびりと構えずにすぐ状況を確認する
8.やると決めたらすぐに回収アクションに移る

※中小企業にも応用できるポイントが、たくさんあります。ここをもっとしっかりとできれば、あの時、あの売掛金の未回収は出なかったのではないでしょうか。

 

(14)保証付融資が過去の経緯により受けられないがどうしたらよいか

(Q)

私の会社は、法人成りして5期目に突入いたしました。その前は、父の個人事業形態でした。2005年の10月に私が法人化し、2006年の9月に父の個人事業をそのまま吸収しました。

新しい事業を興そうと考え、銀行融資を試みました。銀行としては当社とは初めての取引だったので、信用保証協会の保証を付けて融資をしたいという事で、手続きを開始してくれましたが審査が通りませんでした。

理由は、私が法人成りしてから父の事業を吸収するまでの間に父が個人事業で信用保証付き融資を受けていて、同一の職場で仕事を行なっている以上、父の個人事業へ実行した融資は、今の法人で使っているのではないですか?という事です。

実際は、父が新たに店舗を出し、その際に借入したものですが、うまくいかずたたんでしまい、その後私が吸収した形となっています。 信用保証協会は、今の父の債務が残っている間は保証できないと言ってきます。
銀行側も信用保証協会の保証がない限りは、新規取引においてプロパー融資はできない、と回答してきます。

一つ案を出されたのは、日本政策金融公庫(旧国金)から借入し、そのお金で債務を消せば融資できる、との内容です。
これを実行して今後問題とならないかどうか?が一つと、もう一つは現状でプロパー融資を受ける事はできないか?あるいは、信用保証協会の保証にこぎつける事はできないか?という事です。

今のご時世ですので、1店舗だけだと売上/利益に限界を感じます。1つの店舗から出せる利益は少額になろうとも、2店舗3店舗と増やせば、それなりの利益ボリュームが出せるかと思うので、何とか融資にこぎつけたい所です。

(A)

お父様の個人事業を吸収したといっても、個人事業時代に受けていた保証付融資の返済が順調にいっていれば、融資を受けていることのみによってあなたの会社が保証協会の保証を受けられないことはないのですが、その融資が延滞やリスケジュールを行っている状態である、だからあなたの会社においても新たな保証協会の保証が受けられない、ということなのでしょう。

個人事業をたたんだ、ということは、個人事業において融資を受けていた保証付融資は、延滞の状態かリスケジュールの状態か、もしくは保証協会が代位弁済を行った、ということになっているのでしょうね。
延滞もしくはリスケジュールの状態であれば、通常の返済に戻して6カ月を経過させれば、また保証協会の保証を受けられる可能性が出てくるのですが、代位弁済までされている状態であれば、その分を全て保証協会に返済しなければ、あなたの会社も保証協会の保証は受けられません。

日本政策金融公庫の融資で保証付融資を返済するという案を出されたのであれば、おそらくその保証付融資は代位弁済されている融資、ということなのでしょう。 日本政策金融公庫で融資を受けて保証付融資を返済するのは、日本政策金融公庫にその事実が分かってしまうと、次に日本政策金融公庫から融資を受けようとするとき、審査において引っ掛かってしまうことでしょう。(あくまで、その事実が分かってしまうと、です。) また、プロパー融資の方が保証付融資より、審査は厳しいので、保証付融資が受けられない企業は、プロパー融資を受けることは困難です。

しかし、財務状況がよい企業であれば、過去の事情で保証付融資が受けられなくても、プロパー融資が受けられる企業は、まれに存在します。
現状のあなたの会社は、まずは個人事業時代に受けた保証付融資を、なんとかしなければなりません。
弊社事務所にて、資料を見たうえで対策を考えますので、必要であれば面談相談をお申込みください。

 

(15)「一社員の影響」により業績が悪くなる場合

中小企業は、経営者が全てです。経営者自身が、会社のすみずみまで目を届けなければいけません。

一社員の影響の例として、次のようなものがあげられます。
  • ・経理の社員が、お金を横領していて、会社は損失を多く出した。
  • ・発注担当の社員が、高い仕入や外注費などの見積りを業者から受入れ、裏でその業者からバックマージンをもらっていて、会社は損失を多く出した。
  • ・一営業マンが売上の多くを作っていて、その営業マンが辞めたとたん、売上が大きく下がった。

原因


経営者が、一社員に会社の重要な業務を任せすぎてしまっていた。
会社にはいろいろな職務がありますが、ある職務において、全面的に任せられる社員が出てくるまでは、経営者はその職務を兼ねるべきであり、はじめからある職務について全面的に任せようとすると、上記のようなひずみが出てきてしまいます。
また、ある職務を全面に任せられるのであっても、経営者としてはその職務について一通り熟知し、その担当者と情報交換すべきであります。

  • ◎経理であれば、経営者も仕訳や銀行入出金明細を時々チェックし、問題がないか見ます。
  • ◎発注業務においては、相見積状況、発注履歴などを時々チェックして、不自然な動きがないかを見ます。
  • ◎営業活動においては、営業マン個人のスキル便りではなく、会社全体で、営業成績があげられる仕組み作り、例えば会社としての顧客リスト管理、営業マンの教育研修、ロールプレイングなどを行います。

企業規模がまだそんなに大きくない中小企業です から、これらの目配りは、経営者としてできるはずです。 もっと企業が育っていくと、経営幹部に任せていったり、内部監査制度を整えていったりしますが、今のうちは、経営者がすみずみまで見ていかないと、社内はしっかりしませんし、あるきっかけで業績は急降下したりします。

今回述べたことは、会社経営において大変重要なポイントですので、自社はどうであるか、振り返ってみてください。

 

(16)経理社員として会社の資金繰りにどう貢献するか

(Q)

社員30名程、年商10億弱の卸売業の会社の経理をしていますが、銀行関係は社長が一人で行い、銀行員と話す機会がありません。相談は会計士としているようです。どういった面で、会社の資金繰りの役に立てば良いかお教えください。

また、当社は卸売業で、長年支払条件を細かく整理できていません。先代の社長(故人)も整理には消極的でした。理由は分かりません。 ついては、改めて得意先へ支払条件を聞くと、当社の信用不安と取られてしまうことも有るのでしょうか。新しい若い社長は、整理を承認しています。

(A)

御社の状況では、経理としては、まずは経営者に、損益や資金繰り、部門別会計などの経営数字を、経営判断材料として提供していくことで、貢献できるとともに、経営者もあなたを信頼するようになり、経営計画や予定資金繰り表なども経営者と一緒になって作っていけるようになるのではないでしょうか。

また、支払条件の交渉については、相手から見ると、まず間違いなく、資金繰り不安を真っ先に思い浮かべてしまいます。あなたの会社の資金繰りに問題があるのであれば支払条件の交渉は行っていかざるをえないですが、資金繰りにそれほど問題があるのでなければ、支払条件の交渉を行うことは慎重に判断されるべきです。

 

(17)見積りを出して受注を獲得する企業の再生方法

企業は、見積書をいくらの金額で出すかにより、その商談から獲得できる粗利益が大きく変わってきます。

■例えば、弊社のある顧問先様は、リフォーム業ですが、営業マンが4名、います。
ここ2年の、営業マンごとの、受注件数、売上金額、粗利金額、粗利率を分析してみました。

営業者名 受注件数 売上金額 粗利金額 粗利率



194
135
137
197
116,147,780
46,473,760
127,566,052
179,985,697
23,794,127
16,463,658
41,175,506
28,300,003
20.5%
35.4%
32.3%
15.7%

Cさんは、しっかり粗利益を出せる見積りを出すために、リフォーム業において原価部分である、材料業者や外注業者に相見積りをとり、原価を抑えながら、正確な原価の積算をした上で、粗利益をとれる見積作りにていねいに時間をかけていたのです。
一方Dさんは、売上だけで見ると一番多く、それだけ外に出ている時間が長いため、一見、営業マンとして仕事やっているように見えます。

しかし見積りは適当で、原価は過去の工事データから適当に拾ってくるだけ。とにかく売上を増やそうと、安売りにはしっています。 またDさんの特徴は、見積りにおける予算と、実績において、ぶれが大きい、ということです。
例えばある工事において、売上100万円、原価70万円で見積りをたてても、実際に原価が90万円かかってしまい、粗利益が10万円しかなかった、このようなことが多くあります。

原価の積算において、適当に計算していたためです。

一方Cさんは、原価の積算をしっかり行っていたため、予算と実績のぶれはほとんどありません。
売上はDさんの方が多いですが、粗利益はCさんの方が多いです。
会社に利益貢献をもたらしているのは、粗利益を多く稼いでいるCさんの方です。

ちなみに、AさんはDさんの紹介でひっぱってきた社員で、Dさんに営業のやり方、見積書の作り方を教えられているので、やはり粗利率は低いです。
Bさんは、粗利率は高いですが、稼いでくる売上が少なすぎます。営業マンとしては不向きでも、原価の計算をしっかり行い、着実に粗利益のとれる見積書を作ることができます。

このような分析から、私はこの会社の利益向上→再生のために、次の戦略を考えました。

戦略A
他の営業マンは、Cさんに学ぶべき。Cさんを講師に、研修を行い、また見積書の作成にあたってのマニュアルを作り、見積書作成業務の標準化を図る。
戦略B
営業は苦手だが着実に原価の積算を行い、粗利益を出して予算と実績のぶれも少ないBさんを原価積算、見積書作成担当にし、AさんとDさんが外をまわって獲得してきた案件をBさんが見積書を作るように、分業制とする。

戦略Aは、営業マンの見積書作成能力の底上げを目指した方法、戦略Bは、底上げというよりも各社員の強みを生かし会社全体でしっかり利益を出せる体制を組む方法、です。
受注を獲得する際に見積書を出す企業であれば、このように営業マンごとの売上・粗利益を計測してみてください。

そうすると、営業マンごとに数字が大きく異なることが判明し、経営者のみなさんは驚かれることと思います。
そして、どうやって会社全体で利益を上げていくか、対策を練ることができます。

 

(18)父の会社に役員として入った場合、保証人・担保を要求されるのか

(Q)

私は現在保険代理店を個人で経営しています。今は不動産賃貸をしている父の会社があります、以前は精密機械の部品製造、加工の仕事をしていました。不景気のあおりを受け受注が減り建物のみ残りそこを賃貸しております。当時の負債がまだ残っており地元の信用金庫にお世話になっております。条件変更もしてもらい返済期間を延ばし家賃分を返済に回しています。

最近になり私はその父の会社の役員とさせてもらいました、今の私の仕事の事業拡大のため法人を利用したいとの目的がありました。
ここで1つ不安なのは銀行が私を役員にしたことで保証人の追加や担保を要求してくるのではないかと言うことです。
もし銀行からこのような依頼がありましたらどのように対処したら良いでしょでしょうか。私は住宅ローンも抱え、まだそれほどの余力はありません。家族もいますし、どうしたらよろしいでしょうか。


(A)

代表取締役として入るのならともかく、代表ではない取締役では、取締役になったこと自体では保証の追加を要求されることはありません。
ただ今後、お父様の会社の条件変更期間の更新、という場面において、保証人や担保の追加を要求されることはありえます。あなた自身が、資力があったり、もしくは不動産を所有していたりするのであれば、信用金庫はそれをねらって保証人や担保の追加を要求してくることが十分想定されます。

ただそれは、やりすごすことはできます。しかし問題は、あなたがお父様の会社に役員として入っていることです。そもそも、あなた自身が法人を設立し、そこで保険代理代理店の事業など、行うべきです。それを、お父様の会社だからといって、条件変更済の負債を抱えている、事業の結びつきもない法人を利用するのは方法論として間違っています。すぐに役員を退任して新規法人を立ち上げるべきではないでしょうか。それがまた、お父様の会社の負債の保証人・担保追加要求のスキを信用金庫にも見せないことにもつながります。

 

(19)「銀行つきあい日記」のすすめ

企業の永遠の存続にとって、一番のカギを握るのが、資金繰り

■そして、資金繰りをスムーズにまわしていくことにおいて、重要なのが、銀行からスムーズに融資を受けること。

毎月の利益で生まれた現金で融資返済ができている中小企業なんて、1割もないので、ほとんどの中小企業にとっては、定期的に融資を受けていくことが、資金繰りをずっとスムーズにまわしていくための重要なポイントになります。

融資がパタリと止まりそうな時には、リスケジュール、つまり銀行と交渉して、融資の返済金額を0円近くにまで抑えてもらうことが必要です。
融資が出なくなりそうなことを察知するため、銀行があなたの会社のことをどう考えているのか、常に注意をはらっておかなければなりません。
★経営者や、財務経理担当者であるあなたは、常に気にしておかなければなりません。

■そこで、私が、中小企業の経営者や財務経理担当者の方が、やっておいた方がよいと思うのは、銀行つきあい日記、つまり、銀行と接触するたびに、次のような記録をとっていくことです。

○月○日○時、○○銀行の担当者○○氏が当社を訪問。当社は資金繰り表によれば3ヶ月後に5百万円の資金不足が発生するため、1~2ヶ月後には最低2千万円の運転資金を受けておきたい、ということを○○氏に伝える。
○○氏は、「弊行は融資を半年前に出しておりますので、まずは他行にあたってみてくれますか」と言われてしまった。今までこのような話をした時には「すぐに稟議をあげて手続きを勧めます」と言ってくれるものだが、スタンスが変わったのか?」

 

(20)試算表を銀行に提出する重要性

あなたの会社は、銀行に試算表を定期的に提出していますでしょうか。

試算表は
  • ■銀行があなたの会社の業績を知るためには重要な資料となります。
  • ■ただ銀行から求められてから試算表を提出するより、あなたの会社から銀行に試算表を提出した方が、銀行から見れば、あなたの会社に対する信頼性が高くなるでしょう。
  • ■試算表の提出は、3ヶ月に1度はやった方がよいですし、できれば毎月、試算表を提出した方がよいでしょう。

 

★そもそも銀行は、なぜ中小企業への融資に慎重になるのか★
その大きな理由の一つは、企業の情報開示不足、です。

試算表の提出もなく、1年に1回、決算のときにしか、経営数字が分からない会社は、銀行としては融資を出すのがこわいでしょう。
そもそも試算表を作っていない会社は、1年に1回の決算書ができなければ、1年たってみなければ、黒字か赤字かも分からないのです。その間、赤字であれば黒字にする対策をすぐにうたなければならないものを、1年に1回しか業績が分からなければ、そもそもその対策を行うきっかけができないのです。

試算表が毎月できてこない会社は、すぐに、試算表が毎月できてくる体制を作ってください。

また、今まで融資を申し込んだが、だめであった新規の銀行へも、試算表を送っておくのも、融資提案のきっかけ作りとして、よいことでしょう。
銀行は、たえず新規融資先を探しています。融資取引のない企業から試算表が送られてこれば、必ずチェックをし、融資提案ができるかどうかを検討します。また既存の融資がある企業でも、試算表を銀行員が見ることにより、新たな融資提案ができるかどうかを考えます。そのきっかけとして、試算表は大変有効なものです。

 

(21)融資以外の取引を銀行から言われている

(Q)

メイン1行のみの取引から、メイン1行+2行の3行取引を現在行っております。支払いや振込みはメイン行の当座で、サブ2行は専ら融資のみのお付き合いです。

この状態になって1年半がたちました。最近サブ2行から、積立や振込や支払い等(特に積立)、融資以外のお付き合いもしてほしいと度々言われます。私は会社の財布が2つも3つもあると経理が複雑になるような気がして前向きになれません。
積立も融資を受けている以外の銀行に万が一への備えとしてプールするならともかく、積立しながらそこの銀行で融資を受けるようなことをすると、支払い金利が増えてしまいます。

必要な当座残高以外はなるべく返済し、債務償還年数や流動比率などの指標をなるべくよい数字にしたいと思っております。 しかし銀行の人には「融資も預金の残高もみなさんお付き合いしてくれてますよ」と当然のように言われます。お付き合いも必要だとは思いますが、何より決算書の数字が大切だと思っておりますので・・・・
お付き合いが薄いと融資姿勢に悪影響があるのでしょうか?

(A)

銀行は、取引企業に対し、融資の取引だけではなく、「総合的」な取引を求めます。例えば、積立や振込など、いろいろな取引を求めてくるでしょう。

また、銀行の融資稟議では、その企業とどのような取引を行っているかは必ず記載されています。預金の平均残高が高かったり、振込などにより多くの手数料が銀行に落ちていれば、銀行の考え方としては、トータルで考えてその企業とつきあうメリットが大きい、となります。

ちなみに融資の稟議書では「当社は融資の他、振込、外為取引などで月5万円以上の手数料確保もできている。、さらなる取引深耕をはかりたく、本件融資したい。」というような書き方をします。銀行と融資だけではなく、いろいろな取引を行っておくことは、それだけ融資審査において有利に働く、ということです。

こう考えると、決算書の数字があまり悪くならない範囲で、融資以外の取引もしておいた方がよいでしょう。

 

(22)リースと決算書

(Q)

弊社では貸借対照表にリース資産・リース負債を載せるようにしております。
このたびリースがすべてなくなり、設備等、すべて信用金庫からの借入れで資金調達を行いました。

今回、新たに設備の借入れを申し込み、承諾はしてもらいましたが「借入金が売上の2/3になってますから・・・」「ちょっと難しくなってきますよ・・」とのこと。ここ3年、経常利益は5%以上あります。
銀行などはリース負債などはあまり気にしないのでしょうか?
今まで支払金額(リース金利)が多くなるのを嫌いリースをしませんでしたが今後は考えた方がよいのでしょうか?


(A)

銀行は、決算書を企業から受け取ったら、そのままコンピュータに入力し、各種財務指標を算出し、融資先企業の「格付」を行います。 負債が多いと、それだけ企業の財務指標は悪化します。

そう考えると、財務指標が良い決算書を意識して作るには、借入ではなくリースを使う方が良いし、またリース資産・負債は決算書に載せない(詳細は顧問税理士の方にご相談ください)方がもっと良いことになります。

銀行は、借入金を月商倍率、つまり、月商の何カ月分の借入があるか、でみます。通常の企業の場合、4カ月以下がまずます、4カ月以上8カ月以下がやや多い、8カ月以上が多い、という感覚です。ということは、売上(年商)の2/3、つまり8カ月、ということは、銀行は、借入金水準が高い、という見方をしてしまいます。借入金が多くなると、それだけ、それ以上の借入がしにくくなります。そう考えると、あなたの会社が銀行からもっと融資を受けていきたいということであれば、なるべくリースを使って銀行からの借入の方は多くしない方がよい、ということになります。

 

(23)車両のリース化により決算書の内容は良くなるか

(Q)

知人の紹介で社用車のリースバックを提案する会社が営業にきました。
弊社の車両保有台数は13台で帳簿価格は1126万円です。
車両はメーカー系列のクレジット会社にて割賦で購入しており、残債が898万円あります。
弊社は車両以外の資産がほとんど無く、車両をリースバックすると資産がなくなります。

なお、弊社の決算は4月末で年商は5億円、利益は年商の10%程度を見込んでおります。
また、キャッシュフローも特に問題がないので、リースバックをするメリットが見出せませんが、リースバックを行うことで、決算書の内容が良くなったり、また、銀行からの格付けが上がる等のメリットがあれば検討したいのですが、メリット・デメリットにつきまして教えて頂きたくお願いします。

(A)
現状では、貸借対照表において車両は資産、割賦残債は負債(未払金)ということになりますが、社用車のリース化によって、その資産・負債勘定は消えることになります。
そうすると、総資産が圧縮されて、総資産に対する純資産(自己資本)の比率が相対的に高まり、自己資本比率が向上します。 どれだけ改善するかシミュレーションを行った上、リース化により今後の総額支払いがどれだけ削減されるかなど、他の影響も見ながら、検討されるとよいでしょう。

 

・リースはリスケジュールできるか?

(Q)
すでに金融機関へのリスケをして、現在経営の自主再建に奮闘しています。
さらに削減できるものや、調整できるものがないか日々見直しているところです。そこでお尋ねしたいのですが、OA機器などのリース料などもリスケジュールすることは可能でしょうか?
また、その場合のデメリット、注意点などありましたらアドバイスいただけると幸いです。よろしくお願いします。

(A)
■リース会社は、支払えなくなったらリース物件を回収できるので、リスケジュールという概念を持っていません。しかし、リスケジュールできる可能性がないこともありません。

ポイントは、2つ。

1つ目のポイントは、リース会社1社あたりのリース料総額です。それが3,000万円、4,000万円ぐらいにまでなっていれば、交渉に応じてくれる可能性が高まります。
2つ目のポイントは、モノが中古市場でどう価格付けされているか、です。リース物件は、市場価値が下がって、リース残高を全て回収できないケースが多いです。その場合、リスケジュールに応じてできるだけ回収しようとする場合があります。このケースでも、売却して残高を一括請求されることもあります。逆に中古市場で流動性の高い商品であれば、リース残高よりも高く売れるので、引き上げて売却しようとします。 このように、リース会社のリスケは、中古市場の動向に大きく左右されます。

■またリース会社が、何系かにもよります。

リース会社の親会社が、リース物件の製造元のメーカーである場合、そのモノを引きあげて自分たちで転売することが多いです。
独立系のリース会社。ここもリスケジュールは困難で、交渉に乗ろうとしないことが多いです。
銀行系のリース会社は穏健なところが多いです。親会社である銀行がリスケジュールに応じてくれたら、それに合わせて子会社であるリース会社の方もすんなり承諾してくれる場合が多いです。

 

・銀行員が嫌がる決算書

利益が赤字であったり、債務超過であったりするのはもちろんですが、それとともに、よく分からないところにお金が流れているように見える決算書です。

■例えば、次のような決算書です。

1.経営者に、多額の貸付金や、仮払金が出ている。
経営者が会社のお金を私的流用してしまったり、もしくは粉飾決算において赤字を隠すところを経営者への貸付金にしてしまっているパターンが多いです。もしくは、領収書を出せないリベートを、経営者個人が払った形にして、そのお金は会社から出ている、というパターンもあります。
2.何かよく分からない会社に対し、多額の出資金や貸付金がある。
2については、どこかから湧いて出てきた儲け話に経営者が乗ったものであったり、関係会社を増やすのが好きな社長がその関係者の設立や関係会社の資金繰りのために、お金を出しているパターンが多いです。

あなたの会社の決算書を、一度見てみてください。

貸借対照表の中で、まず、次の勘定科目を見ます。

「前渡金」「立替金」「前払費用」「貸付金」「未収入金」「仮払金」

これらは、雑勘定といって、銀行員の感覚で言えば、「本当にこれって資産としてみなしていいの?」と考えるものです。

これらの金額が多額であると、銀行員としては、勘定科目明細でそれらの内訳を一つ一つ見て、資産としてカウントできるものか、それとも資産とみなせないものか、一つ一つ吟味していきます。
資産としてみなせないものは、純資産からひいて、実質の貸借対照表を銀行は作ります。

例えば、貸借対照表の純資産が5百万円ある会社が、一方、貸付金が経営者に対して8百万円あり、それらが全て不良資産(ちなみに経営者への貸付金はたいてい不良資産とみなされます)とみなされると、5-8=△3百万円
の実質純資産、つまり実質債務超過、とされ、融資審査において大きなハンデとなります。
また「投資有価証券」「出資金」などの金額が大きくなると
銀行員としては、「なぜこんなところにお金が出ているの?もしかして、以前に出した融資が流れてしまっているのでは・・・。」と見てしまいます。

■決算書を良く見せようと、粉飾決算を行う際にこれらの勘定科目の金額が大きくなったり、もしくは本当にお金が流れていて、それが返ってくる見込みがなくこれらの勘定科目が大きくなったりするパターンがありますが、いずれにしても、資産としてみなせないとされれば、その金額分、純資産から差引きされますので、融資審査においてはそれだけ不利になる、ということです。

 

・銀行が、ノンバンクや消費者金融の借入情報を見るようになった?

(Q)

信用組合に緊急保証を使って新しく取引を申し込むことになりました。
必要書類の中に「個人情報の取扱いに関する同意書」というものがあります。
個人信用情報機関は全国銀行個人信用情報センター、日本信用情報機構(JICC)、CICです。
登録情報の中に「借入金額、借入日、最終返済日等の契約内容およびその返済状況」があります。
以前は銀行などの場合、CRIN(※)による事故情報の共有だけだと認識しておりました。
(※CRIN:情報交流CRIN(Credit Information Network:クリン)、全国銀行個人信用情報センター、JICC、CICの間で、各機関の延滞、代位弁済等の情報等を相互利用することであり、いわゆるブラック情報・事故情報のみを相互利用している。)

法改正の影響などで銀行などの金融機関も、消費者金融などの貸金業者と同じように開示請求し、借入額や件数なども確認するようになったのでしょうか。
そうだとすると全銀協・JICC・CICすべてになりますので私や会社が借りている現在の件数8件、500万円を超える金額のノンバンクや消費者金融の利用が分かってしまい、融資は難しくなってしまう気がします。

(A)

例えば、JICCのホームページで、どこの金融機関が加盟しているか検索できますが、それで「信用組合」と検索してみますと、19件の信用組合が、ICCに加盟していることが分かります。また「銀行」で検索すると、72件となっています。
 → http://www.sokuteitool.com/asp/ja.html?u=FI0824&c=1878&f=18

多くの銀行や信用組合等が、JICCに加盟し、JICCの情報の中心であるノンバンク、消費者金融などの借入情報を見るようになってきています。
とすると、Y様の場合、ノンバンクや消費者金融からの借入情報が信用組合にも分かってしまうので、融資審査においては不利になってしまいます。

そもそも、ノンバンクや消費者金融に500万円もの借入があるということは、信用組合や銀行から思うように融資が受けられず、一方で返済は無理にでも進めており、そのしわ寄せがきているのではないでしょうか。このような状態の会社であれば、すぐにでも銀行と交渉して返済金額を減額し、資金繰りをまわしていく対策を考えていく必要があります。

 

・金利を下げる方法

企業側は意識をもって金利交渉にのぞめば、少しでも低い金利にすることができ、自社が負担しなければならない支払利息を、減らすことができます。

■銀行が企業に融資をする際の貸出金利、これはビジネスローンや、制度融資などはじめから金利が決められている融資商品でないかぎり、企業と銀行との交渉によって、決定されるものです。

銀行には、この企業に融資をするには、これだけの金利を提示しなければならないという表があります。
そこでは、その企業の格付けや、今回の融資の返済期間、また保全率(総融資額のうち、担保や保証協会付などでどれだけの金額がカバーされているかの割合)などから、これだけの金利を提示しなければならない、ということが導き出されます。

しかし、それはあくまで「目安」でしかありません。結構、担当の銀行員の「なんとなく」の感覚で、提示してくる金利が決まってしまうのです。ということは、企業側の姿勢により、金利はある程度、低くすることが可能、ということです。

金利を低くしていくために、企業側としてやっておくべきことは2つ。
1つ目ははじめから金利が決められている融資商品でないかぎり、融資にあたって銀行が提示してきた金利には、必ず抵抗するのです。

なかなか融資が受けられないような企業でも、かまいません。
その場合には「この金利では、うちの経営状態ではとても払えないよ。」というような方向から、銀行が提示してきた金利に抵抗していくのです。

そのように抵抗し、交渉していく中で、銀行はその交渉に乗らず、下げてくれないかもしれません。
しかし、金利にうるさい会社、金利にうるさい経営者、と印象付けることに価値があるのです。

そのような印象を担当の銀行員に印象付けることにより、次回の融資では、多少なりとも金利を抑えて提示しよう、という意識が、担当の銀行印に働くのです。
2つ目取引銀行を増やす、ということです。
金利には、競争原理が働きます。複数の銀行が融資を出している企業は、銀行としては自分の銀行の方から融資を受けてほしいと思い、金利を低めで提示しがちになります。 また複数の銀行から同じタイミングで融資の提案がきている場合、低い方の銀行の提示金利を高い方の銀行に伝えることにより、高い方の銀行が、より低くした金利を提示してきて、そこで競争させて、一気に金利を引き下げることもできます。

  • ■このようにして、金利を低くすることができれば、あなたの会社の利益を増やすことができます。
  • ■要は、経営者、もしくは財務経理担当者として、金利に強い意識を持つことです。
  • ■金利に強い意識を持った企業は、銀行から受ける融資の金利水準は低くなります。

 


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