経営ノウハウ(3)

(99)『リーダーシップの取れない幹部に未来はない』

<事例:年商約68億円、社員数約110人の卸売業A社>

B部長が就任した事業部は大赤字であり、部下全員が目標から逃げ、モチチベーションが低下していた。また会社のお荷物的な事業部であり、社長ですら「B部長でダメなら撤退しようか」と考えている状態であった。

B部長は現状を把握するため、部下全員と個別面談を行なった。部下から出てくる不平不満や愚痴の多さ、モチベーションの低さに驚きつつも、どこに問題の本質があるのか、なぜ赤字になっているのかを、事業部のデータなども分析しながら隈なく探した。

次に部下全員を集め、現状とあるべき姿のギャップ、また赤字脱却のために何をしなければならないのかをわかりやすく説明し、改善策を出した。 改善策には担当と期限が明確にされており、一つひとつ説明した後、頭を下げて協力を仰いだ。また、すべての情報をB部長に集まるようにするため、報・連・相(報告・連絡・相談)を部下に徹底させた。

「ピンチから逃げ出さなければ必ずチャンスになる」という信念のもと、B部長は「今、何が大切か」を常に考えながら的確に指示を出し、自ら率先垂範で部下に行動を示したのである。

そして1年後、数十万円ではあったが利益を出し、黒字を達成したのである。

B部長が逃げずに行なったことをまとめると、以下のとおりになる。

決めたことが実行されていない場合や、仕事から逃げた時には鬼になる一方、新規受注や単月の目標をクリアした時には仏のようにやさしくなり、部下と一緒に喜んだ。叱ると褒めるとをうまく織り交ぜながら、目的や目標に直面し、現実から逃げない体質をつくっていった。

1.トップの方針を理解(なぜ、自分がこの事業部を任せられたのか)
2.現状認識(問題の本質はどこにあるのか、第一ボタンを掛け違えないよう徹底的に分析)
3.改善策の発表(自らの事業部方針を立てた)
4.報・連・相の徹底を行なった(今、何が大切なのかを的確に判断するため。報告してこない部下には何度も何度も呼び出し報告させた)
5.率先垂範で部下に示した(ピンチから逃げない体質づくり)

"自分にも厳しく、部下には愛情をもって厳しく"を心がけることが大事なのである。リーダーシップの取れない幹部に未来はないであろう。

 

(100)『リーダーたるもの、前を見よ!』

人は変化できないことが赤字の原因とわかっていても、同じことを繰り返しているのである。

★ある会社では3年間赤字続きで、このままのやり方・行動ではだめだとわかっているのに、今までと同じマーケット、同じ顧客、同じ商品、同じ行動、同じ提案をしている。

原因
●「どうせ何を言っても社長(上司)は聞いてくれない」。
●新しいことを実行しようとする時、「これは前例がないから失敗すると思う」。
●「こういった理由でできないと思う」といった、できない理由を主張するリーダーが多く生息している。

問題点をそのままにしておくから弱みになる。問題点を把握し、解決する仕組みを構築すれば強みに変わるのである。

対策
●リーダーは、「どうすればできるのか」と考えていかなければ何も変わらない。
●今までしたことがないことを実行することで現状が変えられる。
●できないと思われることにチャレンジするから差別化になるのである。

リーダーシップとは・・・ 「今一番大切なことは何か」を的確に判断し、部下を前向きに動かし、結果として目標を達成させる総合力である。

 

(101)『物選び・人づくり・金づかい』

★企業経営は「物選び・人づくり・金づかい」である。時代が激変しているが、この三要素は変わらない原理原則だ。

1.物選び
企業経営の原点「WHAT」。何を事業とするのかが物選びである。自社の売上がダウンしているとすれば、市場環境・顧客ニーズにマッチングしていない証明である。企業は環境適応業であり、市場環境・顧客ニーズに合わせた「商品・技術・サービス」を開発・開拓することだ。
2.人づくり
事業戦略・商品戦略・技術開発戦略など立派な戦略を策定しても、「実行」するのは「人」である。人によって戦略成否は決まる。誰を担当にして、リーダー・責任者を誰にするか。人づくりの「妙(みょう)」である。
人は「経済的豊かさ」「精神的豊かさ」を求めて会社に入社する。経済的とは、賃金水準が他社と比較して若干高いレベルが必要であり、精神的とは社会的にも意義のある仕事をして、社内外から存在を認められることが豊かさにつながる。よくやった者への評価・分配のしくみが「人づくり」を左右する。
3.金づかい
企業の赤字は収益と経費のバランスが取れなくなった結果である。「出るを止めて、入るを計る」金づかいが必要。
財務三表と言われる貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)は企業経営の通信簿である。借入金は限度(月商3カ月分)を超えていないか、総資産利益率は何%か、自己資本比率は何%か、資金繰りに不安はないか?金使いの確認が必要だ。

 

(102)経営者必見『発想の転換と新事業』

この厳しい経済環境下でも「ピンチはチャンス」と考え、儲かる仕組み作りや次の事業を考えている経営者は多くいる。

A社は新事業を展開するのが非常にうまい会社で、社長にそのポイントを聞いてみたところ、以下の2点が大切とのことだった。

1.中小企業の幹部・社員は新事業を考えることはできても、何をやるかを決めて推進することはできないので、社長が新事業(何をするか)を決める。
2.何をするかを決めたら、新事業担当者に任せきるのではなく、自立できる所までは社長も一緒に汗をかいてすること。

社長が何をやりたいかがわからない時に、自社の幹部・社員の知恵を借りて実行するケースのほとんど
失敗
 

経営者がまず「何をやりたいか?」「何のためにするのか?」をよく考え、社員と一緒に行動することが大切である

 

(103)『企業体質を転換する5力』

経営環境が急変する中、自社の事業戦略の再構築を進めている企業は多い

どれだけ精緻な攻めの戦略を構築しても、それを展開するだけの企業体質が備わっていなければ、戦略の実行は図られないものである。

企業体質とは ・それぞれの企業で培われた社員の意識や行動スタイル
・経営者の価値観、業種特性
・組織体制
・評価の仕組み
・外部からのイメージ
・顧客の要求内容
などによって形成されるものである。

そこで提案したいのが「企業体質の転換」である

A社の体質転換5力
1.徹底力:会議の決定事項の実行度を、幹部が1週間後に店舗に訪問チェックする
2.変化対応力:全店舗四半期に一度、店内のレイアウト変更を実施する
3.現場力:幹部社員は月2回、店舗業務支援(店内販売業務)を実行する
4.共有化力:毎週1回幹部ミーティングを行い、現場情報を共有する
5.付加価値創造力:1人当たり月粗利100万円(現状70万円)に向けた取り組み強化

以上がA社の体質を転換させた「5力」である。あなたの会社の体質はどうであろうか?体質転換が必要であるならば、ぜひ自社の「5力」を見出すことをおすすめしたい。

 

(104)『"信頼"を築く3つの当たり前』

"信頼"とは特別なことではなく、ごく当たり前のことの積み重ねである。
言葉通り"○○さんを「信」じて仕事を依「頼」する"ことであり、社内外問わず基本動作ができていない人には仕事は来ないものである。

1.期限を守る
お客様に対して期限を守ることは当然であるが、社内における決定事項が期限どおりに守られていないことが多い。ひとつの仕事が遅れるとその後のアクションも遅れ、連鎖的に影響が出る。期限が決められている仕事は、どんなことがあってもそれまでにやり切ること。
2.質問に対して明確な回答をする
「○○の件はどうなったか」という質問に対して言い訳などに終始し、結局質問の内容に答えていないことが多い。 話は結論→理由→経緯の順で話すこと。
3.書類は正確に出す
やっつけ仕事や意欲に欠けていることが、書類の数字間違いや誤字・脱字の多さに表れる。出す前に自分でチェックし、第三者にもう一度チェックしてもらうこと。

以上3つのことはビジネスの世界では基本的で当たり前のことである。
「言われなくてもわかっている」「当たり前のことだ」と皆様も思われるでしょう。
しかし実際にできている人は少ない。安心して任せられる人とは「期限を守り、明確な回答をし、正確にすすめられる」人である。

 

(105)『5匹の鬼を従えよう』

★5匹の鬼をテーマに各々の着眼点を再度整理して、マネジメントのヒントに供したい。

1.「塊」(ターゲットとする客層というかたまりの決定)
団塊世代、そのジュニア、元気シニア、ミドル、ギャルなどの生活者の層、また大手、中堅、中小、零細などの規模別法人層や業種別の区分け。さらにアジア、中国、インド、都道府県などのエリア別もある。
2.「魅」(ターゲットに訴求する自社の魅力ポイントづくり)
品質、納期、価格、機能、効用、サービス、システム、人材などの要素を磨きながら、他社との違いを打ち出す力点を決め再構築する。
3.「魂」(トップやリーダーが迷わぬ魂を込める)
上層部に迷いがあれば、チームパワーを発揮できない。不退転で臨めるように、現状認識力と判断力を高めながら全エネルギーを集中させる。
4.「醜」(社会に背く醜い行為を防止する)
法律、ルール、マナーを守り、守らせる公明正大な風土を培っていく。 「法律は守るのが当たり前」という考えを浸透させ続ける
5.「魁」(他社にさきがけて着手し成功させる)
前例がないことに挑戦する勇気を持つ。成熟・衰退傾向を打破する「需要創造」への飽くなきフロンティア・スピリッツを奮い起こす。不便、不安、不快などの「不」に目を向けることで潜在ニーズ、ビジネスチャンスを発見できる。そして、すでに伸びている分野や新技術を自社に結合させることだ。

 

(106)『会議を見直す』

各社の会議に参加する機会が多いが、そこでよく遭遇する問題を紹介したい。
自社の会議改善のヒントとしていただきたい。

1.会議の開催日程が決まらない
毎月定例で開催される会議の日程が、開催日の1週間前になってようやく決まるという会社は多い。
せめて"来月の会議日程は今月決める"くらいの計画性はあっても良いと思うのだが、そうしない。
その理由として「その頃にならないと予定が立たない」ということをよく聞くが、このパターンだと忙しくなると会議参加率が間違いなく悪くなる。
さらに、直前で参加メンバーの日程調整をする役回りの人が必要になり、その調整の労力自体が無駄である。
2.時間生産性を気にするあまり、逆に議論が中途半端になる
「会議は1時間」と決めて行うのは良いのだが、所要時間を守ろうとするあまり議論が中途半端になっているケースもある。
戦略課題や営業対策などの協議は、1時間ではまとめきれないであろう。会議開催前の準備が不十分ならなおさらである。
難しい議題の会議は、時間を気にせず行える時間帯(夕方など)での開催といった工夫は必要だろう。
3.「何も変わらない」会議
「報告のみで議論がない」「結論が出ない」などがこのケース。
客観的に見て、"何が決まったのか""それで本当に業績向上や業務改善が図れるのか"疑問に感じてしまう。会議を振り返り、「誰が、いつまでに、何をやるのか」という要素がひとつもなければ、真の意味での会議とは言えないだろう。

 

(107)『企業体質改善の着眼点 全社で取り組む5S活動』

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字から出来ている用語であり、ビジネスの世界で広く普及しているが、単なる社内の美化活動と誤解されていることが多い。5Sの真価は企業体質の改善にあると言える。
5S活動はその運用次第で、リーダー人材育成や組織風土改革を実現することが出来る。

全社的5S活動の成果

・組織としての全社員の意思統一
・管理職者と中堅クラスのリーダーシップ向上
・チームワークの強化
・方針や業務、在庫の見える化
・ムダの削減による業務およびスペースの効率化・・・など

 

(108)『非常事態時の経営計画を策定せよ』

これからの時代を生き残っていくためには、どのような経営計画が必要なのであろうか。

非常事態時の経営計画書を策定する際のポイントは、次のとおりである。

<見直しすべき着眼点とその内容>

販売・仕入・生産・資金・人員・投資・組織計画、関連・協力先との関係について、それぞれ見直しをかける必要がある。それぞれの内容については、営業収支で○ヵ月赤字が続いた場合は、○○までコストダウンを図るといった具合に、時間軸と実行内容を明確にして策定すると良い。

従来の経営計画とは、成長していくために目標を立てていけば良いものであった。すでにその考え方は過去の産物である。時代の流れが急に変化したとしても、それに合わせた計画をしっかり準備しておけば非常事態を乗り切り、これからの時代に成長もできるであろう。
この機会に「非常事態時」を乗り切れるような経営計画を策定していただきたい。

 

(109)自己啓発『"点火型"人間へ』

★自分のモチベーションをコントロールすることは非常に大変であるが、経営者に最も強く要求される能力は「パッション(情熱)」である。

情熱には次の5つの型がある。
1.自ら自分に火をつけられる「自燃型」
2.自ら燃えるどころか他人にも火をつけられる「点火型」
3.2の「点火型」にマッチを擦ってもらって燃える「可燃型」
4.全く燃えない「不燃型」
5.自分が燃えないどころか他人の火を消してしまう「消火型」

★当然ではあるが、経営者は「点火型」でなくてはならない。
★「情熱」なくして目的を達せられないのも明らかである。
★社員がヤル気を出すかどうかの8割が経営者の責任である。

社員の"業績をつくるピラミッド"

成果(業績),過程(プロセス),能力(スキル),姿勢(ヤル気)
左記図より、やはり情熱(=ヤル気)は必要であり、「自燃型」が望ましい。少なくとも「可燃型」でなければならない。
★社員からの不満のほとんどが愚痴に近い。 聞いている同僚たちのヤル気を削ぐ「消火型」の行為である。目の前の事象を前向きに捉えるか、後ろ向きに捉えるかは、その人自身の心の持ち方ひとつである。

 

(110)『企業体質改善の着眼点 3現・3即・3徹』

★改善・改革の心構えとして「3現・3即・3徹」という言葉がある。この意味は次の通り。

3現・・・現場・現実・現物 何かを変えたい!」と思ったら現状を知る必要がある。その時は、現場に出向き、現状の姿を捉え、具体的な事象を見て聞いてまとめるのである。そして全員が納得するまで原因をしっかり追求し、改善策を立てることが重要である。
そこまでして初めて3現が実行できたといえる。
3即・・・即時・即座・即応 「何か異常が起こった!」時には、すぐにその場で対応する癖をつけるべきである。異常だけでなく、「沢山の仕事をこなす時」もそうである。
すぐにその場で処理し、決して仕事を溜め込んではいけない。毎日コツコツと処理していけばほとんどこなすことができる。
3徹・・・徹頭・徹尾・徹底 「あきらめようかな?」と思ったら、徹頭・徹尾・徹底を自問自答していただきたい。これは「最初から最後まで徹底的にやりぬく!」、「とにかくやり通す!」という意味である。この迫力を常に抱いた前向きな人材が実に少ない。そのような人材を育て上げた企業は活き活きしていて風土も良い。また平均年齢が高くても活力があり、不況でもめげない強さがある。

★「3現・3即・3徹」を普段の仕事の中で意識し、実行したいものである。

 

(111)『どうなる?どうする?今が実力』

★自社を取り巻く環境変化が大きく変化している昨今、打開策を考える際


まず自社の正しい現状認識が必要である。

★なぜ赤字なのか?

原因は自社の商品・サービスの価値が顧客に受け入れられていないと考えること。
不景気で倒産する会社は世の中に1社もない。倒産するのは自社を取り巻く環境変化に対応できない会社であり、原因は会社の内部にある。

★ではその原因は何か?

1.強みが陳腐化している 会社には必ず他社にはない持ち味・強みがある。
圧倒的なものでなくとも他社と比較して優れている点である。
ただし過去の取り組みにしがみつき、進化させる努力がなくては、その他大勢の中の「価格競争」にあっという間に埋没してしまう。
「価格より価値」という土俵で勝負するためにも、磨くべき持ち味・強みをこの機会に社内で明確にすることだ。
2.弱みを磨く 従来からある強みだけで勝負できるほど、激変する環境変化は甘くない。
顧客により高いレベルアップを期待されている弱みを鍛える努力を怠ってはならない。
例えば、顧客からの要望への対応力が優れている場合、中小企業の営業現場では「呼ばれたら来る」とか「毎日訪問してる」といった基本的な日常業務活動だけでの優位性では、差別化は難しい。
訪問頻度より情報発信・提案力を求められている。
これらの全社的なバックアップ体制・底上げが必要だ。
3.開拓・開発に取り組む 需要予測をする。「もしこのままでいけば」という仮説を立て、業績の不足は何らかの取り組みで補わなければならない。今後どうなるのか?それに対してどうするのか? 今や成り行きだけでのオーダーやたまたま買う顧客は存在しない。本物しか生き残れない今が自社の実力と考えれば、必要な顧客数・受注量・販売高はどの程度か。そのように考えれば、新しい商品・サービス・取り組みの必要性が明確になる。

 

(112)『先行管理とスピード感』

★もし赤字体質であるなら、それを生み出している原因は何か?早期にその根本要因を見極め、改善していくことが重要になってくる。

原因
「先行で物事を考える力」に欠け、「スピード感がない」ことがほとんどである。
 
「先行で物事を考える力」とは、仕事のPDCAサイクルを回す意味において、来るべき業務量を考え、それを時間内に効率的に仕上げるのに必須の能力である。仕事の基本とも言えよう。

したがって会議ひとつにしても、その開催目的を考えるなら討議事項を決めたり、資料作成などが必要となる。その段取りを考えた場合、自然と毎月の開催時期が型決めされてくるはずである。

それが欠けているということは、組織全体が先行で物事を考える力が身についていないということであり、仕事のリズムが作れず、自然とスピードが遅くなってくるのである。

営業現場においては、攻めと守りの時間配分などのバランスが崩れるし、生産現場では生産計画を立てることができない。内部管理者においては、ムダ・ムラ・ムリが発生し、期限までに業務を仕上げていくことができなくなる。

※仕事の基本である「先行管理力」と「スピードある行動」をもって、黒字体質でこの難局を乗り切ろう!

 

(113)『自分自身の"強み"を認識しよう』

採用した新入社員の傾向として、以下の点を挙げている。

【業種:自動車販売業 年商:約200億 従業員:約400名】
  • 1.カーライフのソリューションを提供することが求められているのも関わらず、車をそれほど好きでない人が一部見られるようになった。
    (買手市場に環境が変化する中で、選ぶことができなかった)
  • 2.成長意欲は持っているが、役職にはつきたがらない人が増えてきた。
  • 3.給料は「ほどほどで良い」と思う人が増え、「実績主義よりもある程度は年功序列の方が良い」と考える人が増えてきた。
    (役職者になれば実績主義は止むを得ない)

これらより、近年の新入社員の傾向を表すキーワードは「ほどほど」と言えるのではないだろうか。

では、人材育成としてどのようなアプローチをしていけば良いのか。

個々の"強み"を本人に明確に認識させ、現場で活かせるように動機付けをしてあげることである。

早期に能力発揮をしてもらい、徐々に自信をつけてステップアップさせるためには、"弱み"を克服させるよりも"強み"を発揮させる方が、早く効果が見込めるであろう。

★"強み"を明確に認識させる方法★

1対1で今までの人生の中の成功体験を、インタビュー形式で語らせる方法である。

役割分担し、お互いに15分程度で良い。短時間でも自身の成功体験から引き出すので、自身で認識している"強み"と認識できていなかった"強み"が明確になる。その"強み"を現場でどのように活かすかということを考えさせるのである。

簡単だが効果の高い方法である。ぜひ実践されることをお勧めする。

個々の人間には必ず"強み"がある。

 

(114)『定時・定点で空間を切る』

一度来ていただいた方をリピーターや口コミで周りに宣伝していただけるようなお客様になっていただけるかが、成功の大きな分岐点である。

お客様はハードとソフトの両方を厳しく検証する。

教訓『定時・定点チェック』

『開店から閉店まで同じ品質でお客様を迎え、サービスを受けて(または商品を購入して)帰っていただく』ことに尽きる。
 
★店舗は時間の流れと共に状況が刻々と変わる。変化のスピードについていけないと店の外も中も荒れ、その荒れた状況をお客様は敏感に察知する。
定時・定点観測は、『いつ・どこに立ち・何を見て・判定し・その場、その時点で対処しきること』である。決してチェックリストに従いチェックするだけのことではない。長い時間をかけて行うことはできないので、店の時間を切り取る必要がある。

お勧めする取り組みは『5分で20個以上の"異常"を見つけることができるか』というチェックである

★これを毎日、定時に決めて行う。『何をチェックするのか、どの場所に立つか』ということを検証する過程で、しだいにお客様の視点に立つことができる。それはお客様に指摘された内容を、素直に再確認する行為に他ならない。

このように原点に立ち返ってこだわり抜くことで、お客様を固定ファンにできた店や業績が上がった店が増えている。

 

(115)『最も価値の高い仕事』

経営者や幹部にとって最も価値の高い仕事は
「社員の意識を変える」、もしくは「高いレベルで維持し続ける」ことだと考えている。

 

ところがこの"意識改革"が実に難しい。

部下の日常を思い出していただきたい。「報告をしない、整理整頓ができない、約束を守らない、時間にルーズ」など気になることはないだろうか?これら全ては人の行いであり、その行いはその人の意識次第である。実際ビジネスの世界では能力よりも意識の差が決め手となるケースが多い。

ところが、社員の懐に入ってまで意識を変えようとする経営者が意外に少ないのである。中間管理職などへの「人任せ」、あるいは「本人任せ」、しまいには「本人のせい」ということで諦めてしまっている。

もちろん、人は年齢を重ねるごとになかなか性格を変えられないというのも理解できる。しかしそれは、これまでの人生で経験したことが固定概念となって謙虚さを失くしてしまい、素直に人の話に耳を傾けたり、基本や原点に立ち戻れなくなったせいではないだろうか。言ってみれば年齢というよりもその人の意識の問題である。
さて、この意識を変えるには、それなりのショック療法が必要である。「タバコを止めなければ命を落としますよ」・・・医者からこのように言われたら、あなたはどうするだろうか。

「今のような考えや行動を真剣に改めてもらわないと、会社にいてもらう意味がないよ」・・・表現の仕方は考慮しなければならないが、こういった聞き流せないようなショックを社長や管理者が与えなければ、人は決して変わらないだろう。 本人が気づいて自ら変える(自己改革)ことに越したことはないが、それができないのであれば、上司が愛情を持って厳しく言い正すしかない。部下の意識を変える、高いレベルで維持させることこそ上司本来の仕事であり、それを避けてはいけない、逃げてはいけないということだ。

諦めてしまう前に、お互い真剣に向き合ったかを謙虚に反省すべきである。組織における改革は上層部から始まるもの。トップ自らが自己改革を行い、幹部の意識を変え、その幹部がさらに部下の意識を変える。組織の活性化は真に経営者・幹部にかかっている。

 

(116)『理念と実践』

理念だけでは生きられないが、理念がなければ生きる資格がない。

これは、理念が立派でも実践不足であれば生き残ることは難しいが、理念がないのなら「生きる資格」がないということである。

良い成果を獲得し続けるためのボルテージを保つには、
存在目的や使命をハッキリさせ、強い理念を持ち続けること。ハート、熱き思い、強い目的意識があってこそ、知恵と工夫のエネルギーも湧いてくものだ。

 

苦しい時、「何のためにこの仕事をやっているのか?」と脳裏をよぎったなら、
公明正大な指針が必要だ。
「ビジョン」「使命」「自己実現」という高い欲求の到達目標である。

 

★理念も実践も共に必要なものだ。それは、より多くの人々のためになる「良い成果」を実現するという使命感の確立と、現実的な問題解決のスキルアップに全社一丸となって取り組むことである。
上に立つ人の本音の利他精神と、不退転の実行力が強く求められる。

 

(117)『当事者意識が"ヤル気"を生む』

組織のために働く社員を育てたいと思うなら
社員が「自分が組織を経営している」という当事者意識を持たせることが大切である。
当事者意識とは働いている社員が「自分が主体的に仕事を動かしている」「自分が経営者の一人だ」と考えること。
そのような意識を持つと、自社の業績や仕事に対してさらに能力を発揮する。

 

社員に当事者意識を持たせるためのポイント
1.自社についての情報を与える
できる限り、自社の業績や経営陣が決めた情報を社員にオープンにする。
また、自社の歴史や会社の取り巻く経営環境などを考えさせ、自社の全体像を理解させる。
2.自社がどのように業績を上げているかを理解させる
自社の業績がどのように上がっているのか、顧客はどのような価値を求めて自社の商品やサービスを利用しているのか、それらがどのように自社の業績と結びついているのか、を理解させる。
3.新たなことに挑戦する行動を奨励する
失敗のリスクを恐れるのでなく、そのリスクを冒して新しいことに挑戦する ことを褒め称える。

社員には
 ★会社の方向性
 ★何のために自分達が仕事をしているのか
 ★自分の仕事にどのような意義があるのかを意識させること。

 

(118)『卓越したマネジメント力を身につけよ』

★卓越したマネジメント力を身につけることが必要不可欠になってきているが・・・

従来のやり方から脱却できていない企業の例
  • ●方針・目標がトップ方針と連鎖していない
  • ●管理指標が進捗率になっていて業績につながる指標になっていないために、目標を達成しても業績があがっていない
  • ●方針・目標管理もPDCAサイクル<Plan(計画)→Do(実施)→Check(問題点・原因究明)→Action(処置・対策)>をきちんと回さず、ひどい時には来年の方針・目標を策定するときに初めてサイクルを回す

方針・目標管理では、トップが経営方針・目標を設定し、それに基づき、各部門の管理・監督者が方針・目標を連鎖させる形で設定。さらに管理指標を達成すると業績があがるものにすることが必要だ。

管理サイクルを回すためにボードを利用し、ボードに方針・目標管理の書類をわかりやすく、見やすいレイアウトで表示・掲示する。その上でトップ、管理者が内容のレビューを行ながら、方針・目標管理のサイクルを回すことが必要である。

この活動の特色は、物と業務と管理を見えるようにしてマネジメントを行っていくことである。管理サイクルが見えることにより、PDCAの質が上がり、管理サイクルがスピードアップし、成果が上がるのである。

 

(119)『捨てる戦略』

P.F.ドラッカーがその著書の中で、「あまりにわずかの企業しか、昨日を切り捨てていない。そのために、あまりにわずかの企業しか明日のために必要な資源を手にしていない」と述べている。

急速に進行する陳腐化を踏まえ、成果を期待できない分野からの資源の引き上げを組織的に行い、資源を体系的に集中することが、成長戦略をつくる上での基本なのである。

「捨てる戦略」

1.コスト削減による、損益分岐点引き下げ戦略

(1)「顧客との取引条件の見直し」「仕入先の変更・集約・取引条件の見直し」等を行い、変動費の削減を図る。
(2)「組織のスリム化」「多階層の見直し」「営業拠点の統合」「人件費の削減」「借入金返済による金利削減」「設備費用の削減」等を行い、固定費の削減を図る。

2.止血による、収益拡大戦略

(1)本社費配賦前の赤字事業から撤退し、不採算を排除する。将来を見据えた健全な赤字事業であれば、撤退の対象とならないものもあろうが、客観的にみて「今、あえて推進する必要のないもの」「利益率の改善が見込めないもの」「トップの思いだけのもの」「片手間なもの」は撤退の対象となる。
(2)採算の取れていない「顧客」「商品」「エリア」からも撤退する。 これらの不採算を放置したまま事業を推進すると、本来注力すべき部分に経営資源を分配出来ず、事業の競争力が低下する。

捨てる」ことにより、今よりも収益体質になることを頭では解っていながらも、
・「過去からのしがらみ」
・「成功体験の踏襲」
・「現状を客観視出来ない体質」により、その意思決定がなかなか進まない企業は実に多い。

新たな可能性に経営資源を分散させる前に、日常を客観視し、「捨てる」による徹底的なウエイト・コントロールに取り組まれてはいかがだろうか?

 

(120)『数字へのこだわりを持ち続けよう』

皆さんは数字で話す癖がついているだろうか?なぜこういった質問をするかというと、数字で語れない幹部が非常に多いからである。

数字に強い幹部であれば、「対目標比で98.5%、昨年対比は101.7%。差額は24万円、Aランク情報は約200万円分あるので、確実に詰めれば目標を達成します」と、即答できるはずである。このような数字で語れる幹部は、5人中1人もいれば良い方だ。

売上目標があっても利益目標がないと

●利益額に意識が向かないのはもちろん、計数能力を高めることは難しい。
●いくら儲かったのかがわからない。
●売上げ重視だから、値引きをしてでも受注に走るであろう。

その結果


ベンチマーク先企業の売上高経常利益率、粗利益率、労働分配率などと比較して、自社が目標とする数値を明確にする。そのためにも数値に対するこだわりを持ち続け、部下にも数字で語らせるように教育を徹底していくことが必要だ。

 

(121)『チームを動かすリーダーの基本』

リーダーが抑えておくべき基本を考えてみよう。

<基本1>事実を正しく把握すること(現状把握)

ポイントは、現実・現場・現品の三現主義で事実を掴むこと、鳥が空を飛んで全体から餌のありそうな場所を探したり、草むらに下りてきて虫を捕るかの如く、視点の高さをスムーズに調節することである。

<基本2>共通のモノサシを組織に浸透させること(価値判断基準を明確にし、組織で統一しておくこと)

ポイントは、共通のモノサシを現場が分かる言葉で理解・納得させることだ。組織は、経験や体験が異なる社員が集まったものである。共通の判断軸がなければ同じ方向に進めないのは言うまでもないだろう。

これができなければピント外れの対策を立ててしまう

一度あなた自身を振り返ってみよう。
  • ★部下の報告を鵜呑みにし、自分なりに事実を確認するステップを怠ることはないだろうか。
  • ★モノサシを浸透させずに毎回異なるその場対応を繰り返し、部下から信頼を失うようなことはないだろうか。

 

(122)『"実行"が阻害される6つの要因』

経営の転換期といわれる現在、成長戦略の再構築をはかっている企業が多い。「いかに戦略を構築するのか」ということへの意識を持っていても「いかに実行していくのか」という"実行度"について対策を立てていなければ、戦略は推進されない。

以下に、実行を阻害する代表的な要因を記載する。

1.重点欠乏症 「あれもこれも」と取り組まなければならないテーマがありすぎて重点が絞り込めず、結果的にやり切れない。問題の本質は何かを掘り下げ、「あれかこれか」で重点策を絞り込むこと。
2.方針展開欠乏症 会社方針を部門(チーム)に具体化することが出来ず、具体的にどう行動していくのかイメージが沸かずに実行力が低下する。部門方針策定のチェック機能、部門長・リーダーの方針策定能力を向上すること。
3.コミットメント欠乏症 戦略・方針・目標に対して「やらされ意識」が強く、主体的行動することが出来ない。第一線の社員が目標設定に参画するなど、理解・納得させることに注力する。
4.人材欠乏症 実行できる人材が配置されなければ、どれだけ素晴らしい戦略・方針でも推進されない。中堅・中小企業は人材不足なので適材適所の配置は難しいが、「過去の成功者へのこだわり」や「過度に能力を超えた」配置は戦略推進を低下させる。
5.プロセス管理欠乏症 どんなに精緻な計画を立てても、組織に管理能力が備わっていなければ機能しない。戦略・方針と同じく「あれもこれも」管理するのではなく、重点管理項目に特化することが重要である。
6.人材力向上策欠乏症 どれだけ方針どおりに行動し成果を上げても、それが適正に評価され、処遇にも反映されなければ社員のやる気を落としてしまう。また、日常における上司のフォロー(意欲・能力不足へのフォロー)も実行力を高めるため必要である。

 

(123)経営者必見『粗利率へのこだわり』

建設業界はどちらかというと粗利額発想であり、一人当たり月間200万円の粗利額を稼ぐという生産性基準を中心にマネジメントされているケースが多い。
このやり方はシンプルでわかりやすく管理コストも低いため、営業パーソンに目標を達成する力がある場合は良いマネジメントである。

しかしながら、「額」発想は「低粗利でも受注すれば良い」という考えになり、率を下げて受注することが慢性化すれば、結果的に生産性を下げ、企業としての競争力を失っていくことになる。
粗利率は利益の第一ボタンであり、競争力を表すバロメーターでもある。

粗利率低下の要因
1.トップが粗利率に対する関心が低い
経営者が"値決めは経営"ということ理解していない「トップの理解不足」
2.営業がライバルに仕事を取られるのが怖くて価格を下げすぎている
受注したいがために、勝手に値段を下げている「営業力不足」
3.粗利をコントロールする仕組みがない
粗利率を管理職がチェックしていない「管理力不足」
4.お客様の言いなりで値下げしている
競争力がある商品にもかかわらず、相見積りと言われて簡単に値下げしている「情報収集力不足」
5.商品戦略や競争力のある商品がない
市場の新商品を常に探していないという「商品力不足」
6.見積りでは儲かるはずであったが終わってみると赤字である
当初は大丈夫という報告であったが、結果は赤字という「原価管理力不足」

 

(124)『幹部社員を昇進させるポイント』

幹部社員昇進の最大のポイント
「経営者の価値判断に近づいた」と経営者が感じた時である。
 
重要なのは「売上が大きく落ちたことに対する危機感を、どれだけ幹部社員が持てるか」である。 つまり「マーケットをどう見るか」である。

その年だけの傾向なのか、今後もこの傾向が続くのか。続くのであれば、消費構造が変わってきているのであり、マーケットの縮小は進んで行く。
その場合、ここで来年の夏に向けての抜本的な対策を打たなければ、今期の業績だけでなく、来期の業績にも大きく影響するのである。

背負っているものが違う中で、トップと全く同じ価値判断基準を持つのは難しいが、近づかせることは出来るはずである!

 

(125)『お客様を知り客数を伸ばせ!』

小売業において売上高=客数×客単価という公式


客数×客単価どちらを優先すべきか


客数である

小売業のみならず全てのビジネスの原点は客数にあるのではないだろうか。
利益はお客様からによってのみもたらされるということは自明の理となっている。

損益分岐点客数
1.自社の存続のために必要な客数は何人なのか
2.何人のお客様の支持が必要なのか
3.今日は何人のお客様の要望(ニーズ)に応えることが出来たのか
4.お客様の支持を得られていない原因は何か

★全ての資料・フォーマットは「お客様を知る」という視点で作成されていなければならない。

大切なのは、自社の存続に必要なお客様の支持数は何人なのかをつかんで、日々の活動の中心に「お客様の視点」で考える習慣を身につけることにある。

 

(126)『社員の「不安感」を「不足感」へ』

先行きの見えない不安な時代だが、社員の「不安感」を「不足感」にうまく転換することで、元気に活動している企業の事例を紹介したい。

T社の顧客が属するマーケットが今後激減していくことが予想されるなか、社員は不安感を抱えていた。

そのため、今後の対策を検討する場が設けられた。会議に参加した社員の発言を要約すると「会社が方向性を示してくれないから、どう動いていいかわからなくて不安である」というものだった。これに対して社長は激怒した。

なぜなら、常日頃「どういう新しいお客」に「どういう自社の特殊工法」を提案するようにと、口酸っぱく言い続けていたからである。それが全く理解されていないのかと社長は嘆いた。

このような事態になった原因は、トップの出した方針が具体的な形で個人の日常活動にまで落とし込まれなかったことにある。会社の方向性をより具体化する方策を検討することとした。

主な内容
  • 1.新規案件の売上利益目標を明確にして、現状の5年計画に織り込んだ
  • 2.その数字に基づいた個人毎の毎月の行動数字(新規受注件数、新規提案件数、新規訪問率、新規に割く業務時間の目安等)を設定し、月次管理を行った

社長は「個人別の数値計画を必達すれば、必ず成長を継続できる」と力説した。 目の前の目標が明確になれば、そのギャップを埋める努力は可能である。まさに「不安感」を「不足感」にうまく転換できた好例と言えるだろう。

 

(127)『チームの完成度を高めよう!』

★企業において、まとまりのある完成度の高いチームをつくることが、強力なライバル企業に競り勝ち、競争力をつけていくことに繋がるのではないだろうか。

チームの完成度を高めるために必要な「チームマネジメントの心得4ヵ条」を記載する。

1.事前準備 サッカー日本代表においては、環境対応や強豪国とのトレーニングマッチなどの事前準備が思い出される。本番を想定したあらゆる準備を徹底的にすることで、納得性が高まり迷いがなくなる。そして課題を危機意識として共有することができる。
企業においても、リーダーはメンバーに危機意識を強く持たせ、チームワークを高める策を講じることが必要である。
2.ぶれない信念 チームが立てた目標に対し、リーダーはぶれずに闘うことが大事。ワールドカップ前の4連敗で、多くの批判を受けた日本代表であったが16強入りを果たした。目先のことでぶれていては逆境時に結束するのは不可能であっただろう。
環境条件は常に変わるのが世の常である。変化に対応するために戦術を変えて批判を受けようとも、リーダーは信念を貫くことが重要である。それにより逆境時も全員で目標に向かい、計り知れない底力を発揮する。
3.決断力 リーダーは"タイミングを逃さず、いかに決断ができるか"が重要である。最終的にその決断は賭けだが、リーダーの本気度はメンバーにすぐ伝わるものである。 決断したことに邁進する前に迷いが出てしまうリーダーは、それによってどれくらいチームの推進力が鈍り混乱するかを考えていただきたい。決断の意味を再確認し優柔不断を是正し、決断力を磨くべきである。
4.モチベーション チームが勝つために自分たちで何をするべきかを考えて動き、最後まで競争原理を持ち込みながら、勝利という目標のために結束し、チーム全員が高いモチベーションで闘う環境をつくった。これはベテランの控え選手がそのようなムードを作っていったことが大きい。企業に置き換えると、トップの考えをリーダーがわかりやすく部下に伝え、各自の役割と責任を理解させ、いかに全員で闘う雰囲気をつくれるかである。モチベーションの低い社員には、立場を理解した上でのアドバイスが効果的である。

 

(128)『老舗の秘訣』

★日本は、世界の中で老舗企業の多い国として知られています。老舗の老舗たるゆえん、これには色々な条件や要素が考えられますが、私は次に紹介する二つの言葉に集約できると思います。

『伝統は革新の連続』 単に伝統に甘えることなく、時代に合わせて変えていく(=革新)ことができているからこそ、長く続いているのだと思います。
『老舗っていうのは、客を大事にする店のことを言う』 利益を大事にして顧客を大事にしない企業が、社会から大事にされるわけがありません。

皆さま方の会社では日々、問い直していますか?
「自社は変化しているか?」
「自社の真の顧客は誰か?」
「その顧客が認める自社の提供する価値は何か?」
「自社の顧客をどんなに大事にしているか?」
 

どうやら、これを繰り返すことが100年、そして500年続く秘訣のように思います。

 

(129)経営改善の着眼点『業績責任を果たすとは』

業績をつくるとはどういうことか?
それは利益を生み出す全ての経営条件を整備することである。

 

業績責任とは?
ある会社の経営幹部は、自拠点の業績が悪い原因を販売力・商品力が弱く顧客基盤が悪いためだと嘆いている。この幹部は業績意識が欠けている。 与えられた条件でいかに業績をつくるか、利益を上げるかを考え自分の役割を果すこと。

 

★部門経営者としての経営意識を持たなければ責任はまっとうできない。

そのためには


★トップと同じ方向感覚(価値判断基準)を持つ、常にプラス発想で考える、現実処理能力+理想掲示能力を高めることが必要である。

以下の経営のバランス感覚を養っておかなければならない。
○攻守のバランス(営業・投資と管理)
○環境のバランス(市場動向・社会変化)
○時間のバランス(将来と現実のギャップ・先を見る目と今を見る目)
○経営資源のバランス(人・物・金・情報の有効活用)

★経営幹部は自社の経営基盤の現状をしっかりと把握して整備強化をし、 トップと価値判断基準を合わせていかなければならない

 

(130)『事業戦略は「選択」と「集中」』

★運送会社のM社は、事業を「選択」し、「集中」させて好業績を残している。

1.専用車輌への切り替え 従来の万能トラックではなく、重い・長いに特化した車輌への切り替えを図り、専門技術・ノウハウを構築。経験を積むことで荷物の特性を熟知し、さらなる運送品質を高めている。
2.コスト価値をかえる車輌の導入 通常、荷物を運ぶシャーシ(車輌)は20tであるが、M社は大重量の30tシャーシを導入した。80tの資材であれば20tシャーシ4台が必要であるが、3台で可能となった。1台あたりの単価はあがるが、使用台数を減らすことができたのである。 顧客視点で考えれば安全でコストをかけたくないものである。だからこそ1台あたりの単価はあがっても、トータルではコストダウンになる。
"tあたりいくら"が取引の常識である業界において、顧客のコストダウンに貢献している。
3.営業プロジェクトの立ち上げ 自社の品質体制、エコへの取組みなど、他社とどう違うかの資料を作成し、新たな顧客開拓に閉鎖的な業界の中で営業機能を強化した。

事業戦略は、T(テクノロジー:固有技術)×M(マーケット)である。自社が誇る技術(商品・ノウハウ)をどのマーケット(市場)にぶつけるかである。だからこそ、自社の誇れるものを集中して磨き上げ、どのマーケットを選択するかを見極める「選択」と「集中」が必要なのである。

 

(131)『活きた事業計画書をつくる3つの視点』

★事業計画書は戦略の設計図である。そこには経営者の「意志」がなくてはならない。あるいは、目標に確実に辿り着く具体的な道筋が描かれてなくてはならない。

~未来を照らす事業計画をつくるための3つの視点を考える。~

1.社会性~顧客の視点 まずは会社の軸をしっかりと定める。「わが社の存在価値」は何か?事業計画は数字の羅列であってはならない。数字は手段。その先の「生きる目的」がなければ、計画は無機質である。わが社は誰にどんな価値を提供する会社なのか?
スターバックスはコーヒーを通じて「サードプレイス(第3の場所)」を提供する。そのコンセプトはライバル他社と一線を画した価値を生み、従業員も活き活きと働き、顧客から愛され、社員からも愛される会社になろう。
2.戦略性~経営者の視点 社員がやる気になるために、計画はチャレンジングでなければならない。
先行きが見えない経営環境にあっては、現状の延長線上で考えると現状維持が精一杯となる。そこからは小手先の対策しか出てこない。
まず、「あるべき姿」を描こう。それから逆算して何をすべきか考える。現状とのギャップが戦略テーマであり、そこに抜本改革の知恵が眠っている。ユニクロを経営するファーストリテイリングは5兆円企業を目指している。戦略経営の極みと言えよう。
3.蓋然性~金融機関の視点 どんなに崇高なコンセプトを掲げても、いかにチャレンジングな戦略を描いても、「画に描いた餅」では意味がない。金融機関の視点で確実な策を講じることも重要。売上アップは「相手ある」の話なので、蓋然性は低い。社内でできるコストダウンの着眼が必要である。

 

(132)『大局観・戦略発想を鍛える』

自社の幹部の力量について、大局観や戦略発想の乏しさを嘆く経営者は少なくない。そもそも幹部は所属部門のマネジメントが主たる業務であり、日常の中で自社が置かれている環境や戦略展開について考える機会は皆無に等しい。大局観・戦略発想を鍛えたいならば、それ相応の機会提供が必要である。

~A社の事例を紹介したい。~

A社では毎年10月、来期方針の策定に向けたプロジェクト(名称:戦略策定プロジェクト)が発足する。それは、経営陣の指名を受けた各部の幹部・中堅社員10名程度で構成され、10月から12月にかけて3C分析(顧客・同業他社・自社の分析)、所属業界の動向分析、中長期ビジョンの確認、今期方針の実行状況チェック、SWOT分析などを行う。

プロジェクト会議は週1回のペースで開催され、普段は自部門の業務に没頭しているメンバーが、自社全体のことをさまざまな角度から分析する。

その分析内容は経営陣に上申され、1月初旬に開催される社長の年頭所感発表会でオープンになる。その内容と社長の年頭所感を踏まえ、各部の部門長は自部門の来期方針を作成するのである。
プロジェクトのメンバーは、年によって数名が入れ替わるため、数年内で少なくとも一度は、全ての幹部が全社的な視点から自社を分析し、戦略策定をする機会を得る。

そしてそのプロジェクトが、部門横断的な情報交換機能と、経営陣が志向しているビジョン・戦略・方針の理解促進機能を発揮していることに感銘を受けた。

★各社で是非展開していただきたい素晴らしい取り組みである。

 

(133)『どうして資金計画が必要なのか』

★決算書は重要でありながら決して万能ではなく、以下のような点には留意が必要である。

<貸借対照表> ・財産状況は分かるが、決算日当日の状況しかみえない
・借入金の返済計画がみえない
<損益計算書> ・投資の負担と回収状況がみえない
・借入元本の返済負担がみえない

つまり貸借対照表と損益計算書は、法人税などの税金計算には向いているが、資金不足を回避するための分析には向いていないのである。

★資金不足を回避するには、以下を明示する予想資金計画(キャッシュ・フロー計画)が必要で ある。

◆予想収入で全ての支払ができるか、また余裕資金はいくらあるか
◆いつ、いくら現金が不足するのか

予想資金計画は資金不足を回避するだけではなく、たとえば営業・製造などの各部門にキャッシュ・フロー目標を設定させることにも活用でき、在庫削減にも繋げることが可能である。
これらの理由からも資金計画は必要である。

 

(134)『魅力ある会社づくり』

★社員が会社に不満や不信を抱いて、お客さまの期待に応えられるわけがない。顧客満足(CS)の実現を望むなら、社員満足(ES)を優先し、魅力ある会社作りを目指していただきたい。

魅力ある会社の第一の条件
「経営者が魅力的であること」
小企業の場合は、経営者に起因するところが大である。
魅力ある経営者とは
「若  さ」・・・ 事業への「志」「情熱」「バイタリティ」などから来るものだ。
「包容力」・・・ 自分に対する徹底的な厳しさと他人に対する寛大さ、温かさから生まれるものだ。つまり人間の器の大きさである。それが強烈な求心力であり企業の魅力でもある。

 

魅力ある会社の第二の条件
「会社の将来性」
会社の将来性は何によって判断するか。
⇒一般的に「収益性」「生産性」「安定性」など。
しかしこれらの指標は、会社が過去に打った戦略の結果である。企業成長力の要になるものは、事業開発投資・商品開発投資・人材育成投資などの戦略的先行投資ができているかである。
成長する会社は、事業開発・商品開発費として売上高の2~3%、人材育成費は人件費の2~3%を予算化して、計画的に実施している。

 

(135)『"やりきる"組織への変貌』

★ほとんどの経営者は「マネジメントにおいて"PDCA"が大切」と認識しているであろう。だが多くの会社がP(計画)とD(実行)で終わっている。ではC(チェック)とA(改善)を推進し、階段を一歩一歩上るように、積み重ねるマネジメントをしていくにはどうすればいいか。


会議の議事録にある。

項目は「問題点」「対策」「担当」「期限」「チェック」の5項目のみ。
会議において挙がった問題点や取り組むテーマなどを「問題点」の項目に記載し、それに対する実行具体策、担当、期限を記載。チェックとは担当者の実施をチェックする者で、通常上司になる。

この議事録を次回の同会議において全てチェックし、完了したものについては削除、やり方を変えるべき項目については修正、新たな事項は追加する。このようにして、常に議事録を加筆修正し、やるべきことは何か、マネジメントすべきことは何かを常に明確にしておく。

  • ★「議事録のおかげでプレッシャーは大きくなったが、やるべきことが明確になった」
  • ★「誰がいつまでに何をやる」と文字で残されると、逃げ場がないためプレッシャーは大きくなる。しかしチーム会議では、リーダーからの微修正はあるものの、やるべきことと期限は自分で決めるので、モチベーションも高く維持できるのである。

★このように議事録は、PDCAを推進する上で非常に効果の高いツールである。

 


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